「社会は電話と忖度で回っている」ビジネスに礼儀は生存戦略か。NewsXで激論

昭和的な価値観で「相手のために時間を使うことが良しとされた」のが礼儀1.0。それに対し、「相手の時間を使わせない」のが礼儀2.0 —— 。

実際、ビジネスに「礼儀2.0」を持ち込むのはアリかナシか?毎週金曜日22時からdTVチャンネルで放映しているNewsX。Business Insider Japanが気になるテーマを深掘りするBIフォーカスのコーナーで、この礼儀2.0問題を取り上げた。

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博報堂を経て、 新しい形の広告会社「The Breakthrough Company GO」を立ち上げた三浦崇宏さんと、メガバンクとデロイトを経て人材系ベンチャー・ワンキャリアに転職した経歴を持つ寺口浩大さんをゲストに迎え、大企業・ベンチャーの垣根を超えて「礼儀2.0」について激論が交わされた

礼儀1.0は生存戦略?

メールマナーアンケート

番組で紹介された、「ムダだと思うビジネスマナー:メール編」。

出典:Business Insider Japan

礼儀2.0問題を記事で提起したBusiness Insider Japan記者、西山里緒の発言から議論は始まった。

「礼儀2.0の記事を書いた時に、特に反響があったのは、医療系や金融系などカタい職種の人たち。今まで非効率だと思っても言えなかったことに、『礼儀2.0』という言葉を与えてあげることで、声をあげることができるようになったのでは

もともと大手企業に勤めていた三浦さんと寺口さんは、大企業の「あるある」礼儀ネタとして、

メールの宛先の順番までエラい人から並べなければならなかった」「(並べるときに)局長代理と特命局長、どちらがエラいのかわからない

などを披露した。

その一方で、三浦さんは「礼儀1.0は生存戦略として覚えておくべき」という。

「礼儀1.0を求める人は、権威があることを示してほしい。エラい、と言われたい人たちを気持ちよくしてあげることは、一つのスキルとしては全然アリ」

シリコンバレーや深センに増える「ご挨拶おじさん」

深セン

「中身のない話だけして帰っていく日本人のビジネスパーソンに辟易」という声も。

写真:Shutterstock / fuyu liu

一方で「相手の時間を奪う」(西山)ことに無自覚な“旧世代”の人たちは、深センやシリコンバレーに「視察」に行き、「ビジネスにつながる話をせずにただメモを取って帰ってくる」と評判が悪く、「ご挨拶おじさん」と揶揄されているという現実も。

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これに対し三浦さんは、こう語った。

「野球とサッカーはルールが違うように、国が変わればビジネスのプロトコルも変わってくる」「相手に合わせてビジネスを有利に進めていくことが重要」

電話はぶっちゃけ話に使えるツール

NewsX

電話のかけ方が分からない、という若い世代は多い。

撮影:西山里緒

話は「ビジネスで電話をかけるのはアリかナシか?」へ。

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筆者(西山)は、電話取材が苦手だ。その理由は、

「普段電話をしないので、どんなテンションで電話をすればいいかわからない」「電話をすると失礼なのではないかと気にしてしまう」

かつて電話を重要視する大企業に務め、現在はFacebookのメッセンジャーを駆使するベンチャーで働き、どちらの感覚も分かるという寺口さんは、

「自分は電話をかけるのは苦ではないけれど、かかってきたときは面倒に思うことも確かにある」「だから、電話する前にメッセンジャーで“いま電話していいですか?”と聞くようにしている」

一方、三浦さんはこんな見方を語った。

「シンプルに、文字より電話の方が情報量が多い。同じ“こんにちは(ちょっと反省モード)”なのか、“こんにちは(今日お電話できて嬉しいです)”なのか。テンションが分からない、とさっき言ったけど、テンションも情報のひとつ」「電話は、感情や情報を凝縮して伝えられるツールだと思えば、便利

実際、ぶっちゃけ話やキワどい話は全部電話でする、という意見も。

世の中は電話と忖度で回っている

NewsX

忖度のないビジネスは存在しない?

撮影:今村拓馬

さらに三浦さんは、

「いまは(ビジネスマナーの)過渡期なのだから、礼儀1.0と礼儀2.0両方使えるようになっておいた方がいいと思う。やっぱりキーになるのは、他者に対する想像力

これに対し、

「他者に対する過剰な想像力は忖度につながるのでは?」

と、なおも食い下がる筆者(西山)に対し、三浦さんからはビシッと一言。

忖度のないビジネスなんかねぇよ!」「世の中忖度と電話で回ってるんだよ!」

忖度という言葉がネガティブに受け止められがちだが、「朝電話をしたら失礼にあたるのでは」「休みを2週間取ったら先輩に迷惑がかかるのでは」と周囲に気遣うのは普通のこと。

「これは忖度だからやらない」というのは逆に思考が硬直化している、というのが三浦さんの伝えたいことなのだった。

奥が深いこの問題。今後も事例を集めつつ、次なる記事でさらに議論を深めたいと思う。

(文:西山里緒)

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