フェイスブックは音声操作できるアシスタント内蔵ディスプレー(スマートディスプレー)をリリースした。
出典:Facebook
アマゾン、グーグルが領地を広げる「家庭向けスマートディスプレイ」市場に、ついにFacebookも参入する。
米Facebookは10月8日(現地時間)、個人向けスマートディスプレイ「Portal」シリーズ2製品を発表した。発売地域は現時点では北米地域のみ。Facebook直販サイトでは、小型のPortalが199ドル(約2万2500円)、大型の「Portal+」が349ドル(約3万9380円)。予約受付中で、11月にはAmazon.comや米国の家電量販店大手Best Buyでの販売も開始予定だ。
Portalはビデオ通話デバイスとして特化
上位機の「Portal+」は、縦長比率のビデオ通話やユーザー自動追尾の機能を持つ。
出典:Facebook
Portalシリーズは、Facebookの知り合い同士の連絡に特化している。Portal本体のカメラと10.1インチ(Portal+は15.6インチ)のディスプレーを利用し、スマートフォンやタブレット向けMessengerアプリを通して通話やビデオ通話が可能。
また、同社のAR(拡張現実)技術「Spark AR」をサポートしており、通話中の自分の顔にリアルタイムのエフェクトやキャラクターマスクを加工してコミュニケーションをとることもできる。
なお、大画面のPortal+はディスプレーを90度回転でき、横長・縦長どちらのビデオ通話にも対応。さらに、カメラは視野140度、最大8倍ズームが可能となっており、映っている被写体を自動で追尾するという。
Portal公式サイトのいくつかの動画を見ると、「人物の自動追尾」の挙動がよくわかる。1200万画素の高解像度な140度広角カメラで捉え、人物周辺をクロップして表示することで、あたかもカメラが人を追いかけるような動作ができる。
プライバシーへの配慮も大きくアピールしている。曰く、「FacebookはPortalのビデオ通話の内容を保存したり聴いたりしない」「スマートカメラのAI技術はFbサーバーではなくローカルで動く。カメラは顔認識しないし、あなたの身元を特定しない」といった具合だ。
アマゾンはライバルかパートナーか?「アレクサ対応」の謎
Facebookは、アマゾンともグーグルとも違う方法でユーザーの自宅の寝室やキッチンに陣地を構える。
出典:Facebook
スマートスピーカーがまだ一部に普及し始めた程度と見られる日本では実感が薄いが、スマートディスプレーの現状は、アマゾンとグーグルの激しい競争状態にある。
グーグルは記事執筆時点では、レノボ、ハーマン、LGエレクトロニクス製のスマートディスプレーを既にリリースしている、また、アマゾンは、9月20日に10.1インチディスプレー付きの第2世代「Echo Show」を発表したばかりだ。
アマゾンやグーグルへの対抗策として、「Facebookもついにスマートディスプレー事業に参入、真っ向対決か」と思うところだが、新製品Portalの実状は少し複雑だ。
Facebookのリリースによると、Portalのウェイクワード(本体の音声操作を起動するための言葉)は「ヘイ、ポータル」だが、天気のチェックや電球などのスマートホーム機器の操作は、アマゾンのアレクサを活用しているという。
驚くのは、アマゾンでの商品の注文もできるということだ(Newsroomには「order groceries」とある)。Portalの立ち位置的にはオンキヨーやハーマンカードンなどのサードパーティーが販売するアレクサ内蔵製品と同じようにも見える。
ただし、ほかのアレクサ対応メーカーとは異なり、音声コントロールなどの履歴情報はFacebookのアクティビティーログとして保存されるとしている。あくまでもFacebookはアレクサを一機能として活用しつつ、キッチンや寝室などといったパーソナルスペースの一丁目一番地を狙っていく方針のようだ。
(文・小林優多郎)