オフィスなし! 700人がリモートで働くスタートアップの強み

700名が集まるイベント

InVisionの700名の社員たち。同社は物理的な本社を持たず、 全ての従業員がリモートで働いている。

InVision

  • InVisionは、従業員700名のソフトウエア・スタートアップ。だがオフィスはない。
  • 同社はリモートワークをベースに設立された。
  • InVisionのチーフ・ピープル・オフィサー、マーク・フレインは同社がどのように機能しているかを語った。

2011年にInVisionを設立した時、創業者兼CEOのクラーク・バルバーグ(Clark Valberg)は、競争力を保つためにはクリエイティブであることが欠かせないことを理解していた。また当時、グーグルがマンハッタンで存在感を増しており、東海岸で優秀なテック系人材を確保することはより難しくなっていた。

さらにニューヨークの厳しい不動産市場の中でオフィスを開設することは、好ましい展望ではなかった。InVisionのメイン製品は、ユーザー・エクスペリエンス・デザイナーの業務をサポートするソフトウエアであり、完全にノートPCで構築することができた。オフィスに大金を支払うことは無駄に思えた。

では、全員がオフィスから出てしまえば良いのではないか?

バルバーグは、まさにそれを実行した。

今、7年が経ち、従業員は700名になった。だが同社にはまだ、本社はない。

「いつも『CEOはどこで仕事をしているのか?』と聞かれる」と同社チーフ・ピープル・オフィサー(chief people officer)のマーク・フレイン(Mark Frein)は語った。

「CEOのクラークは彼の机で仕事をしている。コーヒー・ショップの時もあれば、家の時もある。我々にとって最も重要なパズルのピースは、全員が同じだと理解していること。リモート・モデルを推進しようというカルチャーは極めて強い」

「大切なのは結果、IPアドレスがどこかは関係ない」

InVisionの従業員は世界各地で働いている。イングランド、イスラエル、オーストラリア、アルゼンチン、ナイジェリアなど。タイムゾーンが違うものの、同社はアメリカ東部標準時の午前10時から午後6時を公式な勤務時間にしている。

だが、公式な勤務時間は存在するものの、大きな自律性を提供しているとフレインは語った。そして毎日、決まった時間に出てくるよりも、仕事のクオリティを通して自分自身を証明することが重要と付け加えた

「大切なのは結果、IPアドレスがどこかは関係ない。我々が関心を持っているのは能力と成果。不規則な時間で仕事をして、素晴らしい成果をあげることができるなら、それこそ素晴らしい」

同社はまた、大きなフレキシビリティも提供している。フレインと筆者が話をした時、彼は休暇中で家族と一緒にニューヨークを旅行中だった

「家族にとって大切なこと。そしてInVisionで働く我々にとって素晴らしいこと。子どもがいるなら、学校の休み中に働く必要はない。自由とフレキシビリティは、InVisionで働く最も満足できる理由」

フレインがInVisionのリモートワーク・ポリシーについて語ると、ほとんどの場合は疑われる。そしてしばしば、どうやって仕事をしているのか、どのようにして社員をマネジメントしているのかと質問される。

だが従業員が毎日、オフィスに出勤したからといって、リモートの時よりもより仕事をしているとは必ずしも限らないとフレインは語った。

「結局のところ、今は普通の会社なら、あなたが会社の中を歩いた時に、社員はYouTubeやソーシャルメディアを見ている。現代のナレッジ・ワーカー、テクニカル・ワーカーは、興味があることに集中する」

大勢の人が集まるイベント

多くのInVision社員が昨年の2月に開かれたイベントで初めて顔を合わせた

InVision

オール・オア・ナッシング

それでも、会社全体をリモートで経営することに問題がないわけではない。

たとえば、互いに会ったこともない同僚との関係構築は難しいとフレインは語った。彼はその点においては、InVisionは不利だと認識している。

この問題を解決するために、同社は従業員の間に共感を築き、同僚にたくさん質問をすることで関係を構築することを促している。

InVisionはまた、2018年2月には社員が一度に顔を合わせることができる全社的なレクリエーションを1週間にわたって開催した。

互いに一度も顔を合わせることなく、何年も一緒に仕事をしていた人もいた」とフレイン。

「皆、笑って泣いて、信じられないような体験だった」

フレインは、リモートワークを推進する会社をマネジメントすることから学んだ重要なポイントが1つあると述べた。それは、オール・オア・ナッシング

「当社の成功の最も重要な要因の1つは、全員で取り組んだこと。オフィスがあるのに、多くの人がリモートで働いていたら、問題が起こりかねない。なぜなら、リモートで働く人たちのワーク・エクスペリエンスは、オフィスで働く人たちと比べると、しばしば悪化してしまう」

フレインはまた、リモート・ワークを推進することがInVisionの競争優位につながっていると語った。つまり、地理的な制限がないため、同社は世界中から優秀な人材を雇用することができる。さらにInVisionによると、オフィスを持たないことで毎年、何百万ドルもの経費を節約している。

そして最も重要なことは、より良い製品を作ることに役立つとフレインは語った。

「我々はデザイナーのためのツールを開発するソフトウエア企業。自分たちの製品を考えることに間違いなく役立っている。なぜなら、多くのデザイナーと同じようにリモートで製品をデザインしているから」

だが究極的には、従業員にとっては他の選択肢がないからこそ、Invisionのリモート・ワーク・ポリシーは成功している。

「我々のモデルの重要な部分は、自分たちでやり方を作り上げたこと。なぜなら、どこにも行くところがなかったから」とフレイン。

「我々はうまくやるしかなかった。毎朝、オフィスに行くという選択肢はなかったのだから」

[原文:All 700 employees at this startup work remotely. Here's why one of its top execs says it's given them a major edge on the competition

(翻訳:一柳優心、編集:増田隆幸)

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