写真左から、銀聯国際プロダクト責任者・総経理のボミー・シェン氏、Origami社長の康井義貴氏、信金中央金庫 専務理事の須藤浩氏。
クレジットカードはアメリカン・エキスプレス、JCB、ダイナーズクラブ、ディスカバーの4ブランドに対応。銀行口座はゆうちょ銀行やじぶん銀行を含む8行に順次対応する。
スマートフォン向け決済サービスを提供するOrigami(おりがみ)は、9月20日にパートナーおよびプレス関係者向けイベント「Origami Conference 2018」を開催した。
同社は2012年に設立、2015年からモバイル決済サービスを展開している。今回のイベントでは、同決済で取り扱えるクレジットカードや銀行口座、加盟店の拡充、銀聯国際との資本業務提携などを発表した。
銀聯国際との連携はアウト/インバウンドの両面で有効
カンファレンスの目玉はUnionPayとの資本業務提携。
今回の発表で最も印象的だったのは、「Origamiは徹底的にオープンな決済プラットフォームとして成長していく」というメッセージだ。
中でもインパクトのあった発表は、中国の国際的な決済事業者である銀聯国際(UnionPay International)との資本業務提携だ。
この発表により、今後、アジアや北米、中東、アフリカなどで銀聯QRを使う外国人旅行者が日本国内のOrigami Pay加盟店でQRコード決済が可能になる。
ゲスト登壇した銀聯国際のボミー・シェン氏は、「銀聯国際の会員はOrigamiの会員、Origamiの会員は銀聯国際の会員である」と発言。同社がグローバルで培った決済のノウハウをOrigamiにも提供し、会員の利便性向上に努めることを明らかにしている。
また、その逆も実現する。国内のOrigami Payユーザーも海外の銀聯QR加盟店をOrigamiアプリで決済できるようになる。
Origamiの事業開発ディレクターの伏見氏によると「Origamiと銀聯国際の会員データベースなどはもちろん別だが、決済が可能という意味ではシームレスに連携する」と話している。
同社は2019年第1四半期までに750万店舗の銀聯QRの加盟店での利用開始を目指している。また、詳細は明かされなかったが、銀聯国際以外との協力により、さらなる海外利用可能店舗の拡大も予定している。
決済の世界をオープンにする「提携Pay」
各企業の決済サービスの裏側をOrigamiが努めるといった形の「提携Pay」。
加えて、自社の決済プラットフォームをパートナー企業に無償で解放する「提携Pay」を発表した。
提携Payは、Origamiの持つ支払い手段(銀行口座やクレジットカード)や加盟店ネットワークを自社の決済サービスとして使えるというものだ。
例えば、これはクレディセゾンのカード会員向けスマートフォンアプリ「セゾンPortal」に搭載されているものだが、同アプリユーザーはOrigamiアプリを入れることなく、Origami加盟店で買い物が楽しめる。
提供企業側としては、独自に加盟店開拓や決済のバックグラウンドの仕組みを開発する必要がなく、手軽に自社ブランドのキャッシュレス決済サービスを実現できる。クレディセゾンに加え、ライザップやテレビ東京などが提携Payの利用を検討していることも発表された。
ベンチャーらしく囲い込まない戦略
QRを含め乱立するモバイル決済の中で独自路線を貫くOrigami Pay。
現在、日本ではさまざまなモバイル決済の仕組みが日々打ち出され、展開されている。大手で言えば、LINEや楽天、NTTドコモらも同様な決済サービスをスタートしているが、ポイントサービスなどと紐付け、自社や提携企業内の独自経済圏の活性化を狙っている。
一方、Origamiは銀聯国際との連携や提携Payによるオープン化の取り組みを行っており、幅広いユーザーそして企業に統一されたキャッシュレスサービスの提供を目指している。
伏見氏は「提携Payを利用した決済サービス利用者も、銀聯国際などの加盟店で決済可能な状態を実現したい」と語っており、オープン化による提供会社やユーザーのメリットは非常に魅力的だ。
Origami社長の康井義貴氏は、自社の強みを「Origamiはベンチャー企業で既存のものとのしがらみのない戦略が作れる。パートナーと作ってきたOrigamiの仕組みを独占する気もない」と話しており、“囲い込み”的な戦略をとる他社とは別路線を歩んでいく姿勢を明らかにしている。
決済以外の3つの新機能の予告
また、同社の取り組みは決済だけに留まらない。Origami Conference 2018では「Wallet」「Trade」「Credit」といった3つの関連機能を予告した。
Wallet
送金機能なども実現する「Wallet」。
Walletは、現実の財布の中にクレジットカードやキャッシュカード(銀行口座)に加えて現金があるように、Origami内に残高をもつことを意味する。
具体的な機能はその残高を利用して既存の決済に利用できることはもちろん、Origamiユーザー同士の送金機能も実現する。
Wallet機能は2018年度内の提供を予定している。
Trade
初心者でも気軽に使える資産運用機能を実現する「Trade」。
TradeはWallet残高をアプリ内で簡単に資産運用に回せる機能だ。具体的な運用方法や形式は明らかになっていないが、実際の運営は自社および他社への委託、両面で検討をしているという。
Tradeの提供は時期未定。
Credit
Origami内で与信を受けられる「Credit」。
Creditは、いわゆる与信の仕組みだ。Origamiユーザーに対し、2000~4000円程度のライトな与信からスタートし、無事完済できればより大きな与信をユーザーにつけていくというわけだ。
Creditの提供もTradeと同様、時期未定。
Origamiが想定する新しい決済を超えたサービスの形。
もちろんこれらの新機能を実現するにあたり、現在とは違う法規制への対応が必要だ(例えば、Walletで想定している送金機能の実現には金融庁への「資金移動業者」としての登録が必須となる)。康井氏は「新たに必要な認可などの対応は、社内で準備を進めている」と話している。
なお、同社は新たにSBIインベストメントや信金中央金庫、銀聯国際などの10社から66.6億円の資金調達(シリーズCラウンド)を実施。同社への出資総額は88億円にのぼり、今後のキャッシュレス社会の実現を加速させる。
(文、撮影・小林優多郎)