平成30年間で300校増え800超える大学。210校定員割れなのになぜ潰れない

少子化で子どもの数が減りつつあるにもかかわらず、2019年4月に開校を予定している大学が17校ある(文末に掲載)。

現在、日本の大学は787校を数える(ここでの大学は四年制大学、大学院大学、通信制大学を指す。短大を除く)。したがって、このまま文部科学省が新設大学を認可すれば、800校を超えてしまう。

大学数をざっとおさらいしよう。

大学進学率

*女子の大学進学率は2017年数値。

文部科学省基本調査などから統計

ちなみに、1989(平成元)年の大学数は499校だった。平成最後の年になる2019年は804校(予定)なので、平成時代の30年あまりで300校、1年で10校が開校したことになる。

大学はなぜこんなに増えたのか。子どもの数は減っていくことが予想されたのに、大学生が増える、大学進学率が高まると見込まれたからである。

その理由としては社会構造、産業形態が大きく変化したからだ。わかりやすく言えば大学へ進学したいという層が増えた。大学へ進学できる余裕ができた。社会全般(企業など)が大卒者を求めるようになったからだ。

本音ベースで言うと、「給料が高く安定したところに就職するためには、大学ぐらい出ていないと」という考え方が広まったから。はやりの言葉を使えば、平成に入って、大学入学同調圧力が一気に高まったということだ。

短大がなくなり四年制に

女子の進学率上昇も大きい。男女共同参画社会に向けて男女雇用機会均等法が施行された1980年代半ば以降、多くの女子が大学を目指すようになった。文学など教養系の短大から、社会科学系、国際系、理工系など手に職系学部がある四大に進む女子が増え始めた。

慶應義塾大学

増え続ける大学。2019年春には800校を超える。

Osugi / Shutterstock

教育機関もビジネスである。

大学生が増えるならば、大学を新しく作ろうとなる。ここで割を喰ってしまったのが短期大学、専門学校である。短大は上記のように約25年で250校以上、減ってしまった。このなかには学習院女子短期大、東京女子大短大部、青山学院女子短大、明治大短大部、東洋英和女学院短大など、「名門短大」まで姿を消している。

専門学校にいたっては、1995年の3573校をピークに緩やかに減り続け、2018年には3180校となった。

四年制大学志向が強まったせいで、短大や専門学校に学生が集まらなくなった。ならば、短大や専門学校を大学に変えてしまおうと、学校経営者の多くが考えるのは不思議ではない。短大からは、学習院女子大、東洋英和女学院大が生まれている。

看護系、福祉系も大卒が有利に

大学開校ラッシュにはもう1つ大きな要因がある。

看護系、福祉系、医療系分野などの専門職養成は、1990年代ごろまでは短大や専門学校で学び資格を取得すれば十分だった。

作業中の看護師

看護系でも“大卒”を目指す人が増えた。

Gettyimages/Yoshiyoshi Hirokawa

2000年以降、こうした専門職(看護師、社会福祉士、診療放射線技師[いわゆるレントゲン技師])の養成分野に大学が進出する。結果、看護大学、福祉大学、医療大学がやたら増えてしまった。病院や福祉現場では採用時に「大卒」が有利になるという「将来像」ができ上がってしまい、看護系などを志望する受験生は短大や専門学校より、大学を選ぶようになった。

平成の約30年のあいだに300校開校したが、そのほとんどが既存の教育機関から誕生している。だいたい次のパターンである(所在地、開校年)

  1. 高校→短大→大学 育英大(群馬、2018年)は前橋育英高校が起源で、1976年に開校した育英短大が前身。高校→短大→四年制大学というパターンは少なくない。作新学院大(栃木、1989年)も作新学院高校、作新学院女子大短大を経て開校。系列高校はいずれも甲子園大会優勝経験があるほど知名度が高い。それを生かすことができるのか……。
  2. 専門学校→短大→大学 一宮研心伸大(愛知、2017年)は一宮看護専門学校、愛機みきわ短大を経て開学。福井医療大(福井、2017年)は福井医療技術専門学校、福井医療短期大を経て誕生した。
  3. 専門学校→大学 了德寺大(千葉、2006年)。創立者は了德寺健二氏。了德寺学園医療専門学校、了德寺学園リハビリテーション専門学校を作って、大学経営まで広げた。このパターンは看護系、医療系に多い。なお、平成生まれの大学の名称で創立者の名までを冠したのはここだけ。
  4. 短大→大学 岡崎女子大(愛知、2013年)。1965年設立の岡崎女子短期大学が起源。開学前年、田中真紀子文部科学大臣(当時)が一度、大学の設置認可を認めなかったが、すぐに撤回したことで知られる。最後に開校した女子大である。
  5. 幼稚園→大学 岩手保健医療大(岩手、2017年)。地元のひまわり幼稚園が起源。ウェブサイトで「学生の修学・生活支援強化へのご支援について」として寄附金を呼びかけている。
  6. 中学校、高校→大学 大和大(大阪、2013年)。「だいわ」ではなく「やまと」と読む。奈良県の進学校、西大和学園中学高校を持つ西大和学園グループの1校。同学園グループの成り立ちは、設立者の田野瀬良太郎による著『田舎の無名高校から東大、京大にバンバン合格した話―西大和学園の奇跡』に詳しいが、大学もバンバン学生を集めることができるか。
  7. 株式会社→大学 デジタルハリウッド大(東京、2005年)。株式会社デジタルハリウッドが母体。サイバー大(福岡、2007年)もソフトバンクグループの100%子会社、サイバーユニバーシティが経営。小泉純一郎、竹中平蔵の規制緩和政策の産物だ。
  8. 自治体→公立大学 公立小松大(石川、2018年)。私立の小松短大、こまつ看護学校を再編し公立大学として開校。公立大(都道府県または市)の新設校は公立短大、専門学校からの転換組が多い。長野県立大(長野、2017年)など。留学必須で人気の国際教養大(秋田、2004年)はゼロからの出発でありながら、難易度が高く、就職実績も良い。地方の公立なのに全国区の人気大学となった希有なケースである。

ここで教育に関心がある者ならば誰もが不思議に思うだろう。大学が800校もあって大丈夫なのか。

定員割れ大学は210校

大丈夫ではない。定員割れを起こす大学が続出したのだ。少子化にあって、当然だろう。

日本私立学校振興・共済事業団(私立学校に助成などをする機関)が、2018年度の私立大学の入学動向の調査結果を発表した。

私立大学の定員割れは210校で、全体の36%にのぼっている。定員充足率50%未満の大学は11 校あり、危険水域に入っていると言っていい。

もっとも、以前に比べれば大学の定員割れは減っている。2006~09年には、40%後半に到達したこともあった。

昨今、定員割れが減ったのは、文部科学省が、入学定員超過の是正を「指導」したことと関係するようだ。

入学者が定員を超過すれば、私学助成が受けられないというペナルティが科せられるようになった。そこで大学は難関校を中心に合格者数を絞ってきた。これによって、受験生は合格しにくくなり、第2、第3、第4志望の大学に進んだ。こうしてこれまで定員割れが続いた大学のなかで、定員を充足したところが見られた —— と予備校関係者の多くが分析している。

学校法人グループの1校として

入試を受ける学生たち

入学者数の制限が厳しくなり、難関大学の倍率は上がった。

Shutterstock /sakkarin sapu

それでも、定員割れが200校を超えるというのは尋常ではない。

いつ潰れてもおかしくないレベルの大学はいくつか散見される。しかし、廃校した大学は意外に少ない。

1990年以降、募集停止した大学は次の通り。

東和大(福岡)、創造学園大(群馬)、愛知新城大谷大(愛知)、映画専門大学院大(東京)、神戸ファッション造形大(兵庫)、三重中京大(三重)、聖トマス大(兵庫)、神戸夙川学院大(兵庫)、大宮法科大学院大(埼玉)。<統合再編された大学を除く>

あらためて質そう。なぜ大学は潰れないのか。

前記1〜7の大学新設パターンを見てほしい。

短大、専門学校、高校などを抱えた学校法人グループの1つとして大学を運営している。大学だけの収支でやりくりするならば、もっと潰れる大学が出たはずだ。いわば、大学はグループ会社の一赤字部門であり、そう簡単には廃校にならないというわけだ。大学はそこそこ体力がある。

しかし、大学運営費が学校法人グループによっていつまでも賄われるわけではない。定員割れであれば、学生からの授業料収入も途絶える。定員充足率の低さでペナルティが科せられ、私学助成を受けられない。

将来的には、少しずつだが廃校は避けられないだろう。どうすればいいのか。

現状、大学は学生を集められるような教育改革を進め、定員充足の努力をする。文科省が大学の設置申請に対してより厳格に臨むしかない。

入学したもののすぐに廃校となったから、他大学に転校するハメになったというケース(実際にあった)を作らないために、大学は潰さない覚悟を持ってほしい。母校がなくなるほど、さびしい話はない。

<2019年開設予定大学>

国際工科専門職大学(東京都新宿区など)

国際ファッション専門職大学(東京都新宿区など)

東京医療福祉専門職大学(東京都新宿区)

名古屋医療福祉専門職大学(愛知県名古屋市)

大阪医療福祉専門職大学(大阪府大阪市)

専門職大学 東都学院大学(東京都目黒区など)

東京専門職大学(東京都江東区)

長岡崇徳大(新潟県長岡市)

金沢専門職大学(石川県白山市)

京都専門職大学(京都府京都市)

岐阜保健大(岐阜県岐阜市)

和歌山信愛大(和歌山県和歌山市)

島根保健福祉専門職大学(島根県仁多郡奥出雲町)

岡山医療専門職大学(岡山県岡山市)

高知リハビリテーション専門職大学(高知県土佐市)

福岡医療学院 福岡専門職大学(福岡県福岡市)

福岡国際医療福祉大(福岡県福岡市)

編集部より:初出時、2014年の大学進学率を41.5%としておりましたが、正しくは51.5%でした。訂正致します。 2018年10月5日14:30

(文・小林哲夫)

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