「従業員の扱いで批判されたから」だけではなかった! 米アマゾンが最低賃金を引き上げた、もう1つの大きな理由

アマゾン

AP/Scott Sady

  • 数カ月にわたる政治的な圧力を受けた後、アメリカのアマゾンは従業員の最低賃金を時給15ドル(約1700円)に引き上げると発表した。
  • CEOのジェフ・べゾス氏は、今回の決断は同社に対する批判に耳を傾けた結果であり、他の企業も同じような対応を取るよう勧めた。
  • 労働市場がタイト化する中、アマゾンの賃金アップは自然の流れだとエコノミストは指摘する。

アメリカのアマゾンの従業員全員の最低賃金を15ドルに引き上げると発表したとき、CEOのジェフ・べゾス氏はそれがある種の道徳的な責任であるかのように表現した。

「我々に対する批判に耳を傾け、我々が何をしたいのか熟考し、先頭を行こうと決めた」

ベゾス氏は2日(現地時間)、アマゾンの従業員の扱いに対するここ数カ月の反発に触れ、こう語った。

「この変化に我々は胸を躍らせており、競合他社やその他の大企業にも我々の仲間入りをするよう勧めたい」

しかし、政治的な圧力は別として、エコノミストたちは恐らくアマゾンはいずれにせよ賃金アップをしただろうと指摘する。労働市場がタイト化する中で競争力を維持するには、アメリカ国内の企業は似たような動きを取らざるを得ないだろうと言う。

「これは、現在の政治情勢や労働市場の行く先について多くを語っているという意味で大きな出来事だ」

求人ソフトウエア会社iCIMSのチーフエコノミスト、ジョッシュ・ライト(Josh Wright)氏は言う。

「だが、意義深いというよりは象徴的な出来事だ」

記録的に低い失業率と好景気が続く中、アメリカの労働力不足はクリスマス商戦にも影響を及ぼそうとしている。つまり労働力の確保が難しくなれば、企業はより良い条件を提示する必要に迫られるということだ。

求人検索サイトIndeed(インディード)の経済調査の責任者マーサ・ギンベル(Martha Gimbel)氏は、アマゾンの今回の動きは現在の労働市場では想定内の事例の1つに過ぎず、他の企業も同様の動きを取ることになるだろうと見ている。

「これはアマゾンだけの現象ではない」とギンベル氏は言う。「何かを見つけるのがより難しくなれば、そのためにより多くを払わなければならない」

ただ、それが国の賃金データにすぐに現れる可能性は低そうだ。ムーディーズ(Moody's)のエコノミスト、アダム・オジメク(Adam Ozimek)氏は、このポリシーの影響を受けるのは全就業者数の25%以下であることから、アメリカの1時間あたりの平均賃金は1.2セントしか上がらないと見ている。その一方で、平均賃金は毎月約10セントほど上昇傾向にあるという。

「つまり、いずれにせよ賃金は上がる方向にあり、このポリシーがなくても一部で賃金アップは起きただろう」

オジメク氏は言う。

「労働市場をタイト化させるというより、タイト化した労働市場を反映したものだとわたしは考えている」

それでも、この動きを"より大きなトレンド"と捉える見方もある。オンライン求人サービス大手グラスドア(Glassdoor)のチーフエコノミスト、アンドリュー・チェンバレン(Andrew Chamberlain)氏は、アマゾンの決断は「即時に」賃金アップのプレッシャーを与えるだろうと予測している。アマゾンの柱である小売業及びeコマース業界では、国の平均以上に賃金アップのスピードが速まるだろうとチェンバレン氏は見ている。

「これは前兆だ」と同氏は言う。「アメリカ最大の小売業者がこのような態度を明確にすれば、他の企業は競争面で不利な立場に置かれる」

そして、経済全体としての労働力不足を考えれば、小売業及びeコマース業界での変化は他の業界から労働者を奪うことで、連鎖反応を起こしかねない。

「こうしたポリシーや世論は影響力を持つ」

チェンバレン氏は言う。

「アマゾンはプールの中の大きな魚のような存在だ。その影響力は広範囲に及ぶ」

[原文:Amazon was under intense political pressure to raise pay — but there's another obvious reason it’s giving workers more money]

(翻訳、編集:山口佳美)

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