不動産と株、どちらに投資するのが正解なのだろうか?
Joe Raedle/Getty Images
- 不動産の購入は、多くの人にとって人生最大の金銭的な決断。一方、株式投資は一般的に、資産を築くために重要なこととされている。
- 我々は、米連邦住宅金融局(FHFA)とヤフー・ファイナンスのデータを使って、過去数十年間の住宅価格と株価を比較した。
- ほとんどの期間において、株の方が高いリターンを生んだことは明らかだった。だが、注意点もある。
- このデータは単純に過去の結果を比較しただけ。投資における最適な判断は、人それぞれの状況やニーズによって異なる。
住宅を購入することは、ほとんどの人にとって、人生最大の金銭的な決断。一方、株式投資は一般的に、資産を築くために重要なこととされている。
我々は、過去数十年の住宅価格と株価を比較してみた。
米連邦住宅金融局(FHFA)が提供する住宅価格指数とヤフー・ファイナンスが提供するS&P500種の株価を1991年まで遡って、過去27年のさまざまな時期ごとに比較した。また、いくつかの大都市圏における住宅価格と株価の比較も行った。
株価はここ数年、上げ相場が続いており、比較したほとんどのケースで株価の方が住宅価格よりも上昇率が高かった。
ただし、非常に単純な比較でしかないことには要注意。言うまでもなく、株と不動産は極めて種類の異なる投資。
不動産の所有には固定資産税や維持費が必要になるが、住む場所を提供するという、株にはない重要な役割を果たす。株の所有には、仲介手数料などが必要。
さらに、株価は住宅価格よりも変動が大きい。株式市場では大きな財産を築くことができるが、すべてを失ってしまう可能性もある。
一方、住宅価格は時間とともに徐々に上昇する傾向があった。しかし、2000年代半ばの住宅バブルとそれに続いた崩壊は、住宅価格の上昇は確実とは言い難いことを示した。
これらの前提を踏まえたうえで、過去30年間における2つの最も重要な市場の動きを見てみよう。
1991年1月を起点に比べてみると、株価は住宅価格よりも劇的に上昇している。
1991年1月を起点とした住宅価格(青)と株価(赤)の推移。
Business Insider/Andy Kiersz
インターネットバブルの崩壊と2000年代後半の金融危機による大暴落にもかかわらず、株価は1991年から700%以上上昇した。一方、住宅価格は164%の上昇にとどまった。
しかし、タイミングが問題。インターネットバブルのピーク、2000年9月を起点とすると、住宅価格がわずかに上回る。
インターネットバブルのピークを起点とした住宅価格(青)と株価(赤)の推移。
Business Insider/Andy Kiersz
インターネットバブルでの株価のピークは2000年9月。そこを起点とすると、株価は79%、住宅価格は85%上昇した。
インターネットバブル後の底値で株に投資していれば、結果はまったく逆になる。
インターネットバブル後の底値を起点とした住宅価格(青)と株価(赤)の推移。
Business Insider/Andy Kiersz
2002年の10月を起点にすると、住宅価格は60%、株価は230%上昇した。
また住宅バブルのピークを起点とすると、株価の上昇率は、住宅価格のそれを明らかに上回る。
住宅バブルのピークを起点とした住宅価格(青)と株価(赤)の推移。
Business Insider/Andy Kiersz
FHFAの住宅価格指数が高い数値を記録した2007年3月を起点にすると、株価は93%上昇した。だが、住宅価格は回復までに時間がかかった。同じ水準まで回復したのは2016年、現在までの11年間に17%しか上昇していない。
金融危機の中、住宅価格がピークを迎えた数カ月後に、株価もピークを迎えた。
金融危機による崩壊前のピークを起点とした住宅価格(青)と株価(赤)の推移。
Business Insider/Andy Kiersz
2007年11月を起点とすると、住宅価格は21%、株価は76%上昇した。
2009年、金融危機後に底を打って以降、株式市場は高騰を続けている。
金融危機後の株価の底値を起点とした住宅価格(青)と株価(赤)の推移。
Business Insider/Andy Kiersz
株価は2009年3月に底を打って以来、273%上昇した。一方、住宅価格は36%。
住宅価格は2011年以降、上昇している。だが依然として株価の方が上回っている。
住宅価格の底を起点とした住宅価格(青)と株価(赤)の推移。
Business Insider/Andy Kiersz
金融危機後の2011年5月、FHFAの住宅指数は底を打った。以降、住宅価格は48%上昇した。一方、株価は99%。
地域も問題。こちらは、ニューヨークの住宅価格と株価の比較。
1991年1月を起点としたニューヨークの住宅価格(青)と株価(赤)の推移。
Business Insider/Andy Kiersz
1991年1月を起点とすると、株価は700%以上上昇した。一方、ニューヨーク周辺の住宅価格は174%上昇した。
マイアミは住宅バブルの中心地だった。バブルのピーク時、1991年からの住宅価格の上昇率は株価をわずかに上回った。
1991年を起点としたマイアミの住宅価格(青)と株価(赤)の推移。
Business Insider/Andy Kiersz
2018年第2四半期の時点で、マイアミ周辺の住宅価格は、1991年第1四半期から397%上昇した。
FHFAが調査した20の大都市圏のうち、1991年からの住宅価格の上昇率が最も高いのは、デンバー。
1991年1月を起点としたデンバーの住宅価格(青)と株価(赤)の推移。
Business Insider/Andy Kiersz
デンバー周辺の住宅価格は1991年第1四半期から413%上昇した。だが株価の700%以上の上昇率には及ばない。
ここ数十年、ほとんどの期間や地域で、株価の上昇率は住宅価格の上昇率を上回った。
Reuters/Carlo Allegri
数字は検討事項の1つに過ぎない。そして過去の結果は未来を予測できないことを心に留めておくことが重要。
今回のデータは、株式投資がいつ、誰にとっても、常にベストの投資になることを示すわけではない。また、不動産購入は悪い選択肢という意味でもない。金銭的なニーズ、住宅へのニーズは人それぞれ異なる。決断には他にもさまざまな要素が関わってくる。
(翻訳:Yuta Machida、編集:増田隆幸)