トランスジェンダー州知事候補も。LGBTQ、女性候補者が過去最高。「反トランプ」掲げ米中間選挙に地殻変動

11月6日のアメリカ中間選挙に向けた動きが活発化している。2016年大統領選挙で敗北した民主党とリベラル派からは、「打倒トランプ大統領」をキーワードに多様な候補者が出馬している。特に、目立つのが400人以上と過去最高の人数が立候補している女性候補と、これも過去最高の400人以上立候補しているLGBTQの候補者。LGBTQの人たちは公職での役職を得ることを目指している。

トランスジェンダー初の州知事候補

christineとその支持者たち

当選すれば、アメリカ発のトランスジェンダー州知事となるクリスティン・ハルクィスト。

提供:津山恵子

「私たちは、勝つために猛進しているのよ」

バーモント州知事選挙に民主党から出馬しているトランスジェンダーのクリスティン・ハルクィスト(62)は、こう言った。当選すれば、アメリカ初のトランスジェンダー州知事となる。

11月6日の中間選挙の投開票日に一騎打ちとなるのは、2期目を狙う現職のフィル・スコット(共和党)。複数の世論調査が「共和党が強力」と予測している。しかし、民主党バーモント州委員会委員長でゲイであることを公言しているテリー・アンダーソンは、こう自信を見せる。

「クリスティンの方が、州の多くの人が求めているものを真に理解している。地元で集めているデータでは、クリスティンが負ける理由が見つからない」

ハルクィスト候補はBusiness Insider Japanのインタビューに応じ、立候補の理由を明かした。

本名はデビッドで、結婚して子どもも3人いた。バーモント電力公社の最高経営責任者(CEO)を務め、教育、社会福祉、経済開発プロジェクトに関わってきた地元の名士でもある。しかし、幼い頃から女性になりたいと思っていた。「真実というのは、何よりも大切なことのはず。自分の真の姿を子どもに隠したまま死ぬわけにはいかない」と、家族や自分自身の気持ちの切り替えに10年かけた上、2015年、クリスティンとなった。

「トランスジェンダーとなる過程もオープンにしてきたため、地元は温かくクリスティンとなった自分を迎えてくれた」という。ところがそんな状況が変わったのが2016年11月、トランプ大統領の当選だった。自由で懐の深いバーモントでさえ、白人至上主義者が現れ始めた。

「共和党は公立校をズタズタにし、市民を分断することしかしていない。2018年1月、自分はこのまま、今起きていることを見過ごしにできないと、出馬を決心した」

2018年8月の民主党候補を絞り込む予備選挙で、なんと圧勝。その後、全米から寄付金が集まり、8月下旬の2週間で集まった寄付金は、前の2週間の3倍以上となった。予備選挙の勝利は、「都市部以外にもブロードバンド接続を実現する」「気候変動対策」「国民皆保険」などの公約がアピールした。

「たまたま私がトランスジェンダーだったので、全米から注目されている。でも、LGBTQや女性の候補者数が過去最高となり、支持されているのは、私たち弱い立場の人間が決断をしたからだ。正義のために戦うという姿勢を人々に見せたからだ」(ハルクィスト)

同性愛者嫌悪の人から殺害予告も

christine支持者

クリスティンの支持者たち。

提供:津山恵子

LGBTQの候補者に研修や資金を提供するLGBTQビクトリー・ファンドの広報担当エリオット・アイムスによると、「ハルクィストは、ゲームチェンジャーになる」と言う。

アイムスによると、全米の公選の役職に就いているLGBTQは現在559人。しかし、国民に占めるLGBTQの割合が5%とすると、「あと約2万3000人のLGBTQの代表が必要」と言う。

「LGBTQの候補者も他の候補者と同様に世界をよりよくしたいという純粋な情熱から立候補し、それを理解する多くの異性愛者の団体や人権団体がファンドに協力してくれている。ただ懸念されるのは、LGBTQ候補者がホモフォビア(同性愛者嫌悪)の人の攻撃対象になっていることだ」(アイムス)

実際に、ハルクィストも予備選挙の勝利以降、バーモント州外から殺害するという脅迫が送られてきた。このため、同州州都バーリントンにある選挙事務所の場所は公表していない。

今回の中間選挙では、400人以上のLGBTQの人が立候補を表明している。

2018年中間選挙に出馬を表明している主なLGBTQ候補者

  • タミー・ボードウィン/上院議員(再出馬)/レズビアン/ウィスコンシン州
  • カーステン・シネマ/上院議員/バイセクシュアル/アリゾナ州
  • ジーナ・オルテズ・ジョーンズ/下院議員/レズビアン/テキサス州
  • ジャレッド・ポリス/州知事/ゲイ/コロラド州
  • クリスティン・ハルクイスト/州知事/トランスジェンダー/バーモント州

LGBTQの政治家(国会議員以外の地方議員も含む)の数はアメリカが559人と世界で最多だが、他の国でも定着している。イギリスの国会議員がアラン・ダンカン欧州・アメリカ大臣を含む45人、カナダが国会議員を含む約30人、オランダが19人で、日本は地方議員も含めても少なくとも8人と人口の割合に非常に少ない。

民主党からは女性候補者増、共和党は減

一方、AP通信によると、今回の中間選挙には上下院議員、州知事から地方自治体司法長官・議員に至るまで、全米で過去最高の女性候補者が出馬する。下院議員選挙で309人、上院議員で42人の女性が立候補するという。

またNBCニュースによると、全議席が入れ替わる下院議員選には、254人の新人が出馬しているが、半数以上が女性という。民主党から出馬する女性が多くを占め、共和党の女性候補者は減少する見込みだ。

2017年1月のトランプ大統領の就任式翌日に、全米で大規模なデモ「ウィメンズ・マーチ」が行われた。トランプ政権の発足で、女性やマイノリティ、LGBTQが差別され、地位が失われていくことに対する危機感から、首都ワシントンには約50万人が集まった。その流れが、中間選挙で記録的な女性の立候補者数につながった。

2018年1月にワシントンのトランプホテル前で行われたLGBT運動

ワシントンのトランプホテル前で行われたLGBT運動。

REUTERS/James Lawler Duggan

政治専門ニュースAxiosによると、民主党はトランプ政権が煽る大衆主義や分断を阻止するため、過去最高の候補者を立てている。民主党候補者の数は1706人に上り、共和党は1550人と過去最高だった2010年を下回る。

Axiosは「候補者数が多いことが勝利につながるわけではない。しかし、それほど民主党が意欲を示している表れだ」としている。(敬称略)

編集部より:初出時、LGBTQの政治家の数を日本は地方議員を含めて3人としておりましたが、「少なくとも8人」と訂正します。 2018年9月22日18:30

(文・津山恵子)

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