ビル・ゲイツ。
REUTERS/Brendan McDermid
- 再生可能エネルギーは気候変動の悪影響を取り除くには十分ではないとビル・ゲイツは最近、ブログに記した。
- 洪水、干ばつ、異常高温や異常低温といった気候関連の災害を防ぐために、世界は5つの「重要課題」に注力すべきと同氏は述べた。
- 発電は分野別に見た時には温室効果ガスの最大の排出源だが、農業、製造業、交通・輸送、建物といった分野も地球を脅かす要因となっている。
ビル・ゲイツは、ハリケーン、干ばつ、洪水、異常高温や異常低温といった気候関連の災害を恐れている人々にメッセージを送った。
「どんな解決策も単独ではうまくいかない」
10月17日(現地時間)、自身のブログでゲイツは、太陽光発電や風力発電などの再生可能エネルギーは地球を救うカギになるという考え方に反論した。
「地球温暖化を防ぐには、製造業、農業、人の移動や物の輸送におけるブレークスルーが不可欠。単なる家や車の電力の話ではない」
これらは極めて大きな課題。
だが、気候変動に関する政府間パネル(IPCC:Intergovernmental Panel on Climate Change )の最近のレポートによると、今後わずか20年で気候変動の影響は壊滅的なレベルとなる。
問題を乗り越えるために、世界は5つの「重要課題」に集中して取り組み、地球温暖化につながる温室効果ガスの排出を減らさなければならないとゲイツは記した。
ゲイツがあげた5つの分野はまた、合衆国環境保護庁が世界の温室効果ガスの主要排出源と特定している。
発電
Flickr/derekskey
発電は、単一の分野としては世界の温室効果ガスの最大の排出源、全排出量の約25%を占める。だが、75%は他の排出源が生み出している。
世界の二酸化炭素排出量は1970年から約90%増加、その解決を再生可能エネルギーだけに頼るわけにはいかない。
農業
REUTERS/Sonali Paul
農業は世界の温室効果ガスの24%を排出している。
農業で最大の問題は畜産。中国とアメリカを除いたどの国よりも多くの二酸化炭素を排出している。
しかし、農業の他の要因も同様に危険なものとなりうる。例えば、窒素肥料は二酸化炭素よりも300倍強力な温室効果ガスである一酸化窒素(亜酸化窒素)を放出する。
2018年10月、ゲイツをはじめとするビリオネアたちは、この問題を軽減し得る遺伝子操作されたバクテリアの研究に巨額の資金を投資した。
製造業
REUTERS/Jim Urquhart
製造業から排出される温室効果ガスは、発電や農業よりもわずかに少なく、全排出量の約21%を占めている。
鉄やセメントなどを作るために化石燃料を使うと、有害なレベルの二酸化炭素を大気中に排出する。近年、科学者はプラスチックも海中で分解される時に温室効果ガスを排出することを発見した。
「身のまわりのプラスチック、鉄、セメントを見てほしい」とゲイツ。
「これらすべてが気候変動を生み出している」
交通・輸送
Airbus
4つ目の課題である交通・輸送は世界の全排出量の14%の温室効果ガスを生み出している。
低公害車が多くの関心を集めている一方で、飛行機、トラック、貨物船といった他の交通・輸送手段での化石燃料の利用はより大きなダメージを与えている。
輸送業のみでドイツやイギリスと同程度の温室効果ガスが排出しており、2050年には全排出量の17%を占めると予測されている。
建物
Sean Gallup/Getty Images
建物から排出される温室効果ガスは全排出量の6%に過ぎないが、より多くの人が都市に移り住み、建物への需要が高まると、この数値は急増すると見られている。
建物内部では、暖房や照明などの設備がかなりの電力を消費し、また冷蔵庫やエアコンなどの電化製品が強力な温室効果ガス、いわゆる代替フロンを放出する。
これらの課題に取り組むために、ゲイツはよりエネルギー効率を高めた窓や断熱システムの導入を推奨している。
1つ1つは小さな問題だが、まとまると環境への大きな脅威となる。
(翻訳:仲田文子、編集:増田隆幸)