10月22日、LINEとエン・ジャパンのジョイントベンチャーであるLENSAは「LINEキャリア」をリリースした。
LENSA(レンサ)は10月22日、新しい転職支援サービス「LINEキャリア」をスタートした。LENSAはLINEと人材サービス大手エン・ジャパンのジョイントベンチャーで、2018年4月に設立。LINEキャリアはLENSAが提供する第1弾のサービスとなる。
エン・ジャパン執行役員でLENSA社長の寺田輝之氏。
同日、東京・新宿で行われたLINEキャリアの発表会にはLENSA社長の寺田輝之氏が登壇。労働人口の減少や未充足求人の拡大、人手不足による倒産件数の増加など、昨今の日本の求人環境の悪化に触れ、LINEキャリアの開始によって「より多くの人が仕事で活躍できる社会を目指す」と話した。
「LINEで転職」実現へ、転職情報の検索・通知をスマホ最適化
LINEキャリアは、アプリ上、またはスマートフォン/PC向けサイトで利用できる(写真はLINEアプリ上での表示)。
LINEキャリアは、LINEのチャットルームやスマートフォンに最適化された画面を通じて、転職先の検索やレコメンデーションを受けることができる。掲載情報は、エン・ジャパンの既存サービス「エン転職」の情報で、今後エン・ジャパンの投稿型転職求人情報サービス「engage」の情報も加えられる見通し。
サービス開始当初のLINEキャリアの掲載情報は、エン転職から自動転載された情報になる。
転職をしたい人が検索をする、という面だけではLINEキャリアと既存サービスの差はほとんどないように見えるが、LINEキャリアの強みは「LINEが日常で使うアプリであること」と「情報の掲出ポリシー」にある。
LINEは国内の月間アクティブユーザー(MAU)数が約7600万人にものぼり、一種のインフラとも言えるサービスに成長している。そんなLINE上で日常的に行われているのと同じように、LINEキャリアの公式アカウントでは、チャットを通して求人情報を検索できる。
検索はポータルサイトだけではなく、LINEキャリアの公式アカウントとのチャットルーム上でも利用できる。
チャットルーム上では、希望する年収や職種を指定してオススメの情報を教えてもらう。
また、情報検索だけではなく、自分の条件に合った新着情報のお知らせや、確定した面接日のお知らせなどもLINEのプッシュ通知として受け取れるなど、LINEらしい機能が実装されているのが特徴的だ。
「利用者に本当にあった情報を掲載する」ための制度設計
LENSA 代表取締役会長およびLINEのHRサービス事業部事業部長を務める上土達哉氏。
また、LENSAの代表取締役会長で、LINEのHRサービス事業部長も務める上土達哉氏によると、「LINEキャリアの最大の強みの一つは、掲出される情報が常にユーザーに合ったものが優先される点」と話す。
エン転職も含め一般的な転職情報サービスは、掲載料や転職が確定した際の成功報酬を企業側から受け取るビジネスモデル。そのため、掲載料の値段の大きさにより、掲載順序が多少上下する仕組みになるのが一般的だ。
一方、LINEキャリアの場合は、「掲載料」は受け取らず、転職が確定した際の「成功報酬」がエン・ジャパンからLENSAへ支払われる。LENSA側はあくまでも情報源としてエン・ジャパンの掲載情報を受け取るので、利用者に表示される情報は“純粋にユーザーの希望条件に沿うもの”になる。サービスの仕組みの上でも「マッチングの精度を上げる」(=成功報酬を得られる)インセンティブが働くように制度設計がされているところがポイントだ。
LINEの他サービス連携や別の求人情報サービスも検討中
LINEはさまざまな情報にLINE上からアクセスできる“スマートポータル構想”を掲げている。
また現在は実装されていないが、上土氏によると「転職情報のレコメンデーション(推薦)には、個別にユーザーの承諾を得た上で、LINE内のほかのサービスの情報の活用も検討している」という。
「LINEはさまざまな情報を集計し分析している。すべてが1対1の結果を導き出すものではないが、何らかの相関性や傾向を導き出しユーザーにとって価値のあるものを提供していきたい」と、上土氏は言う。
LINEが持つユーザーのキャリアに直接関連する情報は、現在LINEが2015年2月にスタートしたアルバイト情報サービス「LINEバイト」によるものが大きいが、先日始まった「LINEほけん」や「LINEスマート投資」なども「有用な情報源になるのではないか」と上土氏は語っている。
写真左から上土氏と寺田氏。LINEは今後、別の人材関連サービスもリリースする見通し。
LINEは“スマートポータル構想”を掲げており、決済やキャリア、O2O(オンラインtoオフライン)事業などをライフプラットフォーム分野と定義して事業展開を行うと発表している。詳細は語られなかったが、「複数のHRサービスの検討も進めている」(上土氏)と、バイト、転職につづくサービス、例えば「新卒求人サービス」のような展開も視野に入っているとみられる。
(文・撮影:小林優多郎)