メルカリ、創業2年の「クルマ好き特化SNS」を完全子会社化。狙いは“熱狂的コミュニティ”

CARTUNE メルカリ

クルマ好きのためのコミュニティサービス「CARTUNE(カーチューン)」のPC版画面。この日産フェアレディZに関する投稿には1500近い「いいね!」が。

出典:CARTUNE

フリマアプリのメルカリが10月18日、クルマ好きのためのコミュニティアプリ「CARTUNE(カーチューン)」を運営するマイケルを、簡易株式交換により完全子会社化すると発表した。同日契約を締結し、11月8日に株式交換が行われる予定。

株式交換に際して第三者機関が算定したマイケルの株式価値は、適時開示情報から15億円程度とみられる。メルカリは以前からマイケルの発行済み株式の11.22%を保有しており、今回、他の株主が保有する残り88.78%(13億円超に相当)を、メルカリの普通株式と交換する形で取得する。

メルカリは自社のマーケットプレイスで、2013年7月に自動車パーツ、2016年5月には車体の出品を始め、自動車関連カテゴリーの流通量拡大を進めてきた。

メルカリ 山田進太郎

マイケルの完全子会社化を決めたメルカリの山田進太郎会長兼CEO。マイケルの福山CEOとは以前から親交があり、協業の可能性も含めて情報交換をしていたという。

撮影:今村拓馬

一方、マイケルはCARTUNEの運営を通じて、自動車好きでカスタムに強い関心を持つユーザーのコミュニティを拡大。2017年5月の運営開始からわずか1年超で、アプリのダウンロード数は65万件を突破し、月間アクティブユーザーは約30万人に達している。

メルカリは、マーケットプレイスの自動車関連カテゴリーと、CARTUNEのユーザーやコミュニティ、その運営ノウハウを組み合わせることで、カテゴリーの活性化や流通量の拡大を図ることができると判断したようだ。より具体的には「比較的単価の高い自動車関連商品を円滑に取引できる環境を整えていきたい」(メルカリ広報)という。

マーケットプレイスとコミュニティの相乗効果

CARTUNE メルカリ

CARTUNEの口コミ・評判・レビューを投稿する画面。この「GT box 06&S マフラー」には63件もの口コミが。ニュースサイトにありがちな煽りは見当たらず、どれも真剣そのものだ。

出典:CARTUNE

マイケルが運営するCARTUNEは、この1年でアプリのアクティブユーザーが爆発的に増加。全国各地で自発的なオフ会が開催されるなどコミュニティの熱量が高まり、ユーザー間でパーツ売買が行われる機会も増えてきていた。マイケルCEOの福山誠氏はこう話す。

「アンケートによると、CARTUNEのアクティブユーザーの約8割が不要なパーツを保有している。フリマサイトなどで売った経験のない人も多い。車のカスタムはお金がかかるので、いらないものが出てきたら売って次なるカスタムの資金源にする、そんなサイクルを組み込んでマネタイズできたらと前々から考えていました。広告に依存しない永久機関的な事業運営が可能になるし、何よりコミュニティの求心力が格段に高まります」

パーツ売買はこれまでヤフオクを介して行われることが多かったというが、これからメルカリとの協業によって、CARTUNEのユーザー同士がより便利、有利に売買できる仕組みを導入できれば、福山氏の目指す理想的なコミュニティの実現に近づくだろう。

メルカリにとっても、自動車関連カテゴリーの流通量が増えるだけでなく、「男性が99%を占める」(福山氏)CARTUNEユーザーの流入により、これまでファッションを中心とする女性ユーザーが多くを占めたマーケットプレイスの多様性や可能性を広げることにもつながる。

「マーケットプレイスには『出品して売れたら終わりでいいの?』という物足りなさを感じるんです。リテンション(=ユーザーとの関係を維持して継続的に利益を出すこと)の場が少ない。CARTUNEのようなコミュニティで普段からアクティビティを続ける中で、必要なタイミングでマーケットプレイスを通じて売買する仕組みであれば、双方の接点が増え、継続性も高まると思うんです」(福山氏)

急成長を支えた経営共創基盤の全面支援

CARTUNE 経営共創基盤

マイケルの福山誠CEO(左)と経営共創基盤(IGPI)の塩野誠パートナー。塩野氏はマイケルの社外取締役も務め、福山氏を「コミュニティづくりの世界におけるイチロー選手」と表現する。

出典:Michael

今回の株式交換で約13億円相当のメルカリ株を手にする、マイケルの株主の顔ぶれが面白い。

筆頭株主はCEOの福山氏で42.67%、同社の社員3人が合わせて8.79%。メルカリが以前から保有していた11.22%を除く、残り37.32%を保有しているのは、ハンズオン(常駐協業)型コンサルティング会社の経営共創基盤(IGPI)だ。同社パートナーでマイケルの社外取締役も務める塩野誠氏は、創業者の福山氏という人物に期待して出資してきたという。

「福山さんのつくるコミュニティにはウソがない。圧倒的な熱量を持つコミュニティを淡々と生み出す。仕事柄たくさんの経営者を見てきましたが、ここ5、6年で言うと図抜けた存在だと感じています。こういう才能には、とにかくプロダクトに集中してほしいと思ったから、給与計算から法務関連まで、バックオフィス関連はまるごとIGPIで引き受けました」

数々の企業再生やベンチャー投資を成功させてきたIGPIをそこまで惚れ込ませた福山氏。新卒でグーグルに入社し、2年で退職してシンクランチを創業。マッチングサービス「ソーシャルランチ」を立ち上げ、1年半弱で売却。売却先のDonutsでは、ダウンロード数600万回を超える動画コミュニティサービス「MixChannel」を成功させながら、退職して再び創業の道を選んだ。

MixChannel Donuts

マイケルの福山CEOがDonutsで新規事業として立ち上げた動画コミュニティサービス「MixChannel」。「いいね!」1万超の投稿はザラで、中には5万超えも。

出典:MixChannelサイトを編集部でキャプチャ

福山氏のコミュニティへのこだわりは、そうした華々しい経験から生まれたものなのか。

「早稲田大学でラグビー部に入っていたんですが、あの五郎丸(歩、元日本代表)が入ってきたら全然ついていけなくて。そんな挫折した不甲斐ない自分でも、コミュニティサービスを立ち上げて売却するという成功を得ることができた。コミュニティへの思い入れは、確かに過去の経緯が大きいかな(笑)」

そう冗談めかして言いながら、福山氏は続けた。

「でも本当は、自分がつくったコミュニティを通じて結婚したり、就職したり、幸せをつかんだ人たちの存在を後から知って、深く腑に落ちたんです。インターネットの価値って、そういうつながりを創出できることだよな、と。だから、メルカリグループに入ってからも新しい何かを生み出すより、まずはこの熱量のあるコミュニティをより理想的な状態にしていくことが、最大の貢献になると信じています」

(取材・文:川村力)

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