「大企業で安定」と「起業へ挑戦」どっちも可のインキュベーション施設、京都に登場

大企業に埋もれている「とがった人材」たちが同じ屋根の下で暮らし、互いに刺激を受けながら革新的なベンチャーの立ち上げを目指す——。そんな新しいインキュベーション施設が京都市に誕生する。仕掛け人は、日米で起業し2つの新薬を世に送り出した連続起業家・久能祐子さんらだ。

施設のイメージ図

インキュベーション施設のイメージ図。

提供:フェニクシー

連続起業家の久能さん、マネックス・松本社長ら創業メンバー

施設を運営するフェニクシー(本社・京都市、橋寺由紀子社長)が2018年10月18日に発表した。この企業の創業メンバーには久能さんのほか、マネックスグループ社長の松本大さん、元メリルリンチ日本証券社長で経済同友会副代表幹事の小林いずみさんらが個人として名を連ねる。

日本ではイノベーションを生み出しにくくなっている大企業が優秀な人材を囲い込む傾向が強く、アメリカなどに比べて起業を目指す人が少ない現状への危機感を共有しているという。

久能祐子さん

創業メンバーの一人である連続起業家の久能祐子さん

撮影:庄司将晃

京都に施設を置くのは、京都大学をはじめ研究水準が高い大学が集まっているうえ、「海外からも国内からも人が来たがる、魅力ある街だから」(橋寺社長)という。

参加企業はそれぞれ社内で新しいビジネスの提案を公募。フェニクシーが提案の内容や起業への熱意を審査し、各社から1人ずつ施設に受け入れる。起業希望者は施設内で寝泊まりしながら、起業に成功した経営者といったメンターから助言を受け、4カ月でビジネスプランを具体化させる。

国内外の投資家や参加企業の新規事業担当者らを集めた場で自身のプランをプレゼンし、高い評価を受ければさらに半年から1年ほどかけて内容を煮詰め、資金調達のめどがつけばめでたく起業、という流れだ。

「独立して起業」だけが選択肢ではない

各社から集まる起業家予備軍は出身企業に籍を残したまま参加し、最終的に「独立して起業」だけではなく、「社内ベンチャー立ち上げ」といった選択肢もあり得るのが、このプログラムのミソだ

社内ベンチャーの制度自体がある企業は少なくない。しかしこの施設では、生活空間を共有する同じ境遇のライバルたちが互いに刺激を与え合うことで、革新的なアイデアが生まれやすくなる効果が期待されている。

久能さんは最近のBusiness Insider Japanのインタビューで、アメリカはスタートアップへの資金の出し手の層が厚く、「新しいもの」に寛容な気質もあるのが強みである一方、日本については「組織があるからこそいい仕事ができる、という人も多い。その強みを再評価し、潜在力を解放することが必要です」と指摘している。

「大企業での安定」と「起業への挑戦」が両立できるこのインキュベーション施設。「大企業信仰」がなお根強い日本で、破壊的イノベーションを生む起業家を増やす一つの解になるのだろうか。

(文・庄司将晃)

ソーシャルメディアでも最新のビジネス情報をいち早く配信中

あわせて読みたい

Live life moment