LINE Payは新しい利用シーンとして、トークルームでの決済機能を本格始動させる(写真は開発中のデモアプリ)。
LINEは、キャッシュレス決済サービス「LINE Pay」が、チャットボットなどのトーク画面上でも利用できるようになったことを発表した。
国内第1弾となるのは、2012年設立のスタートアップ・ブライトテーブル社が提供するレストラン予約代行「ペコッター」のLINEアカウント版。本日から優先予約サービスの利用料(240円)をLINE Pay残高とLINEポイントから支払えるようになる。
LINE Payはチャット内決済に対応
チャットを通してサービス使用料などをLINE Payで支払える(以下、写真は開発中のもので、実際とは一部異なります)。
LINE Payは、QRやバーコードをスマートフォンの画面に表示して、ローソンなどの加盟店で支払えるほか、対応するウェブサイトでの支払い、LINEの友だち同士での送金などの機能を持っている。
今回発表されたトークルーム上でのLINE Pay決済機能は、企業やサービスの公式アカウントの「ボット」と話す過程で、別のウェブサイトに飛ばされることなく、スムーズに決済を行えるといったもの。
今回のチャット内決済は「オンライン向け決済」の「物販・サービス」の手数料が適用される。
出典:LINE Pay
決済可能な対象は“サービスもしくは物販”に限られており、スタンプや音楽、電子書籍などに代表される“デジタルコンテンツ”の販売は不可。これは、主にアップルのApp Storeが定める規約に則るためだ。
なお、手数料は同社の定めるオンライン向けの「物販・サービス」の決済手数料が適用され、1回あたり3.45%。2021年7月31日まで同社が展開中の「LINE Pay店舗用アプリ」向けの“決済手数料0円”のキャンペーンの条件には当てはまらない。
まずはチャット型「飲食店予約サービス」が導入
チャット形式でお店を検索、予約がとれる「ペコッター」。
LINE Payの新しい機能をいち早く活用した「ペコッター」。ペコッターのサービス内容は、至ってシンプル。同社のキャラクター「はらぺこ君」とチャットで場所や時間を指定すると、ユーザーの代わりに飲食店の予約ができるというものだ。予約がとれない場合は、指定した店舗の周辺やジャンルが似ている別の店舗を案内してくれる。
ペコッターを運営するブライトテーブル社長の松下勇作氏。
サービス利用料は基本無料だが、サービス内で240円の「エナジードリンク」を購入すると、予約申請から完了までの待ち時間が短縮される。混雑具合によって変わるものの、ブライトテーブル社長の松下勇作氏によると「普段、長い時では予約完了までに24時間ほどかかることもあるが、エナジードリンクを購入してもらうと5分以内に案内できる」と話している。
今までこの課金機能は同社のiOSアプリからのみ利用できたが、今回のLINEとの取り組みにより、LINEアカウントでも利用できるようになる。
なお、ペコッターはAndroid向けアプリを提供していないので、(今回のLINE Payでの対応は)Androidスマホのユーザーにとっては、特に朗報と言える。
ペコッターは予約が完了すると、その結果もチャットで教えてくれる。ユーザーは指定した日時に現地に行くだけ。
予約可能な店舗は「国内で電話が通じればどこでも」と松下氏は語る。そのシンプルさと利便性の高さからか、月間アクティブユーザーは約1万人(2018年10月6日時点)まで伸びている。2018年2月にはジェネシア・ベンチャーズ、AGキャピタル、ダス・キャピタル、アコード・ベンチャーズへの第三者割当増資により1億円を調達している。
チャットは新しいキャッシュレスの形の一つ
LINEの開発者向けサイトでは、2018年7月頃からメインプロダクトの中に「LINE Pay」が紹介されている。
出典:LINE
今回のトークルーム上でのLINE Pay決済機能は、2015年12月に公開した「LINE Pay API」と、2018年6月に正式公開した「Messaging API」を活用したもの。実は機能自体が目新しいというわけではない。
しかし、同社でLINE Payの開発を担当する中嶋一樹氏は「少額のサービスや、会話の中で生まれるサービスが今後出てくるのではないか」と期待を寄せる。
LINE Payの開発などに携わる中嶋一樹氏(左)と岡田知拓氏(右)。中央がブライトテーブルの松下勇作氏。
チャット内決済の利用が想定されるサービスとしては、ペコッターのような「チャットの中で自然に使えて、かつ生活に密着しているもの」と中嶋氏は話す。すでに導入を検討している例としては、LINEと包括提携協定を結んでいる福岡市の「粗大ゴミ収集受付用LINEアカウント」での粗大ゴミ収集料金の支払い機能が挙げられている。
また、中国の一部のフードコートでは座席にQRコードが貼ってあり、それを読み込むとチャットが起動し、客はチャット内で注文と決済を済ませ、あとは料理完成の呼び出しを待つだけといったサービスもある。このように、オンラインに限らずオフラインでの活用例も期待されている。
LINEは日本でもチャットの文化を通して、LINE Pay残高を活用できるシーンを増やしていく狙い。加えて、開発者サイトでもLINE Pay APIを目立つ位置に移動させ、企業やデベロッパーへの利用も促していく方針だ。
(文、撮影・小林優多郎)