離職率はたった4%。なぜサイボウズには求める人材が集まるのか

企業は採用難をどう乗り越えていけばいいのだろうか。鍵を握るのは自社主体のメディアで十分かつ適切な情報を発信し、現代の求職者のニーズに合った採用活動を展開する「オウンドメディアリクルーティング(詳しくはこちらから)」という手法だ。

オウンドメディアリクルーティングを実践し、具体的な成果を出している企業の取り組みを通じて、高付加価値人材獲得の最前線を知る全3回シリーズ。 第2回は、多様化する働き方に対応した採用を行うサイボウズの中根弓佳氏に話を聞いた。

出している情報すべてが採用に影響

中根さん

サイボウズ執行役員・事業支援本部長の中根弓佳さん。1999年慶應義塾大学法学部を卒業後、関西の大手エネルギー会社に入社。2001年、サイボウズ株式会社に転職し、知財法務部門にて経営法務、契約法務、M&A、知的財産管理などを担当。2007年に第1子を、2009年に第2子を出産し産休・育休を取得。その後、人事、財務経理へと職務を広げ、現在は事業支援本部長を務める。2014年8月から現職。

──サイボウズの採用サイトには、さまざまな面から自社を知ってもらうためのコンテンツが揃えられています。どのような方針でつくっていらっしゃいますか。

採用情報サイトもそうなのですが、それだけでなく、「サイボウズ式 」、広告、製品……など、弊社が出している情報すべてが採用に影響していると考えています。どのような方にチームに加わっていただきたいかというと、まず私たちが大事にしている企業理念「チームワークあふれる社会を創る」に共感していること。スキルやキャリアがいくらあっても、企業理念に共感していない人は採用していません。これが絶対条件です。

ただ理念を言うだけでは伝わらないので、社員のインタビューなどを通して、このチームに入りたい、ここで「チームワークあふれる社会を創る」を一緒に目指したいと思ってもらえるようなコンテンツを心がけています。

──「サイボウズ式」をきっかけにサイボウズを知った人も多いと思います。始めた目的や制作にあたって大事にしていることはありますか?

確かに、「サイボウズ式」をきっかけにエントリーしてくださる方は増えました。「サイボウズ式」は、企業のブランド価値を高めることを目的に2012年5月からスタートしました。 といっても、自社製品のプロモーションや採用目的の記事は掲載していません。PVに重きを置いてもいません。そうなると面白くなくなると思うんです。

「チームワークあふれる社会を創るにはどうすればいいか」という文脈で、編集部員たちが面白いと思う記事を掲載しています。 採用情報サイトは人事部が管理していますが、「サイボウズ式」は社内の編集部が独自に編集しており、両者で事前にチェックすることはありません。 ただ、社員みんなチームワークに対する根本的な共感があるので、記事の内容、編集方針が大きく外れることはないと思います。

社内では月1回、全社ミーティングがありますし、そこで社長の青野からのメッセージが発信されています。また、社長もマネージャーも若手メンバーも、ことあるごとに「チーム」という言葉を使っています。

こうした取り組みの結果として、サイボウズ式などを通してわが社のカルチャーを理解した上で、エントリーをしてくれる方が増えてきたように思います。

全社員が関わる「キャリアBAR」とは?

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サイボウズ提供

──「U-29(ユニーク)採用」や「複業採用」、「ポスドク採用」などさまざまな採用形態があります。多様な価値観の人材が集まるなかで、求める人材とのミスマッチが起こらないよう工夫されている点はありますか?

2018年から新しい試みとして「キャリアBAR」を始めました。キャリア採用の応募者の方を対象に、部門ごとに現場社員がざっくばらんに話す小規模イベントで、随時開催しています。

それ以前は、採用に関する活動は人事部が行っていたのですが、エンジニアにはエンジニアが、営業には営業が、各部門の社員の思いを直接お伝えしたほうがより理解していただけるのではないかと考えたのです。 あらゆる部門で人員不足ということもあり、社員の意識も「人事の活動を待っているだけではダメだ。自分たちも一緒に採用活動をしよう」と高まってきました。

「キャリアBAR」を経て入社された方からも「事前情報と実際のギャップがなくていい」と好評です。「キャリアBAR」は、言ってみれば社員が自ら仕事の内容やカルチャーを発信する、「社員自身=メディア」という捉え方ですね。 複業採用については、やはり多様な方がいらっしゃいます。ただ、時間や場所に限らず、さまざまな人を受け入れる土壌がもともとサイボウズにはあったからこそ、複業採用に踏み切れたと思います。

「あなたは歓迎されている」ということを伝える

話し中の中根さん

──多様な働き方ができる会社になり、離職率が低下したとのことですが、多様な働き方を促進するために、改善した点があれば教えてください。

キャリア採用を本格的に行うようになったのは人員不足が顕著になってきた2016年から。 中途で入ると、なかなかカルチャーに馴染めない人もいると考え、2018年からは入社後のオン・ボーディング施策を始めています。

1カ月ごとに研修を行うのと同時に、半期に1度、その期間に採用された方に集まってもらい、困っていることがないかヒアリング、あれば他のキャリア採用の方と一緒に解決策を話し合ったり、社長に直接思っていることを語ってもらったりしています。

「自分は歓迎されているのだろうか」と不安になるという悩みもよく聞きます。そこで、チームメンバーからの「助かっています」「期待しています」というメッセージを伝えることも。まさに、「チームワークあふれる社会を創る」のベースとなる、チームワークの強化につながっています。

もともと社内にはオープンに誰でもポータルを作れるバーチャルな場があるのですが、そこに「キャリア採用のためのポータル」もできて活発に情報交換が行われています。 従業員数はグローバルで連結約800人ですが、離職率は2005年をピークに下がり続け、全体で4%にとどまっています。

PCと中根さん

──今後、積極的に活用や強化していきたい手法やチャネルはありますか。

キャリアブランクのある女性など、働くことに期待を持てていない層にももっと積極的にアピールしていきたいですね。

「働きやすそうな会社」というイメージからエントリーしていただくことも多いのですが、それだけではなく一緒にチームとして働くので、ワクワクした時間を過ごせるかどうかはとても大切。

世の中に貢献したい、自分の価値を見出したい、もっとサイボウズをよくしたい、楽しいことをしたい、そういった希望を叶えられる働き方をしたいと思っている方に、さまざまなメディアやチャネルを通じて情報を届けていていきたいと考えています。


【イベント開催】メルカリ、サイボウズ、DeNA……“採用強者”企業から学ぶ!ミレニアル世代の共感を生むリクルーティングとは

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