脳が変わる ── 神経外科医が勧める、人生を変える読書

読書をする男性

読書は脳のためのクロストレーニング。

RenysView/Shutterstock

  • 読書のメリットは、新しいことを学べることだけではない。にとっても非常にメリットがある。
  • 神経外科医のマーク・マクラフリンは、読書(ただし、医学書と教科書以外)は人生を変えたと語った。
  • 彼は、難しい状況をよりうまく乗り切ることができるようになっただけではなく、脳の神経のつながりにも効果があったと語った。
  • さまざまな研究から、読書は言語や感情移入に関連する脳の部分を活性化させることが明らかになった。

私は神経外科医として開業の準備をしていた頃、自分が変わった瞬間を経験した。

手術室で難しいオペをしていた時ではない。自宅の静かな部屋の中、ランプの光の下で起きた。

私は読書をするようになったのだ。

子どもの頃も医学生の頃も、勉強に必要な本以外はほとんど読まなかった。私は忍耐力がなく、医学書以外の本を読むことは、時間の無駄に思えた

そんな私の考えが変わったのは、30代半ば。Princeton Brain and Spine Careを開業しようとしていた頃だった。医大はビジネスは教えてくれない、だから急がなければならなかった。マネージメント、プランニング、人事、経理、リーダーシップに関する本を読み漁った。

私に変化を起こした本は、ジム・コリンズの『ビジョナリー・カンパニー 2 - 飛躍の法則(原題:Good to Great)』。そして、マルコム・グラッドウェルの『急に売れ始めるにはワケがある ネットワーク理論が明らかにする口コミの法則(原題:The Tipping Point)』を夢中で読んだ。マーケティング関連の本の中で最高の1冊だと思う。

ビジネス書を読み続けているうちに、 伝記やフィクションにも手を伸ばすようになり、最後には何かに必要だから読むという“縛り”から抜け出した。

そしてすぐに自分にとって読書は、ただ知識を得るためだけのものではなく、コミュニケーションスキルを向上させるものでもあることに気付いた。患者や同僚と話をする時に、以前よりも注意深く聞くようになり、より明確かつ本質を突いた返答ができるようになった。

もちろん神経外科医として、読書が神経レベルで自分に与えた影響を知りたくなった。思考プロセス全体に影響を与えたことは明らか ── だが、脳の“構造”にも影響を与えたのではないだろうか。

研究の結果、以下のことが分かった。

読書は実際に脳神経のつながりを変える。

スキャン技術の進歩により、読書が脳のコミュニケーションに関連する領域に与える影響を実際に見ることができるようになった。

2013年のエモリー大学(Emory University、私の母校)の研究では、ボランティアの学生に9夜連続で小説(古代のベスビオ山噴火をテーマにした2003年のスリラー『Pompeii』)を読ませた。そして、その後に行ったMRI検査で、左の側頭葉の脳神経のつながりが増加していることが分かった。そこは、言語の受け入れに関する領域。

最も興味深いことは、被験者はスキャン中は読書していなかったにもかかわらず、言語プロセスの強化が明確だったこと。研究をまとめた神経外科医のグレゴリー・バーンズ(Gregory Berns)によると、この増加したつながりは「筋肉みたいなもの」。想像してみてほしい。もし毎晩、読書をしたら、このつながりがどれほど強くなることか!

カナダのヨーク大学(York University)の心理学者、レイモンド・マー(Raymond Mar)が分析した別のMRIでは、ストーリーを理解し、他人の考えや感情を理解しようとする脳の中では神経ネットワークの重なりが増えていた。

つまり、フィクションを読むと、明らかに実際の人付き合いもうまくなる。特に、難しい状況ではなおさら。

私はこのメリットに、自分自身の人生の中で気が付いた。病院でも、仕事上の取り引きでも。

私にとって、患者やその家族に対して、分別と理解を持って接することは重要なこと。いつか、必要な手術を拒む患者を優しく説得しなければならない日が来るかもしれない。愛する子どもを亡くした両親を慰めなければならない日もあるかもしれない。

本のページのさまざまな登場人物の人生に浸ることで、難しい場面でも実際の人たちを「読む」能力が上がった

また習慣的に読書することで、協力や支援が必要な時に、同僚に手助けしてもらえる能力を身に付けることができた。実際、会話が豊かになった。ビジネスで、レスリングを教える時に、そして、自分の家族といる時。

読書を続けてきたことで、さまざまな知識を身に付けた。読書が難しい状況を乗り切るために、どれほど役に立つかがはっきり分かる。たとえ、読書した内容とは関係のない状況であっても。

読書は脳のためのクロストレーニング。そして、人生のための素晴らしいトレーニング

読書好きであることは、スタッフのトレーニングやスタッフとの関係づくりにも役立った。例えば、ミーティングでヘンリー・マーシュ(Henry Marsh)の 『脳外科医マーシュの告白(原題:Do No Harm: Stories of Life, Death, and Brain Surgery)』を皆で読み、議論する。外科医の仕事についての刺激的なストーリーは、スタッフに医師と患者の関係について、より良い視点を与えてくれる。

私の最大の望みは、本という贈り物が、私のような人々のもとに届くこと。そう、遅ればせながら真剣に読書し、本が持つ大きな可能性との出会いに感謝している人々。

文字の波に乗れば、自分が到着した新たな場所の魅力に驚かされることだろう。ウォルト・ディズニーはかつて、こう言った。

「本には、宝島の海賊が盗んだ財宝よりも多くの宝物が眠っている」

マーク・マクラフリン博士(医学)は、Princeton Brain and Spine Careで神経外科を開業、脳外科手術の背景にある基本原理は日常生活に適用できると考えている。彼のミッションは自身のキャリアから学んだ教訓を生かして、ストレスフルな状況に悩む人、問題解決に取り組む人をサポートすること。

※敬称略


[原文:I'm a neurosurgeon, and the habit that completely changed my life can help improve anyone's mind

(翻訳:Ito Yasuko、編集:増田隆幸)

ソーシャルメディアでも最新のビジネス情報をいち早く配信中