イーロン・マスクはなぜツイッターで失敗したのか。6つの心理状態から6つの禁句をつぶやいてしまう

テスラといえば電気自動車。電気自動車といえば無公害で音が静かなはずだが、同社CEOのイーロン・マスク氏の呟きは違っていた。

イーロン・マスク

イーロン・マスクはツイッターのつぶやきが原因で大きな批判を浴びた。

撮影:Mario Tama / Getty Images

「株式を非公開化する」というツイートが発端となって、株価の乱高下を引き起こし、多くの投資家に損害を与えてしまったからだ。また、その騒動が司法の介入を招き、株主からの訴訟をも抱えることになったのである。

「1株当たり420ドルでテスラの株式を非公開化することを検討中だ。資金は確保した」

それ以前にも、同氏はツイートに関して訴訟を起こされている。タイの洞窟救出において、自らの提案(小型潜水艦の提供)を否定した英国人ダイバーを「小児性愛者」と罵倒したからだ。こちらも、英国人ダイバーから名誉毀損で提訴されている。

「アンワース氏が、私が製作した救助用の潜水艇を批判したことに怒りを覚えて彼を『小児性愛者』呼ばわりしてしまった。彼と、私がリーダーであるテスラにお詫びする。責任は私のみにある 」

経営者はツイートでなぜつまづくのか

そのイーロン・マスク氏のロケットによる月旅行に、いち早く参加を表明したのは、ZOZOTOWNを運営するスタートトゥデイの前澤友作社長。図らずも両者の間には、ツイートの炎上という共通点がある。ちょうど6年前の秋、同氏は「お前のような奴は二度と注文しなくていいわ」と顧客に暴言ツイートをして、謝罪に追い込まれたのだ。

経営においてすばらしい実績を残した彼らが、なぜ“たかがつぶやき”であるはずのツイートにおいてつまづいてしまうのか?そこには強い上昇志向、自己顕示欲、競争心、自負心などを持つ彼らだからこそ陥りやすい6つの心理状態があるからだ。

1. 注目を集めたい衝動にかられる

社員はもちろん社会からの注目を常に浴びる彼らは、ツイートにおいても脚光を浴びたくなる。その結果、平凡な語句よりも“映える言葉”、すなわち誇張した表現や過激な言語を用いたくなるのだ。もともと実業家であるアメリカのトランプ大統領も、その典型と言える。

2. 報復感情に支配されてしまう

ビジネスの現場は戦場でもあるので、競合他社と常に闘って勝たなければならない。言わば“やられたら、やり返す”という日々の連続だ。そんな彼らは、“たかがつぶやき”として放置できないのである。それが「小児性愛者」「お前のような奴は……」につながってしまう。

3. 上から目線や斜めからの目線になってしまう

経営者として成功を収めると、他人よりも自分が賢く思えてしまう。結果、知らず知らずのうちに“教えてやろう”とか“違いを見せたい”という心理に陥る。そんな気配をフォロワーに敏感に察知され、思わぬ批判を受けるのだ。

4. ホスピタリティから情報の過提供をしたくなる

良い経営者の根幹には、顧客へのホスピタリティがある。それは顧客の求めるものを察知して、存分に届けたい心理だ。従って、フォロワーに対して少しでも多くの情報を、早く届けようとする。正式には決定されていない「株式の非公開化」という情報までも。

5. 情報の反作用を無視してしまいがちとなる

例えば、SNSの活用に秀でたソフトバンクの孫正義会長は、ツイートによって消費者の要望を吸い上げてきたが、現在は投稿を止めている。吸い上げられるだけでなく、自身の行動の投稿から次の方針や戦略をフォロワーに推察され、吸い取られてしまう心配をしたからだという。これなどは情報を吸い上げられるプラスベクトルに対して、吸い取られるというマイナスベクトルを考えなければいけない象徴的な事例だ。

6. ストレスの発散に走ってしまいがちとなる

本来は拡散性と匿名性が高いのがツイッターの利点だ。名が知れていなければ酒場での愚痴のような発言をより多くの人に聞いてもらえ、発散できるだろう。しかし、世間の関心を集めるアカウントは認証マークを付与され、公式認定されていることもある。そんな場所での経営者の不用意な発言は、企業にとって危険極まりない。

意図せず機密漏えいにつながっている

ビジネスパーソン

ビジネスパーソンこそ、ツイッターの使い方に注意を。

撮影:leungchopan / Shutterstock

この6つの心理状態に陥るのは、決して一部の経営者だけではない。優秀なビジネスパーソンにも襲いかかってくる。

例えば、スタートトゥデイでは経営者だけでなく、経営幹部も「過労死は自己責任」とツイートして大炎上させてしまった。他にも、大手通信S社の役員がSNSは相互接続という機密情報を個別返信で発表の前日にツイートしてしまった例もある。あるいは、大手D証券の部長が、自ら主幹事を担う企業についても「上場廃止になるまで追い込まないとあかん」と、目を疑うツイートをしたという報道もある。

こうして危うい事例を並べてみると、企業はツイッターを含めたSNSを禁止したくなってしまうだろう。実際、読売巨人軍なども選手にSNS禁止令を出した。だが、今の時代にSNSを禁止することは現実的ではないし、SNSの利点を失ってしまうことになる。

企業に務める人間にも個人で発信する自由はある。だが、自分自身の不用意なつぶやき一つで勤務先までトラブルに巻き込んだり、企業のブランドを失墜したりする可能性があることは常に自覚しておきたい。

最後に発信する前のチェックポイントを示しておきたい。経営者本人が自ら行うだけでなく、周囲もこのポイントに沿って、自社の経営者や社員の発信をチェックするといいだろう。前述した6つの心理状態が引き起こしがちな、6つの不都合な表現である。

  1. 差別:意図せずとも差別的な表現を用いていないか?
  2. 業務妨害:結果として誰かの業務を妨害することにならないか?
  3. 誹謗中傷:伝聞や推察を用いて、他者を傷つける結果になっていないか?
  4. 侵害:耳目を集めんがために発した情報が、他者のプライバシーを侵害していないか?
  5. 名誉毀損:知らぬ間に誰かの名誉を毀損する発言を用いていないか?
  6. 機密漏えい:5W1Hを小出しにして、組み合わせによる情報漏洩をしていないか?

特に6は見過ごしがちだ。本人は発信する情報が機密漏えいにならないよう情報の断片しか含めないようにしていても、複数の発信をチェックすれば機密に辿りつける、ということはままあるのだ。

この6つの表現の頭の文字を繋げて「さ・ぎ・ひ・し・め・き」と記憶して、ツイートをチェックしていただきたいものだ。

田中優介(たなか・ゆうすけ): リスクヘッジ代表取締役。1987年東京都生まれ。明治大学法学部法律学科卒業。2010年セイコーウオッチ入社。お客様相談室、広報部など危機管理にまつわる部署に従事した後、2014年退社。同年、リスクヘッジ入社。解説部長、教育事業本部長を経て、現在代表取締役社長。

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