ドライブスルーで商品を手渡す、ロサンゼルスにあるマクドナルドのクルー。
Lucy Nicholson/Reuters
- アメリカのレストラン業界では「人材をめぐる戦い」が激しさを増し、大きな問題になっていると、経営者やアナリストたちは指摘する。
- ダンキンドーナツ(Dunkin' Donuts)のようなチェーン店は、必要な人員を集めるのに苦戦していて、中には従業員不足のために売り上げが低下しているブランドもある。
- 失業率が低く、仕事の替えはいくらでもきくような状況で、チェーン店はスタッフを採用し、彼らが辞めないよう説得する方法を見つけようと奮闘している。
アメリカのレストラン業界は、キッチンとフロアーに必要なスタッフを確保するため、厳しい戦いを強いられている。
「業界にとって最大の課題は、"人材をめぐる戦い"だろう」
オリーブ・ガーデンの親会社ダーデン(Darden)のCEOジーン・リー(Gene Lee)氏は、直近の決算報告で述べた。
こうした懸念を抱いているのは、リー氏だけではない。ダンキンドーナツの幹部も数年前からこの問題について議論していて、元CEOのナイジェル・トラビス(Nigel Travis)氏は、あるフランチャイズ加盟店から必要な人員の60%しか集まらないと聞かされたと語っている。
アナリストたちも、今日のレストラン業界最大の問題の1つとして、従業員不足を挙げている。
「アメリカ経済はまさに好調だ」
BTIGのアナリスト、ピーター・サレー(Peter Saleh)氏はBusiness Insiderに語った。
「人々は、より良い仕事を求めて転職している。こうした企業が必要とするだけの、能力ある労働者は不足している」
失業率も低い。8月のアメリカの失業率は3.9%だった。人手不足が進む中、レストランは今も接客をしたり、食事を作ったり、店内を掃除したりするスタッフを頼りにしている。適正のある人材を確保できなければ、経営者が思い描くより大きな戦略を成功に導くことは困難だ。
「一部ブランドは実際、セールス・ポテンシャルを抑えている」
業界誌『フランチャイズ・タイムス』の創業者ジョン・ハンバーガー(John Hamburger)氏は言う。
「シフトを埋められるだけのスタッフが見つからなければ、こうしたレストランが本来やろうとしていただけのことはできない」
ハンバーガー氏は続けた。
「スタッフを見つけるのに苦労しているブランドは数多くある」
「仕事が欲しい人には、仕事がある」
ファストフード・チェーンで働かなくても、単発・短期の仕事はいくらでもある。
Jeff Chiu/AP Images
2018年、アメリカでは最低賃金でファストフードの仕事につかなくても、他の選択肢がある。
「世界史上初めて、仕事が欲しい人には仕事がある状態だ」
みずほのアナリスト、ジェレミー・スコット(Jeremy Scott)氏は、ウーバー(Uber)のドライバーを具体例に挙げ述べた。
ギグ・エコノミー(編集注:単発または短期の仕事を請け負う働き方)には医療保険はついてこないかもしれないが、選択肢がファストフードのキッチンで働くか、好きな時間に自分の車を運転して稼ぐかの2つなら、後者を選ぶ人もいるだろう。そしてメイシーズ(Macy's)やターゲット(Target)、ウォルマート(Walmart)といった小売大手も、季節限定の従業員を必死に確保しようとする中、ファストフード店での仕事に不満を抱いている人には数多くの選択肢がある。
「労働市場はよりタイトになりつつある」とBTIGのサレー氏は言う。「"スターター(starter)"もしくは"ロウアーエンド(lower-end)"と呼ばれるような仕事に就きたいと考える人は少なくなっている」
"人材をめぐる戦い"で最も大きく打撃を受けるのは、働いている従業員が不幸だと感じているブランドだと、UBSのアナリスト、デニス・ガイガー(Dennis Geiger)氏は2月、顧客向けのメモに書いた。
オンライン求人サービス「グラスドア(Glassdoor)」のデータを分析した「UBS エビデンス・ラボ(UBS Evidence Lab)」によると、ファストフード・チェーンのウェンディーズ(Wendy's)、ソニック(Sonic)、ケンタッキー・フライド・チキン(KFC)は2017年、従業員の満足度が最も低かった。マクドナルドとダンキンドーナツの評価も低かった。
こうした企業は、解決策を必死に探している。多くの企業が従業員にボーナスを出したり、訓練や教育の機会といった新たな特典を提供し始めた。
もう1つの解決策は、なかなか埋まらないポジション自体をシンプルに削るというものだ。求めるような人材を採用するのがほぼ不可能な場合、レジ係をロボットに置き換えるなど、役割を代替することも魅力的というだけでなく必要になってくる。
「唯一の真の対処法は、経営に必要な労働時間を削減することだ」と、サレー氏は言う。
(翻訳、編集:山口佳美)