ブロックチェーンはLINEの“救世主”か? ── LINEが5つの新サービスを発表した理由

LINE Token Economy関連アプリ

LINEは、同社のLINE Token Economyに関する具体的なサービスや特徴を発表した。

LINEは9月27日、ブロックチェーン技術を活用したプラットフォーム「LINE Token Economy」に関する発表会を開催。8月31日に発表済みの独自ネットワーク「LINK Chain」や、自社トークン「LINK」および「LINK Point」の詳細と新サービスの内容を明らかにした。

5つのユーザー参加型サービスを用意

LINK Chain上のdAppのロードマップ

LINEは既に海外で展開中の仮想通貨取引所「BITBOX」に加え、5つのブロックチェーン関連サービス(dApp、ダップ)について語った。

今回解説のあったサービスは既にベータ版として運用されていたものを含めて全部で5つ。それぞれサービス内容や種類は全く異なるが、共通している項目として

  • LINEやNAVERブランドではないユーザー参加型メディア(CGM)である
  • オープンソースで開発されている
  • ユーザーがサービスの運営・信頼性に貢献した場合に、LINK PointかLINKでインセンティブがもらえる
  • ブロックチェーン技術を利用した分散管理が行われている
  • 将来的には、ユーザー主導による運営を目指している

という点が挙げられる。既存の中央集権型のウェブサービスとは全く異なる仕様・思想となっている。

ユーザー評価が可視化されるQ&Aサービス「wizball」

wizball

wizballでは、ユーザーが互いに質問・回答・評価しあう。

既存のサービスで言えば、いわゆる“知恵袋”的なサービスで、質問者が投稿した質問に対して、ユーザーやLINE側が用意する専門家が回答する。

さらに、wizballではユーザーがその質問や回答に対して評価する仕組みを採用。よりわかりやすい質問とその質問に対し最適な回答を出しているユーザーに対し評価ができる。

wizballは各ユーザーに対し、サービスへの貢献度に応じたインセンティブをサービス内ポイントで支払う。ユーザーは得られたサービス内ポイントを、LINK Chain共通のトークン・LINK Point(日本以外ではLINK)に変換できる。LINK Pointの場合、1ポイントあたり500 LINE Point(500円相当)にも交換できるため、ユーザーは現実世界でも使える報酬をもらえるというわけだ。

wizballはすでにベータ版としてウェブ上で登録・利用できるが、10月下旬にはスマートフォン向けアプリを提供する。

ゲーム感覚で未来を予測する「4CAST」

4CAST

未来を予測すれば報酬がもらえる「4CAST」。

4CASTは、サービス上のお題に対し、予測内容を新規に投稿したり、ワンタップで既存の予測に投票できるサービス。

インセンティブは、そのお題の現実の結果が判明したとき、正しい未来を予測した(投票した)ユーザーに与えられる。

従来の未来予測サービスとは異なる点は、ブロックチェーンによってごまかせないという点だ。こういった予測サービスは「もし、報酬を支払う側が予測結果を改ざんしてしまったら」という不安がつきまとうが、ブロックチェーン上に記録されたデータは改ざんできないので、サービスとして信頼性が保てるという。

LINE 舛田氏

各サービスの紹介を行った取締役CSMOの舛田淳氏。

予測と結果が集まっていくことで何らかの社会危機などの予測にも利用できると推測されているが、取締役CSMOの舛田淳氏は「データをどう活かすかは決まっていないが、AIを学習させるデータとしてはおもしろいと考えている」と話している。

4CASTもwizballと同様、すでにベータ版としてスマートフォン向けウェブサービスとしてローンチ済み。2019年内にはユーザーによるお題の投稿に対応するとしている。

レビューサービス「Pasha」と「TAPAS」

Pasha

スマホでパッシャっと写真を撮るだけで商品を検索・レビューできる「Pasha」。

既存のLINEサービスで培った画像処理技術を使った2種類のレビューサービスも2018年内に登場する見込み。

1つ目のPashaは身の回りの商品をスマートフォンで撮影し、レビューができるサービス。画像認識技術で既に他のユーザーが投稿したことのある商品とわければ、その商品のレビューを閲覧できる。

インセンティブはPashaに新規投稿やレビューを行ったユーザーに対し行われる。

TAPAS

お店や料理のレビューができる「TAPAS」。

もう一方のTAPASはいわゆるグルメレビューのサービス。実際に店舗で飲食を行いレシートを投稿、レシートの情報に加えて、料理の写真や評価、コメントなどを投稿すればインセンティブがもらえる仕組み。

レシートは画像認識技術により、情報を抽出されるため、店舗情報や食べたメニューなどは自動的に反映される。

旅の思い出を共有できるSNS「STEP(仮)」

STEP(仮)

旅行の思い出を写真と位置情報などで共有する「STEP(仮)。」

今回発表されたもののうち、唯一サービス名が仮称のままだったのが、ロケーションSNSである「STEP(仮)」だ。開始時期は2018年中を予定。

ユーザーは位置情報やタグといっしょに旅行の写真をSTEPにアップ。それらの情報をBOOKという単位で公開し、BOOKが他のユーザーから旅行情報として閲覧されればされるほどインセンティブが受け取れる。

なお、同社は旅行関連事業「LINEトラベル」を2018年6月にスタートしたばかりだが、トラベルとの連携機能などはまだ発表されていない。

LINEが次世代プラットフォームづくりに熱心な理由

ブロックチェーン

LINEは、ブロックチェーンによる新しいプラットフォームを作ろうしている。

メッセージングサービスとしてのLINEの勢いは、グローバル目線で見ると停滞傾向にある。

現在、LINEの主要4カ国(日本・台湾・タイ・インドネシア)の合計月間アクティブユーザーは約1億6400万、その内日本での同ユーザー数は7600万と約46%が日本のユーザーだ。

さらに、グローバル全体のユーザー数は僅かながら減少傾向にある一方で、国内では上昇傾向にあるなど、LINEの海外戦略は決して順調とは言えない。

そんな同社が今回始めるブロックチェーンを活用したLINK Chainのサービスは、インセンティブが日本ではLINK Point、それ以外の国ではLINKであるという以外には、基本的に国境はない。実際、今回のサービス名やブロックチェーンに関わる技術の名称には「LINE」や「NAVER」ブランドが使われていない。

LINE 出澤剛社長

LINE社長の出澤剛氏は「インターネットが新しいフェイズを迎えようとしている」とブロックチェーンに対する期待をあらわにしている。

出澤剛社長は今回の発表会で、LINE Token Economy構想を始めるにあたり「新しいスケールの大きなエコシステムを作る」と意気込みを語っている。

国内向けのLINK Pointが固定レート制であり、仮想通貨のLINKは「ICOはしない」(出澤氏)と明言されていることから、早期の収益化などは望めないだろうが、同社としてはやや停滞気味のLINE本体のサービスとは別の新しいプラットフォームの確立に長期的な投資をしていく構えだ。

(文、撮影・小林優多郎)

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