勢いにのるシャープ「AQUOS」、自社製有機ELで実現した超軽「zero」の実力

AQUOS zeroの軽さ

高性能さと風船で浮かせられるほどの軽さが、今回発表になった「AQUOS zero」の特徴。

シャープは10月3日、同社初の有機ELディスプレーを搭載したスマートフォン「AQUOS zero」を発表した。

シャープと言えば、液晶パネルに強みを持つメーカーだ。スマートフォンでも高画質かつ低消費電力なIGZOディスプレーを採用し、抜きん出た電池持ちの良さをアピールしてきた。しかし、今回「AQUOS」ブランドを冠するシリーズとしては初めて、OLED(有機EL)をディスプレーに採用した製品を投入する。

アップルの「iPhone XS」をはじめ、すでにハイエンドスマートフォンで多く採用されている有機EL。取材から見えてきたのは「軽さ」「自社開発」そして「AQUOSブランド」という3つのキーワードだ。

シャープが「液晶」をやめ「有機EL」を採用した理由

AQUOS zero

「AQUOS」ブランドで初めて有機ELを搭載した「AQUOS zero」。

現在、ドコモ、au、ソフトバンクの3キャリアから発売中の「AQUOS R2」は、静止画と動画に特化した2つのカメラを採用し、ディスプレーには応答速度の速い「ハイスピードIGZO」を搭載する、同社のフラッグシップモデルだ。

シャープの通信事業本部パーソナル通信事業部事業部長の小林繁氏はこのハイスピードIGZOについて、「高速駆動かつ省電力。低ノイズでタッチのレスポンスも良く、高画質で色の再現性も非常に高い」と、強い自信を見せている。にもかかわらず今回、新モデルに敢えて有機ELを採用したのは「有機ELにはIGZOとは異なる特性があるから」(小林氏)だ。

そのひとつが薄さと軽さ。有機ELではバックライトなどが不要な分、同じ画面サイズでも液晶に比べて薄く、軽くすることができる。

シャープがAQUOS zeroで目指したのは、この軽量化の追求だった。「スマートフォンの大画面化に比例して、重さもどんどん重くなっている。大画面を求める人、つまりスマホのヘビーユーザーほど、重くて使いにくいスマホを使っているのが現状」と、小林氏は説明する。

AQUOS zeroの素材

フレキシブルに曲げられる有機ELの特性を活かし、ゆるやかにカーブした曲面ガラスを採用。さらに筐体の素材を変更することで軽量化を実現。

AQUOS zeroでは有機ELの採用に加え、ボディーに使用する金属を従来のアルミニウムからマグネシウムへと変更。背面にも軽量かつ高い強度を持つ「アラミド繊維」を編み込んだ樹脂素材を採用している。徹底的に軽量化をはかった結果、iPhone XS Max並み(やや小さい)の約6.2インチWQHD+解像度(2992×1440ドット)の大画面に、3130mAhの大容量バッテリーを搭載し、同クラスでは世界最軽量となる重さ約146gを実現した。画面がより小さいiPhone XS(約177g)よりも31gも軽い

これは「300ページ程度の文庫本と同程度か、それよりも軽い」とのこと。実際に手にした印象も実に軽快で、これなら長時間片手で操作しても疲れないと思える仕上がりになっている。

自社製の有機ELで他社と差別化

AQUOS zeroは端までタッチできる

従来のIGZOディスプレーでも角を曲げることは可能だが、曲げたエッジ部分はどうしてもタッチしづらくなる。その点有機ELなら立体的な曲面ディスプレーを実現しつつ、画面の端までしっかりタッチ操作が可能だ。

有機ELには液晶に比べて色域が広いという特徴もある。シャープではこれまで、独自の広色域技術を使って、IGZOディスプレーで高い色再現性を実現してきたが、今回この技術を有機EL向けに、まさにゼロベースでチューニングし直したという。

その際に大きく貢献したのが、2016年から量産化に向けて取り組んできた自社開発の有機ELパネルだ。

スマートフォン向けの有機ELパネルの供給では現在、韓国のサムスン電子が大きなシェアを持っているが、シャープはこうしたサプライヤーから供給を受けることなく、自社開発したパネルをスマートフォンに採用。すでに量産化に向けて工場の生産体制も整っている。

有機ELの色味調整

「リッチカラーテクノロジーモバイル」で、ビビッドになりがちな有機ELの色合い(右)をより自然に調整(左)。

「パネルの特性を知り尽くした上で、調整ができるのは自社開発ならではの大きな強味」と小林氏。

具体的には、コンテンツの持つ色域を拡大して、より色鮮やかな表現を実現しつつ、ビビッドになりすぎない“自然な色合い”を目指したという。有機ELを搭載したAQUOS zeroがAQUOSたる部分は、まさにこの「自然な色再現性にある」と小林氏はいう。

ハイエンド機はzeroとR2の2本立てに

AQUOS R2

2018年5月に発表されたフラグシップ機「AQUOS R2」。

撮影:小林優多郎

シャープでは現行のAQUOS R2にAQUOS zeroを加え、同社のフラッグシップモデルを2本立てにする考え。

AQUOS R2は写真や動画、SNSなどを思う存分楽しみたいユーザー向け。一方の「AQUOS zero」は高精細&大画面を求める人向けのエンターテインメント・フラッグシップと位置付ける。

そのため心臓部であるチップセットには、クアルコム製ハイエンドSoC「Snapdragon 845」を採用し、メモリー6GB、ストレージ128GBを搭載。さらに、充電しながらゲームをプレイする際に端末の一部分に熱が集中しないよう、充電ICを並列搭載する工夫もされている。

通信事業本部本部長の中野吉朗氏は発表会後の囲み取材の中で、「敢えてセグメントを分けて、同時に売れるようにと考えて商品化している。AQUOS zero投入の目的は、新しい市場の開拓し、ユーザーの選択肢を広げること」だと説明した。

トータルで国内Androidシェア40%を目指す

シャープ 集合写真

シャープ 通信事業本部 パーソナル通信事業部 事業部長の小林繁氏(左)と、通信事業本部 本部長の中野吉朗氏(中央)、「AQUOS sense」シリーズを担当するパーソナル通信事業部 商品企画部の清水寛幸氏(右)。

発表会で中野氏は「2020年にAndroidスマートフォンのシェア40%超を目指す」と発言。BCNランキングの調査によると、同社の2018年上半期(1月~6月)のAndroidスマートフォン内のシェア率は25.9%。国内1位の規模を誇っているが、40%という数字は非常に大きなものだと言える。

いまAQUOSのシェアの中核を占めるのはAQUOS zeroやR2といったフラグシップモデルではなく、ミドルレンジの「AQUOS sense」シリーズになる。

同日にはAQUOS zeroとあわせて、200万台を売り上げた大ヒットモデルAQUOS senseの後継機種にあたる「AQUOS sense 2」も発表された。

こちらは、正当進化した5.5インチのIGZOディスプレーを搭載。ハイエンドAQUOS Rシリーズに迫る高画質と低消費電力を両立しつつ、AIによるシーン認識で明るくきれいに撮れるカメラなどトレンドもしっかり押さえた、よくできた「ほどほど」を狙ったスマートフォンだ。

AQUOS sense 2

ちょうどいいバランスの良さを追求したミドルレンジモデル「AQUOS sense 2」。

「フィーチャーフォンから乗り換えるユーザーに対して、AQUOS sense 2のようなラインアップを持っていることは、他社にない強味。また法人のお客様からは国内メーカーのスマートフォンがいいという声もいただいており、今後の法人需要の伸びにも期待しています」と小林氏は語った。

(文、撮影・太田百合子)


太田百合子:フリーライター。パソコン、タブレット、スマートフォンからウェアラブルデバイスやスマートホームを実現するIoT機器まで、身近なデジタルガジェット、およびそれらを使って利用できるサービスを中心に取材・執筆活動を続けている。

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