補償原資足りずテックビューロ消滅へ。仮想通貨取引所「倒産リスク」にどう備える?

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撮影:今村拓馬

約70億円相当の仮想通貨が流出した、取引所Zaifが解散することが2018年10月10日に決まった。Zaifを運営するテックビューロが、同じ仮想通貨交換業者であるフィスコ仮想通貨取引所に事業を譲渡し、テックビューロは解散の手続きに入る。

2017年4月に改正資金決済法が施行されて以降、正式な登録業者の廃業は初めてとなる。

交渉難航の末、事業継続断念

9月14日に流出事案が発生して以降、テックビューロはフィスコ側から利用者への補償原資などについて支援を受ける方向で協議を進めていた。9月20日にテックビューロが流出事案を公表した時点では、9月下旬にはフィスコ側から「(支援の)提供が実行されることを前提として準備・交渉を進めている」としていたが、詰めの協議に時間がかかった。

協議の結果、フィスコ側が利用者への補償も含めて引き受ける一方で、テックビューロの事業継続は断念されることとなった。

当初の発表内容から、利用者の資産保護の枠組みが大きく変更された点についてテックビューロは「結果的に当初のスキームに変更は生じましたが、 顧客資産の保護という点では差異がありません」としている。

フィスコとテックビューロの関係は近かった

金融庁

今後、取引所の倒産に備えて、どんな制度を構築していくのか。

撮影:今田拓馬

これまで、フィスコ仮想通貨取引所は、テックビューロが運営するZaifの取引所のシステムの提供を受けるなど、近い関係にあった。仮想通貨の流出が発生したのは9月14日だが、その2週間ほど前から、両社のギクシャクした関係が表面化していた。テックビューロの直近の動きを時系列で整理すると次のようになる。

  • 8月31日:フィスコ仮想通貨取引所、Zaifのシステムからの分離・独立を発表
  • 9月12日:フィスコ仮想通貨取引所、「新システム」の運用を開始
  • 9月14日:午後5時〜午後7時ごろ、Zaifに不正アクセス
  • 9月17日:テックビューロ、サーバ異常を検知
  • 9月18日:テックビューロ、ハッキング被害を確認、支援を要請
  • 9月20日:テックビューロ、ハッキング被害を公表
  • 同日:フィスコ、テックビューロへの金融支援につき基本合意書を交わしたと発表
  • 9月25日:金融、テックビューロに3度目の業務改善命令
  • 10月1日:フィスコ、具体的な対応の詳細を検討中とあらためて発表
  • 10月10日:テックビューロからフィスコ仮想通貨取引所への事業譲渡を発表

ハッキングで補償原資が足りない状態に陥る

流出した仮想通貨70億円のうち45億円は、利用者が保有する資産だった。利用者全員が仮想通貨の返還を求めた場合、「当時のレートでは返還義務を果たすために約45億円の仮想通貨が足りない状態」(10月10日付のテックビューロのプレスリリース)に陥っていた。

このため、金融支援を受けることができなければ、テックビューロの経営破たんや、利用者から預かっている資産を返還できない状況も懸念された。9月25日、テックビューロに対して3度目の業務改善命令を出した金融庁の担当者は「外部から資金調達をして云々と書いていますが、それを実行させる必要がある」と、強い危機感を示していた。

今後、株主総会などの手続きを経て、11月22日に正式にフィスコ仮想通貨取引所への事業の譲渡が実行される予定だ。

取引所の倒産リスクは高い

2018年1月下旬、取引所コインチェックから約580億円相当の仮想通貨が流出したが、この時期は、仮想通貨ブームで多額のマネーが取引所に流れ込んでいた直後だった。このため、コインチェック事案の際には、倒産のリスクについては、それほど議論されなかった。

フィスコへの事業譲渡が正式に決まったことで、テックビューロの経営破綻で利用者の資産が返還できない最悪の状況は回避された。だが、今回の流出事案は、取引所がハッキングの被害を受けた場合、高い倒産のリスクを抱えていることを浮き彫りにした。

今後、取引所が倒産に至った場合に備えて、どのように制度を再構築するのか、議論が進みそうだ。金融庁の研究会では、取引所に対して仮想通貨の信託を促す案などが議論されている。

(文・小島寛明)

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