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- フェイスブックの創業者兼CEOマーク・ザッカーバーグは、1社でしか働いたことがない。
- 雑誌「ニューヨーカー」によると、ザッカーバーグは他社の事例については、しばしば、COOシェリル・サンドバーグに頼っている。
- 職場問題の専門家は、ザッカーバーグのような在職期間が長いリーダーは、異なる視点を持つ人間を周りに置くことが重要と述べた。
- 個人の場合は、会社を移ったり、社内の別の部署で仕事をすると、新しいスキルを身につけることができる。
雑誌「ニューヨーカー」が掲載したフェイスブックのCEOマーク・ザッカーバーグの人物像には、同社COOシェリル・サンドバーグの言葉が引用されていた。
「マークは時々、社員の前でこう言う。『ぼくはここ以外で働いたことがまったくないが、シェリルの話によると……』と」
サンドバーグはさらに続けた。
「彼は、必ずしも自分が最も経験豊富な人間ではないことを自覚している。彼は彼が経験したことしか知らない。だが、マーク・ザッカーバーグであることは、本当に人並外れた経験」
ザッカーバーグは現在34歳、大学在学中にフェイスブックを創業した。ニューヨーカーのエヴァン・オズノス(Evan Osnos)によると、ザッカーバーグはフェイスブックのすべてを彼特有の好みに合うようデザインした(オズノスは、ザッカーバーグがフェイスブックのシンボルカラーにロイヤルブルーを選んだのは、彼自身がもっともクリアに認識できる色だったからと記している)。
ザッカーバーグ極端な例だが、サンドバーグのコメントは、1つの会社でキャリアを積み上げることの相対的なメリットとデメリットについての疑問を浮かび上がらせた。
我々は、2人の専門家に意見を求めた。ただし、ザッカーバーグ個人のことは知らないので、彼についての具体的なコメントではない。
リーダーは異なる視点や考え方を持つ人間を周囲に置くべき
インスパイア・ヒューマン・リソーシズ(Inspire Human Resources)の創業者ジェイム・クライン(Jaime Klein)は、長く在職しているリーダーが組織に与えるメリットについて述べた。それは「組織についての知識」と「組織カルチャーの安定」。クラインによると、組織のリーダーが交代すると、従業員の生産性が一時期、低下する傾向がある。
一方でクラインはマイナス面として、「新しいアイデアが入ってこない」ことをあげた。人は、異なる視点や考え方を持つ人たちではなく、「自分自身の素晴らしさを思い出させてくれる素晴らしい人たちを周りに置く」傾向があるとクライン。
クラインと、書籍『Bring Your Human to Work』がまもなく刊行予定の組織人事ストラテジストでエグゼクティブコーチのエリカ・ケスウィン(Erica Keswin)は、こうした問題への解決策の1つとして、CEOが多様なバックグラウンドを持つリーダーたちと親交を持つことをあげた。
これは、ザッカーバーグがサンドバーグを採用した理由と言えそうだ。サンドバーグはグーグルや政府機関で働いた経験がある。
「強いリーダー」は、自分に足りないスキルを認識し、それを補う能力を持つ人物を採用するとケスウィン。
クラインはこれを「異種配合」と呼んだ。つまり、他の場所で経験を積んだリーダーは革新的なアイデアを持ち込み、より長く在職しているリーダーは、そうしたアイデアを自分の組織に活かす方法を知っている。
ケスウィンはまた、在職期間の長いCEOや創業者に、他の企業のトップが集まる組織や会合に参加することを勧めた。そうすれば、自分のパフォーマンスについて率直なフィードバックを得ることができ、他のリーダーたちが同じような課題にどのように取り組んだのかを知ることができる。
個人なら、組織の枠を超え、違う場所で働く
リーダーポジションではない人に対しても、ケスウィンは同様のアドバイスを送った。組織の枠を超えて仕事をするチャンスを見つけることで、学び続け、成長を続けることができる。他の部署に課外活動的に参加してみても良いだろう。
「あなたは会社の中で、ますます価値ある存在になる。点と点をつなぐことができるから」とケスウィンは語った。
クラインは、違う組織に移ることは、個々の従業員にとって有益になり得ると考えている。具体的には違ったスキルを身につけることができるから。会社を変わることは、「キャリアアップの可能性がなさそうと感じたなら、多くの場合、有益」とクライン。
また、「新しいアイデア、異なるメンタリング・テクニック、部下を成長に導く新しい方法」を持つ新しいリーダーの下で働くことも有益。
往々にして、転職の決断は論理よりも直感。クライン氏はこう語った。
「そのときが来れば、誰もが心の奥で感じる」
[原文:Mark Zuckerberg has never worked at a company besides Facebook, and that's a blessing and a curse]
(翻訳:遠藤康子/ガリレオ、編集:増田隆幸)