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行政×民間で進めるデジタル改革——誰もが「街の課題解決」に参加できる時代に

行政は、近いようで遠い存在だ。会社で省庁や市町村の担当にでもならない限り、引っ越しの手続きに行くくらい。一緒に何かやろうなんて、考えもしなかった。こんな行政と市民の関係が、変わり始めている。原動力は、急激に進むデジタル化だ。政府は行政サービスの電子化を進め、民間側でも動きが加速している。2013年に関治之さんらが立ち上げた、一般社団法人コード・フォー・ジャパン(Code for Japan)は、IT技術を軸に、行政と市民がともに働く仕組みづくりを進めている。行政と民間が共に取り組む、デジタル改革の現状について聞いた。

市民も行政も課題解決のプレーヤー

関治之氏

一般社団法人コード・フォー・ジャパン代表理事の関治之さん。1975年生まれ。20歳よりSEとしてシステム開発に従事。2011年3月、東日本大震災発生の4時間後に、震災情報収集サイト「sinsai.info」を立ち上げる。被災地での情報ボランティア活動をきっかけに、住民コミュニティとテクノロジーの力で地域課題を解決する「シビックテック」の可能性を感じ、2013年10月にコード・フォー・ジャパンを設立、代表理事を務める。

「市民も行政も課題解決のプレーヤーとして一緒に考え、手を動かす。そうすれば、行政任せだった人も動かす側にまわることができる」。関さんが描くのは、こんな社会の姿だ。IT技術で行政とともに地域の課題を解決する取り組みは、シビックテック(Civic Tech)と呼ばれる。エンジニアやデザイナーらが、行政機関の課題解決に協力する、アメリカのNPO団体、コード・フォー・アメリカの活動が原型だ。

きっかけは東日本大震災

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gettyimages

関さんは当時、GIS(地理情報システム)の会社を経営しながら、Yahoo! JAPANにも所属していた。地震の直後から、あちこちで「なにかできることをしよう」と呼びかけが広がった。地図関連の技術者が集まるメーリングリストも、その1つだった。

「書き込みを読んで、ぼくの中でもスイッチが切り替わった」と、関さんは振り返る。まもなく、ネット上に散らばった情報を地図にマッピングする活動が始まった。地震発生から4時間ほどで公開された「sinsai.info」には、「津波で取り残された人がいる」「道路に亀裂がある」といった情報が続々と集まった。関さんが約1ヶ月半後に被災地に入ると、津波の直撃を受けた沿岸部から少し離れた内陸部の岩手県遠野市に、IT技術へのニーズがあるとわかった。当時の遠野市は支援者たちの拠点になっており、効率的な支援活動を実現するためには正確かつ最新の情報が欠かせない。被災者の救助や捜索などが続く最前線以上に、長期化が予想された後方支援の現場にこそIT技術への強いニーズがあったのだ。

その後ボランティアセンターでハッカソンを企画し、被災地のニーズが刻々と変化する中、全国から集まるボランティアにどう、効率的に動いてもらうか。より効果的に活動してもらうため、避難所の位置や必要な物資などの情報をまとめたデータベースをつくるなどの活動を行なった。

Code for Japan

その後、遠野のボランティアセンターでハッカソンを開催.

今でこそ省庁や自治体に幅広い人脈を築いているが、当時の関さんにとっても行政は遠い存在だった。そんな関さんが自治体に避難所の場所を問い合わせても、職員は「住民でない方に答えていいのか分からない」と繰り返すばかり。「平時には公表されているはずの情報がなぜ、 本当に必要な時にこそ共有されないのか」と苛立ちが募ったという。

ITの世界では、オープンソースの考え方が根付いている。以前はソースコードは厳重に保護されていたが、インターネットの広がりとともに、さまざまなソフトウェアがオープンソースで開発されるようになった。ソースコードを公開し、世界中の人が技術やアイデアを持ち寄り、開発に加わる。スマートフォンのOSにもオープンソースの仕組みで開発されたものがある。

行政のデジタル化の遅れを痛感

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オープンソースをフル活用してきた関さんにとって震災は、行政のデジタル化の遅れを痛感する機会になった。「日本の政府や地方自治体にもオープンソースの考え方を取り入れ、今の時代に合った仕組みをつくれないか」と考えるようになった。「sinsai.info」が注目を集めたことで、関さんは各地の勉強会や講演会に招かれるようになり、少しずつ行政で働く人たちとの関係もできた。一方で、仕組みを変える具体的な方法については、手がかりをつかめずにいた。

そんなとき、 世界の著名な識者によるプレゼンテーション動画の配信サイト「TED」で気になる動画を見つけた。 コード・フォー・アメリカの創設者ジェニファー・パルカさんによるものだ(現在も視聴可能)。「テックやデザインのスターたちが、嫌がりそうな環境で働いてもらう事業を始めました。行政機関で働いてもらうのです」

Code for Japan

Code for Japan提供

翌2013年に渡米した関さんはコード・フォー・アメリカのメンバーが登壇するカンファレンスに参加し、日本でも活動したいと持ちかけた。コード・フォー・アメリカ側から返ってきた答えは、意外なものだった。

「日本でシビックテックがどう使われるか知りたいから、ぜひやってほしい。こちらから指示はしないよ」

こうして機が熟した2013年10月、コード・フォー・ジャパンを設立。取り組みは全国各地へと急速に広がった。日本には今、「コード・フォー」のつく団体が86あり、団体間の上下関係なく互いに対等な関係で活動を続けている。

アメリカでは、エンジニアやデザイナーを公募するが、「ジャパン」では「研修プログラム」として、企業から自治体へ人材を派遣してもらう形を軸としている。課題解決に取り組むことで、新しい事業を立ち上げる力が身に着く。人件費は企業側が負担し、自治体側の予算面の負担は、ほぼない。各地のコード・フォーは、地域にあった形で活動している。シビックテックが機能した例として挙げられるのは、北海道札幌市で活動するコード・フォー・サッポロの「さっぽろ保育園マップ」だ。

民間とのコラボの成功例「保育園マップ」

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課題を見つけたのは、保育園を探していた母親だ。保育園を選ぶうえで、親たちには多くの情報がいる。何歳までの子を夜何時まで預かってくれるのか。年齢ごとの定員は何人か。知りたければ、片っ端から電話をするしかない。こうした課題に対し、数カ月でマップを開発した。取り組みは各地に広がり、20以上の都市で保育園マップがつくられている。より有益な情報を提供するには、行政の協力も必要だ。保育園に空きが出たときに、情報がオープンデータとして共有されれば、すぐにマップに反映することができる。

関治之氏

プログラミングなどIT技術に縁のない人には敷居の高い活動に見えるが、作業を分解し、得意なことを得意な人で分担していくと、実はそれほど難易度は高くなさそうだ。

  • 発案:必要な情報を考える
  • 情報収集:情報を集める
  • システム構築:地図に情報を表示するシステムを構築する
  • 入力:情報を入力する
  • デザイン:使いやすいデザインを考える
  • PR:マップを周知する
  • 行政担当:行政と折衝する

多様な経験を積んできた人たちが集まれば、もっと大きな変化を生めるかもしれない。そこには行政機関の存在も必要だ。市民と行政の関係を、「統治」や「管理」から「協調」へと変えていこう。「デジタル化が進み、草の根の人たちが、スキルを自由に提供できる範囲は広がっている」と、関さんは言う。

政府側も取り組みを加速している。2017年5月に公表された「デジタル・ガバメント推進方針」は、政府の文書としては、珍しいほど強い言葉で電子化を促している。

「場当たり的な糖衣錠(とういじょう)のような改革では手遅れになる。この危機感を政府全体で共有し、不退転の覚悟を持って改革に取り組む必要がある」

「糖衣錠」は、甘い砂糖でくるんだ薬のことだ。甘さでごまかさず苦い薬をそのまま飲み込む覚悟がなければ、長い間、紙中心で動いてきた行政はいつまでも変えられない。一見、大きな隔たりがありそうにも思えるが、デジタル化をめぐる民間と行政の目線は合っている。自分が暮らす街に課題があるなら、誰もが手や足を動かし、解決に取り組むことができる。そんな時代はもう、始まっている。


行政で現在進んでいるデジタル改革。デジタル化によって、行政サービスや社会サービスはどう変わるのか。経済効果はどうか、日本の課題は何か……。

例えば経済産業省では、この夏新たに「デジタル・トランスフォーメーションオフィス(DXオフィス)」を設置し、改革を加速させようとしている。その取り組みについて、詳しくはこちらから。

「世界で進むデジタル・ガバメント。今、日本がすべきこととは?」

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