コアなアップルファン、なぜグレーな“ハッキントッシュ”自作に手を染めるのか

ハッキントッシュのイメージ

YouTube/Dom Esposito

アップルのmacOSを使う唯一の方法は、Macを買うこと。これは昔も今も変わらない、少なくとも「公式」には。

上の写真のPCはmacOSで動いている、だがMacではない。「ハッキントッシュ(Hackintosh)」と呼ばれるPCで、愛好家たちがアップル製ではないハードウエアでmacOSを動かすために作ったものだ。

誤解を恐れずに言うと、macOS、あるいはアップルの公式アプリを使うためにMacを買う必要はない。あなたがハッキントッシュを作ると仮定すれば。

MacではないPCを購入し、わざわざハッキントッシュに改造する理由は、アップルからMacを買うことに対するある種の失望を意味していると言える。つまり、高価だったり、カスタマイズが難しかったり、そしてしばしばニーズに合う製品がないといったことだ。

ハッキントッシュを作った人の理由を見てみよう。

ハッキントッシュなら、高価なMacにお金を使わずに済む。

ハッキントッシュ

YouTube/Snazzy Labs

ユーチューバーのSnazzy Labs made a $350 Hackintoshは、2018年1月時点の「アップルの製品ラインナップに頭を悩ませた」と語った。

ハッキントッシュを作れば、Final Cut Pro XのようなMacでしか動かないアプリも、より低コストで使えるようになる。


問題点:法的、倫理的にハッキントッシュを作ることはグレー。

アップルCEOティム・クック

Richard Drew/AP

ハッキントッシュを作るためには、インストール用にmacOSが必要になる。そして、ここで問題が生じる。

macOSを手に入れる方法としてアップルが唯一認めている方法は、macOSをインストール済みのマシン(つまり、アップル製品)を購入すること。

最も評判の良いハッキントッシュ・ガイドは、すでにあなたが保有しているMacのOSを使うことを勧めている。だが、そうした行為はアップルが想定していないものと言える。あなたがMacを購入した時に同意した利用規約に抵触する可能性がある。

現時点では、アップルはこうした方法やハッキントッシュ・コミュニティーに対して、アクションを起こしていない。だがこうした方法がいつまでも使えるとは限らない。

我々はアップルにハッキントッシュへのスタンスについてコメントを求めている。返答があり次第、情報を更新する。

ユーチューバーのMarques Brownleeは2013年、ハッキントッシュを作った。当時、彼のニューズに合う機種がなかったからだ。

率直に言うと、アップルは私が完璧に満足できた製品を作っていない

私の2016年製のMacBook Proを例にあげよう。私は15インチディスプレイのノートPCが欲しかったので、それを買った。

だが、専用のグラフィックチップを搭載したモデルしかなかった。グラフィックチップは私の日々の用途には過剰だった。さらに、もしより大きなディスプレイのモデルが欲しければ、より高性能なモデルしかなかった。

他のラインナップについても同じことが言える。

アップルはあなたが必要とするスペックの製品を発表するとは限らない。あるいは、必要なスペックを持っていたとしても、同時に不必要なパーツが付属しているかもしれない。

例えば、アップルの新しいiMac Proは5Kディスプレイを備えている。超ハイエンドなディスプレイで、そのためiMac Proの価格は5000ドルを超える。

ディスプレイは不要で、マシン本体だけが欲しくても、選択肢はない。残された道は、ハッキントッシュを作るだけ。

これがテック関連の人気ユーチューバー、Marques Brownleeが少し前にハッキントッシュを作った一因にもなった。


ハッキントッシュの修理は、アップル製品よりも簡単で安価。

もしあなたがハッキントッシュに精通しているなら、壊れたパーツを取り出して、修理することもお手のものだろう。ハッキントッシュのパーツは、アマゾンなどで簡単に見つけられる。

一方、Macには専用パーツが使われていて、自分で修理することは難しい。修理はアップルストアか、あるいは少なくともアップルが認めた修理ショップに持ち込まなければならない。

ユーチューバーのPeter Paul Chatoは、ハッキントッシュの壊れた電源を自分で修理した。動画の中で、Chatoは「壊れた電源を取り出し、地元にあるCanada Computerの店舗に行って、電源を買い、ハッキントッシュにセットした。2時間で復旧できた」と述べた。

「かつて何度かMacを修理した経験があるが、その時はこうは行かなかった。Macをアップルストアに持ち込み、3日から1週間、コンピューターなしで過ごすことになった」

もちろん、注意点はハッキントッシュはどんなテクニカルサポートも受けることはできないということ。自分で解決するしかない。


アップルのデザインに飽きた、あるいは好きでないなら、ハッキントッシュは自分の望むようにカスタマイズできる。すでに持っているPCを使うこともできる。

macOSをアップル製ではないノートPCやデスクトップPCにインストールすれば、ハッキントッシュ・ノートPCやデスクトップPCをイチから作ることができる。

好きなPCケースを選ぶことに始まり、ハッキントッシュの外観をかなりクリエイティブなものにすることもできる。サイドが透明になっているケースを選べば、内部のパーツをそのまま見ることができる。人気のケースだ。

また、かなりの数の「RGB」パーツがあり、ハッキントッシュをいろんなカラーやパターンで光らせることができる。あなたが望めばの話だが。

ノートPCには、プロセッサーなど基本的なパーツだけを備えた「ベア・ボーン」ノートPCがあり、好きなハードディスクドライブやメモリーをインストールできる。

どんなカスタマイズが可能なのかを知りたければ、テック関連のユーチューバー、Dom Espositoのハッキントッシュの動画を見てみよう。


いい感じ? だが残念ながら、大きな問題がある。ハッキントッシュを作るには、手間がかかる。

ハッキントッシュを作ることは、不可能ではない。だが、簡単ではない。

例えば、多くの人は普通やらない、マザーボードの「BIOS」の調整といった細かい作業が必要になる。またハッキントッシュにmacOSをインストールするには、愛好家たちが作った、難しいユーティリティー・ソフトウエアを使わなければならない。

いずれにせよ、もしあなたが興味を持ったなら、止めはしない。興味があれば、ハッキントッシュに関する情報を見つけることは難しくない。

もう1つの留意点:使えるパーツは限られている。

ハッキントッシュのためにパーツを購入する以前に、どのパーツが使えるか確認しよう。ハッキントッシュ・コミュニティーは互換性のあるパーツのリストを公開している。


[原文:Some Apple fans are building their own ‘Hackintoshes’ — Mac computers they build themselves. And they point to a weakness with Apple's computer lineup. (AAPL)

(翻訳、編集:増田隆幸)

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