日本で展開または展開予定のAmazon Echoシリーズ。
アマゾンジャパンは10月11日、同社のスマートスピーカー「Amazon Echoシリーズ」に関する報道向け説明会を東京・目黒で開催した。
説明会では、9月20日に米アマゾンが発表した新製品のうち日本で発売が予定されている「Echo Show」「Echo Dot」「Echo Plus」「Echo Sub」の実機が披露されたほか、他メーカーとの取り組みや、アシスタント・アレクサの拡張機能「スキル」の開発者向け新ツールなどが解説された。
アレクサ上陸から1年、1500以上の日本製スキルが登場
日本で生まれた1500以上のスキル。
アマゾンジャパンのアレクサビジネス本部の柳田晃嗣本部長。
同社でアレクサの開発者向けビジネスを担当する柳田晃嗣氏は、この1年間で「1500を超えるスキルが日本で生まれた」と日本の開発者間でのアレクサ・スキルの注目度を表現。
また、日本では2018年7月に登場した小型の画面付きスピーカー「Echo Spot」により、「マルチモーダルスキル※の数が4倍に増えた」(柳田氏)と最新の動向も明かした。
企業や個人開発者の注目度が増えるにつれ、開発者から要望を含めたフィードバックも増えてきたという。そこで同社はここ最近で3つの取り組みを今後展開するという。
※マルチモーダルスキルとは:
音声の操作系UIに加えて、静止画や動画、表示する端末にフォーマットされたテキストを表示するスキルのこと。
スキル同士を連携させる「Skill Connections」
スキル同士をつなぐ「Skill Connections」第1弾は、プリントスキル。
現状、アレクサのスキルはそれぞれが単体で動作をするため。例えば、料理レシピを読み上げるスキルを利用中に、アレクサ標準のタイマースキルを使うことはできない、といった具合だ。
上記の例の場合、スキルの開発者がスキル内にタイマーの機能を実装すれば「レシピの料理をしながら、時間も測る」といったユースケースも実行できるが、当然その分開発者に負担がかかる。
そこで、アマゾンはスキルからほかのスキルを呼び出せる「Skill Connections」の取り組みを始めた。
世界の名所を当てる「場所当てクイズ」スキルから、正解の名所の写真を印刷している様子。
現状、すべてのスキルにアクセスできるわけではないが、第1弾として「プリント(印刷)スキル」を同社は公表している。
プリントスキルはエプソンおよびキャノンのプリンターで写真や書類などを印刷するためのスキル。例えばゲームのヒントを印刷したり、実用的なところではスキルを通じた買い物のレシートを印刷する、といった用途が考えられるという。
現在、各メーカーの対象機種は公表されていないが、会場のアマゾン担当者によると「エプソン製の場合、クラウドサービス『Epson Connect』に対応した2011年以降のモデルに対応する」という。プリントスキルは今月中に公開されるとしている。
多様なデバイスに対応する「Alexa Presentation Language」
新製品のFire TV Stick 4Kをテレビに挿すと大画面でアレクサを利用できる。
アレクサ搭載デバイスの種類は段々と増えてきている。アマゾン製のものに限っても、10月10日に出荷された音声操作のみ対応の新型Echo DotやPlus、12月12日には10.1インチディスプレーを搭載したEcho Show、そしてアレクサ機能を内蔵した「Fire TV Stick 4K」も登場する。
画面の有り無しだけではなく、画面サイズも多種多彩なものになりつつあり、現状では開発者はそれぞれのデバイスごとにコーディングやコンテンツの準備をする必要があった。
ピッツァ サルヴァトーレのスキルもAPLを利用し、複数の端末での表示に対応している。
そんな環境を改善するため、アマゾンは「Alexa Presentation Language」(以下、APL)を9月に発表。APLは画面表示と音声、コードを一括して実装できる開発環境で、柳田氏は「モーダルスキルの開発が大幅に簡単になる」と語る。
すでに日本では宅配サービスを展開する出前館と旅行代理店であるJTBなどが開発を表明。10月中にはパブクリックベータの公開も予定している。
ついにスキルで収益化を狙える「Amazon Pay」対応
アマゾンでの買い物以外でも、サードパーティー製スキルでAmazon Payを使って買い物ができる。
開発環境が改善されていくとはいえ、企業として自社の開発リソースをアレクサに割くのであれば、そのスキルが会社にもたらす効果は考えなくてはならない。
現在はPR目的やスマートホーム関連機器のスキルをリリースしハードウェアを売っていくというビジネスモデルが存在するが、アマゾンはより直接的な決済モデルを用意している。
それがECサイト向けから始まり、9月には実店舗向けの展開も始まった「Amazon Pay」だ。
アレクサは当初よりアマゾンでのショッピング機能を持っていたが、同様の体験がサードパーティー製スキルでも可能になる。
アレクサスキルのAmazon Pay利用でも所定の手数料が発生する。
例えば、出前館スキルであれば音声で(画面付きデバイスであればビジュアル要素も一緒に)食べたい物を選択し、注文、決済まで完了できる。そのほか、赤十字社のスキルでは寄付金の受付にも利用されている。
ECサイト向けAmazon Payと同じく、アマゾンに登録されているクレジットカードと住所を利用できるため、ユーザー側は特にスキルごとに決済方法などを設定する必要はない。
ちなみに、Amazon Payの手数料は公開されている既存のものが基本的には適用されるという(1決済あたり4~4.5%)。
開発者の支持を集めるのはどのプラットフォーマーか
日本におけるスマートスピーカーの主なプレイヤーはアマゾンとグーグル、そしてLINEの3社だ。
グーグルも10月10日に自社製の画面付きスマートスピーカーを発表しているが、日本での展開は現状予定されていない。
LINEは人気キャラクターのミニオンとコラボした形状の「Clova Friends/Friends Mini」を提供し、7月には開発者向けサイト「Clova Developer Center」をベータ公開した。
こうした開発者向けの状況を省みると、アマゾンの取り組みは他社と比べて先行しているように見える。もちろん、グーグル、LINEともに決済への取り組みは行っており、遅かれ早かれ同様のサービスを展開する可能性はあるが、いち早く快適な開発&ビジネス環境を提供しようというアマゾンの姿勢は、開発者の支持を多く集めることになるだろう。
(文、撮影・小林優多郎)
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