シンガポール航空のエアバスA350-900ULR。
Airbus
- シンガポール航空は10月11日(現地時間)、世界最長フライトを再就航させた。ニューアーク・リバティー国際空港とシンガポールのチャンギ国際空港を結ぶ。
- 同社は、最大19時間、約1万6000キロメートルにおよぶ路線を2013年まで運航していた。
- 同路線には新しいエアバスA350-900ULRが就航。
- 客室はビジネスクラスとプレミアムエコノミーのみ。
- Business Insiderは、ニューアーク - シンガポール間の就航便、SQ21便に搭乗した。
シンガポール航空は10月11日(現地時間)、ニューヨーク近郊のニューアーク・リバティー国際空港と同社の本拠地シンガポールのチャンギ国際空港を結ぶ直行便を再就航させた。約1万マイル、最大19時間におよぶ世界最長のフライトだ。
11日夜遅く、新しいエアバスA350-900ULRを使ったシンガポール航空SQ22便はチャンギ国際空港を離陸、約18時間後の12日午前5時30分(東部標準時間)、ニューアークに着陸した。そして午前中のうちに、折り返し便のSQ21便となってシンガポールにノンストップで戻った。
同社のシンガポール - ニューヨーク間のノンストップ・フライトは2013年以来のこと。当時は、エアバスA340-500を使って運航していた。
エアバスA340-500は長距離路線向けの大型機として優れた航続距離と乗客数を誇る一方、1990年代の遺物とも言える機体で、豪華な4発エンジンは経済性に劣るものだった。全席ビジネスクラスに変更したものの、路線を存続させるだけの収益を生むことはできず、2013年にシンガポール航空は同路線の運航を停止した。
それから5年、事態は大きく変わった。シンガポール航空は新しいエアバスA350-900ULRを手に入れた(ULRはウルトラ・ロング・レンジの頭文字)。
エアバスによると、カーボン複合材を使用したA350-900ULRの2基のロールス・ロイス製ターボファンエンジン「トレントXWB(Trent XWB)」は、最新の主翼とあいまって、前世代機と比較すると燃費を25%削減できる。
さらにエアバスはベースであるA350-900の燃料タンクを改良、6300ガロン(約2万4000リットル)の燃料の追加搭載を可能にし、A350-900ULRの最大1万1000マイル(約1万7700キロメートル)以上という航続距離を実現した。
Business Insiderはニューアークからシンガポールへのビジネスクラスのチケットを購入した。以下が18時間におよぶフライトのすべてだ。
シンガポール航空SQ21便シンガポール行きはニューアーク・リバティー国際空港ターミナルBから出発。就航イベントがあったため、我々は出発時刻の朝10時45分よりも4時間以上前に空港へ。
Benjamin Zhang/Business Insider
マスコミへの説明、写真撮影、記者会見の後、いよいよ搭乗。
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搭乗を待つ間に、新しいエアバスA350-900ULRが見えた。
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シンガポール航空はA350-900ULRを7機発注、現時点では世界にこの7機だけ。同社は9月に最初の1機を受け取り、年内に全7機を受領する予定。面白いことに、就航フライトは2機目の機体だった。
シンガポール航空の1機目のエアバスA350-900ULR。
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10時頃、搭乗。
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搭乗口ではシンガポール航空のクルーが出迎えてくれた。
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客室を通って自分のシートへ。座席は2クラス161席、うち67席がビジネス。
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94席がプレミアムエコノミー。シンガポール航空のスタンダードなA350-900よりも約90席少ない。帰路はプレミアムエコノミーだった(詳細は後ほど)。
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ここが今から18~19時間過ごすシート! シンガポール航空のビジネスクラスのシートはとても良い。幅28インチ(約71センチ)、リクライニングは最大132度。
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柔らかな革張りのシートはクッション付き。
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シートは長さ78インチ(約198センチメートル)のベッドになる。シートは革だがベッドリネンは布なので、睡眠中の温度調整は簡単。
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なおベッドは筆者がセットした。実際はもっときれいなはず。
横のスペースには、アイ・マスク、靴下、スリッパ。
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大きな格納式テーブルもある。
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18インチの機内エンターテインメント・システムの画面(詳しくは後ほど)。
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荷物入れ。
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鏡。
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脚を乗せるオットマン。
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オットマン無しでも、足元のスペースは十分。
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準備OK!
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フライト前の飲み物はヘルシーにパイナップル・ジュースで。
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滑走路に向かうとき、エミレーツ航空のボーイング777-300ERが見えた。
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消防車も特別な日を放水で祝う。
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放水が直撃。すぐに滑走路に入り、パイロットがロールス・ロイス製トレント・ターボファンエンジンを始動させた。
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離陸! 新しいターボファンエンジンの静かさには、いつも驚かされる。離陸のときでも静か。
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離陸後すぐに、クルーがミックス・ナッツを持ってきた。
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一緒にウォッカトニックを頼んだ。アブソルート(Absolut)のウォッカだった。
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ほとんどの航空会社ではアメニティーは事前にセットされているが、シンガポール航空では自分で選ぶことができる。筆者は手の除菌ジェル、リップバーム、イヤホン、服のしわ取りスプレーと服の消臭スプレーを選んだ。
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18インチのスクリーンに戻ろう。シンガポール航空の機内エンターテインメント・システム「クリスワールド(KrisWorld)」。
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格納式コントローラーで操作。昔ながらのボタンと中央にはタッチスクリーン。
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システムは直感的でレスポンスも早い。本当に使いやすい。
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クリスワールドは1000時間分以上の映画、テレビ番組、音楽、ポッドキャスト、ゲームを提供。この路線ではさらに200時間分のコンテンツが追加されていた。
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ジェームズ・ガーナーとイブ・モンタンの映画「グラン・プリ」をチョイス。ジョン・フランケンハイマー監督の最高傑作で映画史に残る名作。シートにはアクティブ・ノイズ・キャンセリング・ヘッドホンもあった。
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離陸から約2時間で最初の機内食タイム。前菜はキヌアサラダに乗せたクルマエビのソテー、セミドライトマトと豆苗添え。風味豊かでクリスピー、さっぱりしていた。
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メインはフライドポークの甘酢がけ、野菜のソテー、卵チャーハン。大正解だった。ポークは今までに食べた中でも最高レベルだった。チャーハンもおいしかったが、筆者の好みには少し柔らかかった。一緒に乗った同僚が食べた牛ヒレ肉のマッシュルーム・クリームソースとおひょうのチーズ&ハーブクラスト焼きもおいしそうだった。
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メインの後はチーズ、フルーツ、チョコチップをトッピングしたチェリーアイス。
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昼食後は2、3時間休み、「グラン・プリ」を最後まで見た。少し仕事をしようと思ったが、Wi-Fiが使えなかった。おそらく主な原因は、大勢のジャーナリストやビデオブロガーが乗っていて回線が混雑したからだろう。筆者が気付いたトラブルはWi-Fiくらいで、その他はスムーズだった。
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世界最長フライトというチャレンジについて、機長および機内食と飲み物の責任者でシェフのアントニー・マクニール(Antony McNeil)氏と話ができた。
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上空4万フィート(約1万2000メートル)で質の高い食事を提供する難しさについて話をした。シェフは正しい盛り付け方を見せてくれた。
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ニューアーク - シンガポール間のルートには3つのバリエーションがある。1つは太平洋北部を飛ぶもの、もう1つは大西洋を飛ぶもの、そして3つめが我々が飛んでいるルートで、北上してカナダを越え、北極を通過、その後、南に進路を変えてロシアと中国を超えるルート。
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北極を通過。サンタクロースはいない。
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到着予定時刻は午後5時30分。シンガポールはニューヨークより12時間進んでいるので、前日は眠らずに体内時計の調整をしておいた。離陸から6時間、眠る準備が完了。
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ベッドに入り、映画「デッドプール2」を観ながら寝てしまった。スーパーヒーローのコメディ映画も疲れには勝てない。
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9時間くらいで目が覚めた。まだ元気。
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日が昇っていた。
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起きるとすぐに2度目の機内食タイム。カナッペからスタート。スモークされたタラ、キュウリのサラダとケージャンチキン、ローストしたカボチャとマッシュルーム、すべておいしかった。
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前菜はフェンネル、サーモンのオレンジ漬け。サーモンは少し味が薄かった。
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メインはロブスターのマカロニ&チーズを選んだ。大失敗。ロブスターは風味豊かだが硬かった。マカロニ&チーズは茹でただけのパスタのようだった。牛のショートリブかラムのソテー、あるいはタイのレッドカレーにすべきだった。
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だがデザート、チーズ、フルーツのカートがメイン料理のマイナスを埋めた。
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ブドウ、トリュフ・チョコレート、ひと口サイズのお菓子をいくつか選んだ。抹茶のお菓子がおいしかった。
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食事の後は、マーベル映画マラソンの続き。だが、また観ながら寝てしまった。1時間か2時間ごとに起きて、客室を歩き回った。血行を保つためだ。
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搭乗から15時間、軽食を頼んだ。フライトの3時間目~16時間目にオーダーできる。麺類からサンドイッチ、ギリシャヨーグルトまである。 豚の角煮と中国野菜のラーメンにした。正直これが今回のベスト。スープは濃厚でおいしく、麺の歯ごたえも良かった。よく煮こまれた豚バラ肉も赤身と脂身のバランスがちょうど良かった。
Benjamin Zhang/Business Insider
シンガポールに近づくと、入港を待つ貨物船が見えてきた。
Benjamin Zhang/Business Insider
チャンギ国際空港に着陸! 予定より約45分早い到着だった。フライト時間はぎりぎり18時間を切った。
Benjamin Zhang/Business Insider
飛行機から降り、A350-900ULRを最後にひと目。
Benjamin Zhang/Business Insider
チャンギ国際空港での通関と手荷物の受け取りはスムーズだった。
チャンギ空港
Benjamin Zhang/Business Insider
全体として世界最長フライトは快適だった。シンガポール航空のサービスは申し分なく、機内エンターテインメント・システムは使いやすく、機内食は素晴らしかった。そして座席もただ素晴らしかった。
だが、快適だったのはビジネスクラスだったことも大きい。数日後には、SQ22便のプレミアムエコノミーでニューアークに戻る。その様子は後日。
(翻訳:Ito Yasuko、編集:増田隆幸)