日本でも11月1日に発売となる「Pixel 3/3 XL」。
グーグルは10月10日、同日にアメリカ・ニューヨークで発表した新型スマートフォン「Pixel 3」「Pixel 3 XL」の国内発表会を東京・恵比寿で実施した。
日本上陸の正式発表に伴い登壇したグーグルのGoogle Pixel担当シニアディレクターのNanda Ramachandran(ナンダ・ラマチャンドラン)氏。
改めてPixel 3シリーズの特徴を解説したほか、価格や発売日、取り扱いキャリア(NTTドコモとソフトバンク。詳細は後述)、日本独自の取り組みについて発表。
会場ではいち早く国内SIMフリー版を触ることができたので、そのファーストインプレッションとキャリア向けモデルとの違いや価格・特典の差をお送りする。なお、細かなスペックなどはグローバル版と同様のため、公開済みの速報記事を参考にしていただきたい。
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他社の高性能モデルとは異なる方向性の「質感」
5.5インチの有機ELディスプレーを搭載する「Pixel 3」。幅68.2mm、高さ145.6mmと画面サイズの割には小さく感じる。
Pixel 3とPixel 3 XLの違いは、本体と画面サイズ以外ほとんどない。実際に手に持つと、Pixel 3の方が5.5インチという画面サイズの割には小さく感じる。大画面版のPixel 3 XLは、最近のスマートフォンの大画面ブームにならって四隅ギリギリまで表示領域が広がっていて、見た目にもかなりインパクトがある。
こちらが6.3インチの「Pixel 3 XL」。幅76.7mm、高さ158mmで正面1杯に画面が広がっているのが特徴的。
操作感に関しては、従来のAndroidに慣れた人ほど最初は戸惑うかもしれない。従来は基本的に、画面下に「戻る」「ホーム」「マルチタスク」の3つのボタンがあったAndroid。それが最新OSの「Android 9 Pie」を搭載したPixel 3シリーズでは、アップル「iPhone X」のようなフリック操作に置き換えられているからだ。
具体的には、
- 上にスワイプ =アプリ履歴表示
- 上にロングスワイプ =アプリのドロワーを表示
- 右にスワイプ =履歴上のアプリを起動
- ロングタップ =Googleアシスタント起動
というようなジェスチャーになっている。
細かな部分にこだわりを感じる質感
Pixel 3シリーズのカラーバリエーションはどれもデザインや端末自体の個性を主張するものではない。
Pixel 3とPixel 3 XLは、どちらも3色のカラーバリエーション。背面は一部マット加工の施されたガラス素材を採用。ブラック以外の2色は、電源キーが別の色になっているという芸の細かさもある。
このデザインは正直、個人の好み次第の部分もあるが、iPhoneを含め各メーカーのフラグシップ端末がどれも両面ガラスを採用し、非常に艶やかな外観をしているのに対し、Pixel 3シリーズは(質感がマットなため)どこか落ち着いた印象を受ける。
注目の「グーグルのAIカメラ」の実用度
シャッターを切った瞬間がイマイチな結果でも、Pixel 3のトップショット機能を使えば、シャッターの前後で「最適」と思われるシーンをAIがオススメしてくれる。
会場では、Pixel 3シリーズでさかんにアピールされている、グーグルの機械学習の研究成果を盛り込んだ機能も体験できた。以下、写真で紹介していこう。
Pixel 3シリーズの背面カメラはシングルレンズ構成だが、AIが被写体を認識するため、撮影後の背景ぼかしの機能も使える。
被写体の情報を検索する「Google レンズ」機能も日本上陸。翻訳などはネット環境が必須だが、写真内の文字の認識などは内蔵の専用チップで処理している。
Playground機能では、マーベルやスター・ウォーズなどのキャラクターと一緒にAR撮影が可能。背面カメラでも正面カメラでも使える。
ちなみに、Pixel 3シリーズはmicroSDカード非対応だが、Pixelユーザーは2022年1月31日までサイズ圧縮なしで「Googleフォト」に無制限に写真や動画を保存できるので、ストレージの利用容量を抑えられる。
実機を触れたのはわずかな時間ではあるが、どの機能も日常での利用シーンを想定しており、実用性は高く感じた。
スマートフォンの利用抑制機能も実装
Digital Wellbeingの設定画面では、自分がどんなアプリをどのぐらいの時間使ったかをひと目で確認できる。
Pixel 3シリーズに実装された機能の中で、一際ユニークに感じたのは「Digital Wellbeing」だ。これはグーグルが「健全なデジタル生活を促す」目的で提供するスマートフォンの利用抑制機能だ。
活動時間を設定しておけば、活動時間外に自動的に「おやすみモード」に変化。通知などが来なくなるほか、画面もモノクロになり視覚的にも気持ちを切り替えられる。
「スマホゲームや仕事のアプリを使いすぎないようにしよう」など、アプリごとに利用時間を制御することもできる。
なお、Digital Wellbeingは2018年5月に開発者向けイベント「Google I/O 2018」で、Android 9 Pieの機能として発表されたもの。しかし現時点では、Pixel 3シリーズ以外のAndroid 9端末では利用不可となっている。
詳細はグーグル広報に確認中だが、Pixel 3の画面上でも「ベータ版」という表記があるため、まずはPixelユーザーが先行して試用できる機能になっている可能性が高い。
プリインアプリ、対応サービスにも差アリ
日本向けPixel 3シリーズには、おサイフケータイアプリがプリインストールされている。iDや量販店のポイントカードのほか、SuicaやnanacoなどのGoogle Pay対応サービスのどちらも利用できる。
グーグル直販のSIMフリー版はいわゆるキャリアアプリが入っていないシンプルな初期環境も魅力の一つだ。
一方で、SIMフリー版準拠だと国内3キャリアが推進する次世代メッセージサービス「+メッセージ」が利用できないなどのデメリットも発生する。グーグルが販売するSIMフリー版とキャリア版がどのくらい違うのか、各社広報に問い合わせてみた。
NTTドコモ広報部「ドコモ独自の仕様は実装されておりません。また、+メッセージはご利用いただけません」
ソフトバンク広報室「いくつか弊社のアプリをプリインストールします。+メッセージは対応していますが、プリインストールではありません」
どちらかと言えば、ドコモ版の方がSIMフリー版に近いようだが、+メッセージに関しては現在契約者向けにPlayストアで配信しているソフトバンクの方が柔軟に対応できた格好だ。
購入チャンネルごとに価格や容量が異なる
SIMフリー版Pixel 3シリーズの日本向け価格。
さて、いざ購入しようと考えたとき気になるのは端末の価格だ。日本ではグーグル直販サイトでのSIMフリー版の販売のほかに、NTTドコモとソフトバンクの取り扱いが決まっている。
価格で注意したい点としては、ドコモ版はPixel 3が64GBストレージ、Pixel 3 XLが128GBストレージのモデルしかない点と、SIMフリー版かドコモ版かソフトバンク版かで、各種特典がかなり異なるというところだ。
Pixel 3は海外版と比べて5000円程度の価格差。
作成:Business Insider Japan
Pixel 3 XLはとくに128GB版が高く、1万円以上の価格差がある。
作成:Business Insider Japan
アメリカ発表をベースにした先行記事で、おサイフ対応をしっかりしてきたPixel 3シリーズは日本展開にかなり本気ではないかと書いたが、それは日本の販売体制にも言える。
Pixel 3シリーズは、ドコモ・ソフトバンク共に実店舗でもオンラインストアでも、「グーグル純正の保護ケース」や「専用のワイヤレス充電スタンド」も取り扱う。キャリアともコミュニケーションをとりながら、「日本でも売れる体制づくり」を意識した展開をしているのは、本体代金がお得なキャリア版を購入しようと考えている人にとっても安心と言えそうだ。
(文、撮影・小林優多郎)