世界最大の洋上風力発電所、ウォルニー・エクステンション
Ørsted UK
世界最大の風力発電所が完成、稼働した。
9月6日(現地時間)、イングランド北部とマン島の間のアイリッシュ海の上で、659メガワットの発電能力を持つ「ウォルニー・エクステンション(Walney Extension)」が稼働した。50万戸以上に電力を供給できる。
高さ190メートルを超えるタービンが87基、面積はサンフランシスコよりも大きく、稼働している風力発電所としては世界最大となる(風速は地面から離れるほど速くなる傾向があり、一般的にタービンは高さが高いほど風を利用しやすくなる)。
このプロジェクトは、クリーンな再生可能エネルギーを作り出す方法として、洋上風力発電所への投資を進めるという大きなトレンドに沿うもの。
アメリカでは初の洋上風力発電所は2016年に完成、発電量は30メガワット、ロードアイランドの沖合30マイル(約48キロメートル)にある。最近のレポートによると、アメリカでは2026年までに洋上風力発電所が生み出す電力は2.3ギガワットに達すると見られている。アメリカの世帯、100万戸以上の電力を賄うのに十分な発電量となる。
一方、ヨーロッパでは、30ギガワット規模の発電所の建設が提案されている。2027年までに、オランダ、ノルウェー、イギリスの間の海上に人工島も含めて建設される予定。ウォルニー・エクステンションの世界最大という記録は、長くは持たないだろう。
しかし現時点では、ウォルニー・エクステンションはトップに君臨している。見てみよう。
ウォルニー・エクステンションは、イングランド西海岸沖のアイリッシュ海にあり、87基のタービンが並ぶ。59万戸以上に電力を供給できる。
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タービンはイングランドのウォルニー島から12マイル(約20キロメートル)も離れていない海の上に設置されている。
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広さは56平方マイル(約145平方キロメートル)。マンハッタン島やサンフランシスコよりも広い(サッカー場約2万個に相当する)。
発電所を建設したデンマークの風力発電会社Orstedが撮影した発電所の様子。全容を収めることはできなかった。
変電所が2つ。2017年8月に発電を開始したが、建設は2018年6月まで続いた。
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出展 : Orsted
261枚のブレードの取り付けは、大型クレーンを使った大変な作業だった。ブレード1枚の重さは、6万1700〜7万5000ポンド(約28〜34トン)。
ブレードが1回転するだけで、1世帯が1日に必要とする以上の電力を供給できるとOrstedは述べた。
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タービンはシーメンス(Siemens)とMHIヴェスタス(MHI Vestas)が製造。高さは600フィート(約183メートル)を超える。自由の女神像の2倍以上の高さ。
発電所は186マイル(約300キロ)以上の長さのケーブルでつながれ、電力をイギリスの電力網に送る。動画はケーブルを敷設した時の様子。
ウォルニー・エクステンションは、他の洋上風力発電所を発電量、規模ともに圧倒している。世界第2位の洋上風力発電所はLondon Array。イギリス南東沖にある。ウォルニー・エクステンションはそれよりも9平方マイル(約23平方キロメートル)大きく、発電量は29メガワット上回る。
London Array。
London Array
世界最大の風力発電所は、中国にある。
洋上発電は安価ではない。キロワット時あたり約20セントのコストがかかる。だが、2022年までに10セントとなると予測されている。それでも陸地での風力発電の約3倍。
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風力発電などの再生可能エネルギーの価格が下がり続ければ、世界のより多くの人々が電力に依存するようになると予測されている。2050年までに、風力や太陽光といったエネルギー源が、世界の半分近くの電力需要を満たすと期待されている。
出展 : International Renewable Energy Agency, Business Insider, US Department of the Interior
(翻訳:仲田文子、編集:増田隆幸)