「すべての会社員は社内起業家として覚醒できる」「最初のアイデアはノリでいい」大企業で新規事業を創るには

大企業50社1200人の有志メンバーで結成されたONE JAPANの2周年カンファレンス。ミレニアル世代のビジネスパーソン約1000人が来場し、「大企業にいながら、どう新規事業を創造するか」をテーマにトークセッションが行われた。Business Insider Japan統括編集長の浜田敬子氏がモデレーターを務めたこのトークから、ハイライトをご紹介する。

左から、浜田敬子、斎藤祐馬さん、麻生要一さん、山本将裕さん。

9月30日に開かれたONE JAPAN創立2年を記念したカンファレンスで。左から浜田敬子、斎藤祐馬さん、麻生要一さん、山本将裕さん。

スピーカー・プロフィール

斎藤祐馬(さいとう・ゆうま):デロイトトーマツベンチャーサポート事業開発本部長。2010年より社内ベンチャーとしてベンチャー支援事業を立ち上げ、7カ国・150人体制へ拡大。世界中の大企業の新規事業創出支援、ベンチャー政策の立案まで手掛けている。起業家が大企業やベンチャーキャピタルなど100人の前でプレゼンを行う早朝イベント「Morning Pitch」発起人。主な著書に『一生を賭ける仕事の見つけ方』。日経ビジネスオンラインやダイヤモンドオンラインでの連載のほか、メディア掲載多数。 日経ビジネス「2017年 次代を創る100人」に選出。

麻生要一(あそう・よういち):アルファドライブ社長兼CEO。リクルート(現リクルートホールディングス)に入社後、ファウンダー兼社長としてIT事業子会社を立ち上げ、事業を拡大。その後、社内事業開発プログラム「Recruit Ventures」、スタートアップ企業支援プログラム「TECH LAB PAAK」を立ち上げ、約1500の社内プロジェクト及び約300社のベンチャー・スタートアップ企業のインキュベーションを支援。2018年2月に企業内インキュベーションプラットフォームを手がけるアルファドライブを創業。4月には医療レベルのゲノム・DNA解析の提供を行うゲノムクリニックを共同創業。6月より「UB VENTURES」ベンチャー・パートナーに。9月よりNewsPicks執行役員に就任。

山本将裕(やまもと・まさひろ):ONE JAPAN共同発起人。1987年東京生まれ。中央大学経済学部卒業。2010年NTT 東日本入社。石巻・仙台での法人営業を経て、現在ビジネス開発本部。2015年6月にNTTグループの若手有志の会「O-Den」を立ち上げ。ONE JAPAN結成時には共同発起人として参画。

300回ピボットすれば誰でも新規事業を生み出せる

浜田敬子さん(以下、浜田):今日のテーマは大企業の中で新規事業を生み出すには、ですが、ここに集まっている約1000人の皆さんに質問させてください。「いま、自分がやりたい仕事ができている」という人は、どれくらいいますか?

大企業における新規事業創造

新規事業に必要な要素は一つ。「仮説を300回否定して300回改善するという繰り返し」(麻生さん)

斎藤祐馬さん(以下、斎藤):約2割……というところでしょうかね。

浜田:会社を変えたい。でも具体的には何をやればいいのか見えていないという人が多いのかもしれません。

麻生さんはリクルートに入社2年目で、社内の新規事業コンテスト「New Ring」に提案され、そのまま新規事業畑を歩いてこられてますが、最初の一歩は何から踏み出せばいいんでしょうか。

麻生要一さん(以下、麻生):今日、僕が一番伝えたいことは、すべてのサラリーマンは、社内起業家として覚醒できるということ。この1点です。

新規事業に必要な要素はたった一つ。それは「仮説検証を繰り返して修正する」というプロセスなんです。具体的には、仮説を300回否定して300回改善するというピボットを回せば、必ず事業になります。

浜田:300回ですか。

麻生:そう。逆に言うと、最初のアイデアなんて、原型をとどめないと思っていい。「秋葉原でうどん屋を始めたら儲かるんじゃないか」みたいなノリでいいんですよ。どうせ、300回ピボットしているうちに、たぶんうどん屋じゃなくなっていくから。

大企業の人はやりがちなんだけれど、企画を10年温めたりするんですよね。でも、10年温めた企画を否定されたら立ち直れないでしょ。だから、ノリで始めるくらいがちょうどいい。まずは思いついたアイデアを隣の人に話してみるところから始めるといい。

麻生要一さん

リクルートで1500もの社内事業を支援した麻生さん。「すべてのサラリーマンは、社内起業家として覚醒できる」という。

斎藤:同感ですね。実際、30代くらいで世に出ている人たちの事業は、最初のアイデアは単なるノリのことも多いと感じます。

重要なのは、それをどれだけ「やりきる」ことができるかです。やりきるためには、人をどんどん巻き込まなきゃいけない。巻き込んでしまった人が増えると、自然と使命感が生まれてくるんですよね。

麻生:5人くらい応援者がつくと引っ込みがつかなくなって、そのうち「生まれた時から僕はこれがやりたかったんです!」と言えるようになる(笑)。

斎藤:たしかに(笑)。自分自身が洗脳されていくんですよね。そこで初めて、綺麗なストーリーが生まれていく。

麻生:そういった意味では、取材を受けるのはいいよね。インタビューされると、いろいろ自分を掘り起こさなくてはならないから、その時に自分の原体験や課題意識とふっと結びつく。

上司を投資家だと思って事業ストーリーを作る

浜田: 山本さんは、どうですか。ONE JAPANの活動をまとめた著書『仕事はもっと楽しくできる』にも最初のパートで山本さんの話が書かれていますが、現在、NTT東日本の新規事業開発に携わっているんですよね?

山本将裕さん(以下、山本):確かに僕自身も、ノリでスタートしたかもしれません。ONE JAPANの仲間からいろんな話を聞いて、「アクセラレータープログラムが今、流行ってる。NTTでもやりたい!」みたいな(笑)。

とはいえ、大企業では「うちの会社でそんな事業、できるわけだろう」と、上司に一蹴されることもあると思うんです。お二人にお伺いしたいのですが、それを突破するにはどうすればいいのでしょうか。

斎藤祐馬さん

企業家が投資家から資金を集めるように、「上司から予算をもらえるストーリーを作ろう」(斎藤さん)

麻生:まずは仕組みを作る側になるしかない。新規事業開発には、やはり仕組みが必要。だから、もし会社に仕組みがないなら、その仕組みを作る人になる必要がありますね。

浜田:会場に聞いてみましょう。社内で新規事業を募集する仕組みがあるという人は?

半分くらいですかね。じゃあ、応募したことがある人は?これは1割くらい。

麻生:ほら、この差分がおかしいですよね(笑)。仕組みがあると知っているのに、応募していないわけだから。もし、それがあまりいい仕組みじゃないとしても、それは一度応募してから改善提案するほうがいい。

斎藤:僕は、上司を投資家だと思うのがいいと思いますね。企業家が投資家から資金を集めるように「上司から予算をもらえるストーリーを作ろう」と考えるマインドセットが大事です。

僕は新規事業を進めるためには、3つのストーリーが必要だと考えています。ひとつはmy story。つまりなぜ自分がこれをやりたいか。次にour story。なぜ私たちがこれをやらなくてはならないか。最後にnow story。なぜ今やるべきなのか。この3つのストーリーで周りを動かし、着火していく。

浜田:会社の中に、パトロンやスポンサーを見つけていくということですね。

新規事業はヒットを狙うより数多く生み出せ

浜田:ONE JAPANが発足して2年。社内外のつながりを生かして、山本さんのようにアクセラレータープログラムを作ったり、リリースが出るような新規事業や協業が立ち上がったりしています。ここからスケールする新規事業を生み出していくためには、どんなことを意識すればいいのでしょう。

麻生:経営者目線で見ると、新規事業はヒットを狙うよりも、まずは数多く事業を生み出すことが優先です。

マザーズに上場するスタートアップでも、10億円、20億円くらいの規模です。そう考えると、社内に1000億円の新規事業がすぐにできるはずはないんですよね。だからこそ、数が重要。

NTTの新規事業にしても、数が増えてくるとその多くは本筋の事業に関係ないものになるでしょう。でも、その多産の中に、NTTの事業モデルを次世代型にするキラーモデルがひょこっと生まれたりするんですよね。

だから、この先は、この動きを大きくして社内認知度を高め、応募数を増やしていくのがいいと思います。

山本将裕さん

2015年6月にNTTグループの若手有志の会「O-DEN」を立ち上げた山本さん。

斎藤:大企業で大事なのは、人事を握ることですね。予算が取れても、人事権が取れないケースは難しい。新規事業には必ず役員がコミットするべきです。そのコミットが甘いと、うまくいかないケースが多い。

山本:まさに今、その人事が課題です。応援してくれる人は多いのですが、人事部だけではなく、いろんな部署がからむので……。どうすれば円滑に交渉できるんでしょうか。全員と飲みまくるしかない?

斎藤:ステークホルダーのインセンティブを一瞬で見抜くというのが大事だと思います。人によって、出世したい、給料を上げたい、好きな仕事をしたいなど、インセンティブが違いますよね。そこを見抜いてうまく交渉するのがいい。

麻生:飲みにいくのは確かに大事なんだけれど、社内政治で一番大事なのは、決裁会議。議事録を取って意思決定する会議でYESと言わせる資料を用意して、記録に残すのが一番早いんじゃないかな。

山本:飲み、会議、上司のインセンティブですね!さっそく、動きます。

定年後に使えるスキルは新規事業スキルだけ

左から、浜田敬子、斎藤祐馬さん、麻生要一さん、山本将裕さん

会社から命綱が伸びているから、最悪落ちても「死んだりしない」。普通だと退職しないとできない「やりたいこと」を、社内でできるようにするための手法が新規事業だという。

麻生:山本さんだけじゃなく、今ここにいる人たちも、明日から新規事業やったほうがいいですよ。これは会社のためにではなく、皆さん自身のために。皆さんは100歳まで生きる人たちだから、定年後も20年働かなきゃいけないんです。その時、今の会社で得たスキルは一切使えないと思った方がいい。ただし、新規事業スキルをのぞいては。

定年後に、次の会社に唯一持っていけるスキルは新規事業スキルだけです。自分で商売を作り、自分で顧客作りするプロセスを経験していないと、定年後、大変なことになります。

確かに、新規事業に関わると、社内では辛いことが多いです。出世もしないかもしれない(笑)。でも、社外での評価は上がります。社外で通じる力を、社内でつけるしか生き残る道はありません。ぜひ、明日から新規事業をやってください。

斎藤:今日、僕たちの話を聞いて、新規事業をやろうかなと思った人は、少し増えましたか? あ、増えましたね。嬉しいです。

皆さんは、ベンチャーと大企業の間にある塀の上を走ることができる人たちです。会社の方から命綱が伸びているから、最悪落ちても死んだりしない。普通だと退職しないとできない「やりたいこと」を、社内でできるようにするための手法、これが新規事業です。

先日、新規事業畑出身の高橋誠さんが、KDDIの新社長に就任されたと話題になりましたが、この流れは加速します。2020年以降、大企業の社長は新規事業畑から出てきます。今から新規事業に飛び込んだ人は、2020年以降、圧倒的に有利になります。新規事業は合理的な選択。ぜひ、チャレンジしてほしいと思います。

浜田:新規事業やイノベーションという言葉だけが一人歩きして、とてつもなくハードルが高いことをしなくてはならないような気になっていたかと思います。でも、今日の話を聞いて、その差分が埋まったのではないかと思います。明日から、みなさんのやりたいことを一生懸命近くの人に話して、前に進めていただけたらと思います。

(構成・佐藤友美、写真・Ryuta Hamamoto)


設立2年になるONE JAPAN。大企業にいながら一歩踏み出した若手の事例が集まる書籍『仕事はもっと楽しくできる』では、NTT東日本で新規事業開発に携わる山本さんの入社から現在までのエピソードも収録。

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