メルカリ社長・ストライプCEOも出資。クラウドファンディング「READYFOR」が資金調達に踏み切る理由

日本で初めてクラウドファンディング事業を立ち上げた「READYFOR」が創業以来初となる資金調達を行う。その額約5.3億円。

グロービス・キャピタル・パートナーズや孫泰蔵氏が率いるMistletoeなどのベンチャーキャピタル(VC)はじめ、メルカリの小泉文明社長、ストライプインターナショナルの石川康晴社長らが個人で出資する。

ビジョンを共有できる投資家だからこそ

READYFOR

READYFORの米良はるかCEO(左)と樋浦直樹COO(右)。

撮影:今村拓馬

「日本にクラウドファンディングを広めたという意味では一定の成果を出せたのかもしれません。でもまだまだ必要な人や場所にお金を流せていないと思っています。そういったところにお金を流すためにも、会社の成長スピードを上げるためのリソースと、それについていける組織をつくるための経営力が必要だと思ったんです」

READYFORの創業者兼CEOの米良はるかさん(30)は、今回の調達の目的をそう語った。小泉氏や石川氏らは今後はアドバイザーとして経営にも加わるという。

同社は2014年の創業以来、4期連続の黒字を達成。国内初のクラウドファンディングサービスである「Readyfor」はこれまで9000件以上のプロジェクトを掲載し、50万人から70億円以上の資金を集めている。

同社のミッションは「誰もがやりたいことを実現できる世の中をつくる」こと。サイトには貧困、震災、地方創生、途上国支援などさまざまな社会課題を解決するためのプロジェクトが並ぶ。

READYFOR

READYFORのサイトには、現在資金集めが進行している事業が並ぶ。

出典:Ready forホームページ

これまでも投資を受けることについて考えてこなかったわけではない。ただ、

「ビジョンが強い会社ですし、そこに惹かれて集まってくれたメンバーがほとんどです。投資家を入れるとどうしても売り上げやIPO(新規上場株式)を優先しなければならなくなる気がして、それは私たちらしくないなと躊躇していたんです」(米良さん)

今回、調達に踏み切れたのは、短期的な売り上げ目標よりも米良さんの思想に共感し応援してくれるVCや個人投資家からだったからだ。メルカリの小泉社長やストライプインターナショナルの石川社長らは、米良さんがサービスを開始したときから時折相談に乗ってもらっていた間柄という。

社会課題の解決を目指すソーシャルビジネスは創業の早い時期に投資を受けると、投資家からのプレッシャーで起業家のビジョンが揺らぎかねない。READYFORのようにビジネスモデルが確立してからの調達は、今後の良いモデルになるだろうとMistletoeの担当者にも背中を押された。

闘病で改めて気づいた「資本主義で補えないこと」

米良はるか

留学中に出会った女性起業家に刺激を受けたという米良さん。女性起業家が少ないことも日本の社会課題の一つだ考えている。

撮影:今村拓馬

クラウドファンディングは多い時で国内に200社もあったという。企業がテストマーケティングとして使うことも多い。しかし、READYFORが調達した資金で目指すのは、「資本主義が補いきれていない、長期で投資をしないといけない分野や実績がなく融資ができない創業分野など、必要な人や場所にお金を届けることをさらに徹底するため」(米良さん)。

クラウドファンディングを社会の「インフラ」として定着させることで、「金融」の一つの形にしたいとも話す。

今後は特に「医療・研究」「地方」「企業」「テクノロジー」の分野を意識しているという。

米良さんが調達を具体的に考えるようになったのは、2017年にがんを発症し、約半年間仕事を休んで治療に専念していた時期だった。

参考記事:20代、私は生き急いでなかったか?—— READYFOR米良はるかさんががん闘病で気づいた立ち止まることの大切さ

「私の病気はある抗がん剤が登場したことで、5年生存率が20%から90%ほどになりました。だから私はそれほど不安にならずに治療ができた。一方でこんなに医療は発達しているのに、研究費の不足が原因で希少性の高いものは後回しにされて開発が遅れています。そういう市場原理に乗らない、でも世界にそれを必要としている人が必ずいる分野にこそ私たちのサービスを届けたいと改めて思いました」(米良さん)

医療や科学研究分野など、既存の金融サービスでは資金が回りにくい分野に注力する方針で、現在研究費を集めることを目的に筑波大学や東京藝術大学など6の大学と結んでいる提携ももっと増やしていきたいという。

もう一つの注力分野は「地方」。すでに65もの地方銀行や信用金庫と提携しているが、そこでも「需要が読めない」などの理由で既存の仕組みでは融資できないケースが多いと痛感する。

しかし、地銀や信金には融資してほしい、つまりお金を必要とする人たちの情報は集まってくる。融資という仕組みには馴染まないケースにクラウドファンディングを定着させることも目指している。

企業にもクラウドファンディングを定着させたい

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撮影:今村拓馬

READYFORではこれまで目標金額を達成したプロジェクト実行者の2回目以降のプロジェクトの半分の資金を企業がCSRとして提供する「マッチングギフト」を展開してきた。

「SDGsなどを背景に、『社会的な取り組みをしたい』『KPIやGDPではない目標が必要』だと感じている企業が増えています。このニーズを汲み取り、企業とNPOや個人をマッチングし、より多くのお金を企業から個人へ流れる仕組みも考えています」(米良さん)

そこに欠かせないのがテクノロジーだ。今回の調達に伴い、米良さんとともにサービスをつくってきた、人工知能が専門の東京大学の松尾豊特任准教授もアドバイザーとして参加することになっている。

東京証券取引所

米良さんは闘病の間、資本主義の限界について考えた、という。

shutterstock/Golden House Studio

これまでクラウドファンディングに参加した支援者は50万人。こうした支援者の基盤を使って、プロジェクトオーナーのファンを増やしたり、支援者とオーナーの関係性を深め継続的なファンディングにつながるような「ファン・リレーション・マネジメント」ツールも開発する。

クラウドファンディングの達成率は通常は30%ほどと言われるのに対し、Readyforは75%。テクノロジーの力でこの精度をさらに上げることを目指す。

「仮想通貨やICOなども近い領域だと思っています。テクノロジーを活用した資金調達手段は今後もすごく増えていくでしょう」(米良さん)

スタッフにとっても良い会社に

READYFOR

熱い米良さんとクールな樋浦さんは「正反対の性格」だという。足りない部分を補い合う関係だ。

撮影:今村拓馬

米良さんは2017年、がんという大病にかかったことで、休養せざるを得なくなった。だが、その“期間”があったからこそ、長期的な視点で会社の未来を考える、ある種の“余力”ができたとも言う。

一方、米良さん不在の間、会社を支えてきたCOOの樋浦直樹さん(30)にもある変化があった。

「僕は米良のビジョンに惹かれて入社しました。だから1人で共同代表をやるのはかなりプレッシャーでした。(米良が不在の間)自分が引き継ぐと考えた時、どういう会社にしたいのか深く考えました。僕の答えは、ビジネスとしての成長はもちろん、メンバーにとって良い組織にしたいということでした」(樋浦さん)

樋浦さんは社員同士が信頼し合って仕事ができるための「コミュニケーション研修」や、個人の希望に合わせて就業時間を選べる制度を導入した。

お金は価値の尺度

READYFOR

米良さん(前列中央)と今回出資をしてくれた投資家たち。後列右2人目から東大・松尾さん、ストライプインターナショナル・石川さん、メルカリ・小泉さん。

提供:READYFOR

これまでベンチャー起業家ではなく、社会起業家と呼ばれることが多かった米良さんは、そのことにずっと戸惑ってもきた。

しかし、社会起業家の定義が「社会の構造を変革するために起業している人」ならば、自身は間違いなくそうだと、休養を経て思い直すようになった。

ベンチャー企業で資金調達額や大企業からの転職者が増えている一方で、ソーシャルビジネスといわれる分野では、まだまだお金と人の流れをつくりきれていないと感じている。

「お金は価値の尺度です。例えばクラウドファンディングで2000万円集まったのを見て、『大きな社会問題なんだ』と認識してくれる人は多いはず。社会起業家やソーシャルビジネスは本来、一般的なベンチャーよりもっと社会にどんなインパクトを与えられるか、という思考のはず。そのためにももっとお金を集めて、必要なところに流し、それを可視化さないといけないと思います」(米良さん)

ソーシャルビジネスは儲からない、苦労する。そんなイメージを変えながら、社会に埋もれた問題に光を当て続けていきたい。そう話した。

(文・竹下郁子)

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