人口時限爆弾を「イーレジデンシー」で緩和したエストニア

エストニアのユリ・ラタス首相

エストニアのユリ・ラタス首相。ベルギー・ブリュッセルで開催されたEU首脳会議にて。2018年6月28日。

Eva Plevier/Reuters

  • エストニアなどの東欧諸国は、出生率の低下による人口時限爆弾が引き起こす経済問題に直面している。
  • 近隣諸国と異なり、エストニアはイーレジデンシー(電子居住)の導入で、そうした問題の一部を解決することができた。
  • 電子居住者になるとデジタルIDカードが発行され、エストニア国内で銀行口座が開設でき、オンラインビジネスを起業することができる。
  • イーレジデンシーは2017年、セキュリティ上の問題から一時的に停止されたが、今も人気となっている。

東欧諸国の中には、人口時限爆弾 ── 少子高齢化による労働力不足に悩み、十分な経済成長を果たせていない国がある。

そうした国々では、市民はより良い仕事を求めて国を出ており、この流れの影響を緩和するには出生率は低すぎる。

エストニアは、人口時限爆弾を抱える国の1つだが、この経済問題の解決法を見つけたかもしれない。エストニアが2014年から始めた「イーレジデンシー(e-residency:電子居住)」の利用者が、エストニアの人口増加率を上回るスピードで増えているとクオーツは伝えた

世界中の誰でも118ドル(約1万3000円)払えば、エストニアの電子居住者になることができ、政府からデジタルIDが発行される。

IDを取得すればエストニアに銀行口座を開くことができ、同国でオンラインビジネスを行うことができる。だが、電子居住者に法的な居住権や市民権が与えられるわけではない。

例えば、電子居住者はエストニア国内で十分な収入を得ていることを証明しなければ、エストニアに永続的に暮らし、また不動産を購入することはできない。

イーレジデンシーはエストニアが進めるデジタル化の一例に過ぎない。

同国政府の記録はすべてサーバーに保管されていると、同国のIT政策担当Siim Sikkut氏は国際通貨基金(IMF)に語った。また電子化により行政の効率化が図られ、政府の支出を抑えることができたと述べた。

その他、エストニア市民はオンラインで投票できるだけではなく、あとから投票内容を変更することもできる。

エストニアでは、15歳以上の国民は電子IDを所持し、病院は新生児に電子出生証明書を発行する。

イーレジデンシーは人気を集めているが、何度か問題も起きている。2017年11月、政府は個人情報の流出につながる可能性があるセキュリティ上の重大な欠陥が見つかったとして、すべてのデジタルIDカードを一時的に凍結した

にもかかわらず、世界中の多くの著名人がイーレジデンシーにサインしている。

例えば、安倍首相、ドイツのメルケル首相、アメリカのコメディ番組「ザ・デイリー・ショー(The Daily Show)」の司会者トレバー・ノア(Trevor Noah )氏など。9月25日(現地時間)には、フランシスコ法王も加わった

エストニアのイーレジデンシーの利用者は約4万5000人、同国の人口130万人と比べると小さい。

だがSikkut氏は、イーレジデンシーはエストニアに注目すべきベネフィットをもたらしたと指摘した。

電子居住者が直接的な税収をもたらすわけではないが、電子居住者に金融サービスを提供する国内企業は、エストニア経済の活性化に貢献した。

若い世代の人口が少なく、エストニアは人口時限爆弾を抱えたままだが、イーレジデンシーは財政的な危機を埋め合わせることができた。

[原文:Estonia is making it easy for people to get 'e-residency,' and it’s offsetting a dangerous demographic time bomb

(翻訳:R. Yamaguchi、編集:増田隆幸)

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