筆者には買収する理由が理解できない。
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8月末、アメリカの飲料大手コカ・コーラは、イギリスのカフェチェーン最大手「コスタ・コーヒー(Costa Coffee)」を51億ドル(約5700億円)で買収すると発表した。
しかし、筆者にはその理由が理解できない。
最も分かりやすい理由は、コスタ・コーヒーが長い間、イギリスのコーヒー市場を支配し、世界中で運営する店舗数は13年間で、39店から4000店近くにまで成長したこと。
中国ではスターバックスに次いで2番目に大きいコーヒーチェーンで、店舗数は400店以上、今も増え続けている。
同社の2017年度の売上高は、17億ドルユーロ(約1900億円)にのぼる。
ファイナンス的には、買収は合理的なもの ── しかし、筆者は、なぜこのコーヒーチェーンに足を運ぶ人がいるのかが理解できない。
コスタ・コーヒーは、筆者が住むロンドンのさまざまな場所にある。そこで先日、どの店舗でも、行くたびに感じる印象を再確認しに行ってみた。そう、圧倒的な“普通”さだ。
Business Insider UKの本社の近く、イーストロンドンのホワイトチャペル・ハイ・ストリートにある店に行ってみた。このエリアには、プレタ・マンジェ(Pret a Manger)、カフェ・ネロ(Caffe Nero)、スターバックスといったコーヒーチェーンがひしめき合っている。個人経営のカフェも何店かある。
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店内は極めて普通。インテリアは販売されているフードとまったく同じで、当たり障りはなく、悪くはないが、特に良いわけではない。特にテーマやスタイルもなく、まさにただの「コーヒーショップ」。
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コーヒーと一緒にパニーニ、ラップサンド、サラダなどさまざまなフードを提供している。また、ポテトチップス、ナッツといったお菓子のほか、オレンジジュースや皮肉にもペプシコーラなどの冷たい飲み物も販売している。
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パン・オ・レザンからミリオネア・ショートブレッドまで、いろいろなパンや焼き菓子もある。
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筆者は、コーヒーとクロワッサンを注文。4ドル80セント(約550円)。
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クロワッサンの見た目と味は褒められたものではない。スーパーで半分の値段で売っているクロワッサンにも負けていた。コーヒーはそこまで悪くなかったが、紙ナプキンには笑えないダジャレが書いてあった。
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安いわけでもない。
コスタ・コーヒーは店舗数が多いため、価格が安いのだろうと思う人がいるかもしれない。だが、そうではない。
ガーディアンによると、コスタ・コーヒーのカプチーノは、イギリスの他のコーヒー・チェーンよりも0.3ユーロ(約40円)安い。だが、別のサイズやフレーバーを選んだ場合、違いはなくなる。
では、なぜ利用する人がいるのだろう?
シンプルな答えは、多くの場合はコスタ・コーヒーしかないから。
コカコーラがコスタ・コーヒーを買収するのは、おそらく、地方の静かな駅にいて、他に買うものがなかったから。
コスタ・コーヒーは、高速道路のサービスエリア、駅、空港などのいろいろな場所にある。
ガーディアンによると、北イングランドのヨークとリーズの間にあるサービスエリアには、コスタ・コーヒーが買える場所が7つ以上ある。
「既存の店舗で提供しているコーヒーの量と、駅や空港で提供しているコーヒーの量の間には驚異的な違いがある」とコスタ・コーヒーの競合であるグラインド(Grind)のクリエイティブディレクター、テディ・ロビンソン(Teddy Robinson)氏は2018年はじめにガーディアンに語った。
さらに、コスタ・エキスプレスの自動販売機は、世界中の8000カ所以上、しばしば、スーパーマーケットに置かれている。つまり、コスタ・コーヒーの店舗が近くになかったとしても、コスタ・コーヒーを買うことができる。
人々がコスタ・コーヒーに行く理由は、お気に入りのコーヒーチェーンだからではない。コスタ・コーヒーから逃げることができないからだ。
(翻訳:Yuta Machida、編集:増田隆幸)