「iPhone XR」実機レビュー、これで人気が出ないわけがない ── デザイン、性能、気になるカメラを試す

iPhone XR

ついに日本で手元にやってきた「iPhone XR」。試用機の本体カラーはホワイト。

2018年の新型iPhoneは「iPhone XSシリーズ」「iPhone XRシリーズ」の2本立て。発売時期も9月21日と10月26日に分かれた。そのため、XRの出来が気になって、まだXSを買わずにいる……という人もいるだろう。

9月の発表時の記事でも書いたように、「今年の本命はXR」との声は多かった。筆者もそれに賛成する。XSは完成度の高い良い端末だが、10万円を軽く超える価格がネックだ。

XSとXRはどう違うのか? 10月26日発売の実機をもとに、先行レビューでチェックしていきたい。

XRとXSの「機能差」は小さい。6色カラバリはXRだけ

Apple発表会でのiPhone XR

9月の新iPhone発表会での取材風景より。レッド、ホワイト、ブラック、ブルー、イエロー、コーラルの6色が揃ったiPhone XRは、会場でもひときわ目を惹いた。

iPhone XRとXSの違いはどこか?

端的にいえば「デザイン」と「ディスプレー」と「カメラ」の3つが違う。サイズの違いはディスプレーの違いの産物だし、他の違いは非常に小さなものだ。

例えば、搭載しているプロセッサーの性能は、XSとXRでまったく同じ。ベンチマークソフトで実機比較しても、差はほとんどない。メモリーこそ、XSは4GBでXRは3GBという違いがあるが(同ベンチマークアプリで確認)、iOSにおいては、両者の違いは体感しづらい。

他にも防水性能や3D Touch(画面の押し込み操作を実現する感圧機能)の有無などもあるが、「買い」判断を左右するほどの違いではない。前述の3点だけを念頭に置いて比較しても十分だ。

XRの底面

XRの底面。Lightingコネクターを使う点は同じ。ボディーの仕上げはアルミのつや消しに変わった。ホワイトモデルの場合はアルミ部分はシルバー。イエローでは黄色といったように本体色に合わせたカラーになっている。

デザインの違いは一番分かりやすい。

カラーは6色のバリエーションがあり、ポップな印象が強い。背面がガラスでカバーされている点はXSと同じだが、サイドはステンレスの光沢仕上げから、アルミのつや消しになっている。素材の違いはコストというより、デザインテイストの違いから来る選択だろう。

iPhone XR 左側面

本体左側面のスイッチ部。位置や役割はこれまでのiPhoneから一切変化していない。

iPhone XR 右側面

SIMカードスロットは、本体右側下部に。

iPhoneは2013年発売の「iPhone 5c」以外では、カラーバリエーション展開は控えめで今年までやってきた。5cは「価格も抑えめだがスペックも抑えめ」で、当時のハイエンド機種である「iPhone 5s」との差が大きかった。

しかし、今回は違う。XRとXSの機能差は相当に小さく、「デザインの好み」や「価格」で選んでも後悔しないと言える仕上がりだ。

ディスプレイは有機ELではなく「液晶」、しかし画質は良好

iPhone比較 正面

左から、iPhone XS(5.5インチ)、XR(6.1インチ)、XS Max(6.5インチ)。サイズはきれいに並ぶ。画質は有機ELを使ったXSの方がいいが、XRも若干解像感が劣るものの、悪くはない。

XRとXSでは、採用するディスプレー技術が異なる。XRは液晶、XSは有機ELを採用している。品質、特にコントラスト(明暗差)については、液晶と有機ELでは大きな差があり、黒の締まりや発色では、やはり有機ELを使ったXSの方が良い。

とは言うものの、XRのディスプレーも決して品質が低いものではない。iPhone 8などと同等の解像感・画質で、スマートフォン向けの液晶ディスプレーとしては、現状でもトップクラスのものと言える。

実機を見比べても、XSと横に並べて比較しないなら不満を感じる人はほとんどいないと思える。そのくらい、液晶の画質も上がっている。

iPhone XSとXRの額縁

左がXR(液晶)、右がXS(有機EL)。「縁」の太さがXRの方が太いのは、縁を細くすることが技術的に難しい液晶ゆえの仕様。

有機ELは液晶に比べパーツが少なくなるため、スマホをより薄く、軽くできる。iPhone XSも、XRより薄くなっているし、XRはサイズの割に重くなっている。ただ、XS自体が「薄さや軽さを極限まで追求した製品ではない」ため、その差は小さなものに収まっている。コスパを考えれば「液晶でもいい」と思う人がいても不思議じゃない。

ただ、液晶はどうしても「縁」を細くするのが技術的に難しい。そのため、有機ELを使っているXSに比べ「縁」の黒い部分が太めだ。また、コストと調達量のバランスもあってか、XS(5.8インチ)よりも若干大きく、XS Max(6.5インチ)よりは若干小さい“6.1インチ”のパネルになっている。

iPhone比較 背面

左から、iPhone XS(5.8インチ)、XR(6.1インチ)、XS Max(6.5インチ)の背面。まさに三兄弟。

結果、縁の太さも含めたデザインでいうと、XSとXR、XS Maxは「三兄弟」のようにサイズが並ぶ。

XS Maxに比べれば片手でも使いやすいが、iPhone 8よりも幅・厚さともに大きくなっているし、重量も46g重くなっているので、そこは注意が必要だ。

カメラ画質はXSに劣らないが、ポートレートは人物特化

次に注目のカメラだ。

XSは広角・望遠の2つのレンズを使う「デュアルカメラ」だが、XRはXSの広角と同じレンズ・センサーだけを使った「シングルカメラ」になっている。「ボケ味」のある写真が撮れる「ポートレートモード」の存在も含め、XSとXRのカメラ機能は、似ているように見える。

XS vs XR 比較1:風景撮影は差がほぼない

iPhone XS 風景作例

iPhone XSで撮影。

iPhone XR 風景作例

さらに、XRで同じ風景を撮影。違いはほとんど分からない。

実際、撮影された写真を見比べても、両者の差を見つけるのは非常に困難だ。XSは、ディープラーニングを使った加工と複数枚の映像を合成する手法を使い、「とにかくシャッターを切れば、その場の雰囲気の見た目に近い写真ができあがる」カメラ機能を実現した。

単に高画質である、ということではなく、「信頼性が高まった」「簡単になった」といった表現が正確かもしれない。XRも、カメラレンズの数こそ違うものの、同じセンサーとソフトウェアを使っているので、同じような特性を備えているというわけだ。

XS vs XR 比較2:ポートレートモード撮影に違いアリ

XSでポートレート撮影

iPhone XSでアウトカメラを使った「ポートレートモード」撮影。(以下、モデル協力:Caoさん)

XRでポートレート撮影

同じくXRでもアウトカメラで「ポートレートモード」撮影。画質的にはかなり近いが、実は撮影手法が違うので、背景の東京タワーのサイズが異なることに注目。

しかし、実は「ポートレートモード」については大きな違いがある。

XSは「デュアルカメラの画角の違い」と「画像認識」で奥行きを推定して、背景ボケ加工をしていた。それに対し、XRは画像認識のみで奥行きを推定している。そのため、XRのアウトカメラによるポートレートモードは「人物専用」だ。画角の中に人物がいないと背景ボケが使えない(たとえば、食事の写真では背景ボケが使えない)。

それに対して、XSは人以外でも背景ボケの演出が楽しめる。

XRのポートレートモード

iPhone XRのアウトカメラを使った「ポートレートモード」。人物がいないとポートレート撮影ができないが、人物を認識すると背景がボケる。

また、iPhoneのポートレートモードでは、顔にあたる照明などの効果を変える機能があるのだが、こちらもXSとXRでは違う。

XSでは「ステージ照明」「ステージ照明(モノ)」を含めた5種類が使えるのだが、XRだと「ステージ照明」系の2つが使えない。画像認識を組み合わせている以上、どちらの「ボケ味」も完璧ではないのだが、XRはシングルカメラでできる部分に特化したつくりになっているのだ。

iPhone XRとXS ポートレートモードに違い

iPhone XRで撮影した写真(左)では、画面下部に並ぶ「照明効果」ボタンが3つしかないが、XSで撮影した写真(右)には5つある。

ちなみに、XRは広角側のカメラでポートレート撮影を行う関係上、XSの場合とは画角が変わる。XRのポートレートモードで、XSと同じ大きさで被写体を撮影したい場合には、XSの時の半分程度の距離まで近づく必要があった。片方だけ使っている時には気付きにくい部分だが、「なるほど」と感心した部分だ。

一方で、同じポートレートモードであっても、インカメラを使った自撮りの場合は話が別だ。XSもXRも、自撮りと奥行き推定に使う「TrueDepthカメラ」は同じものが搭載されているので、画質・機能ともにまったく同じになっている。

XS vs XR 比較3:ズーム撮影にXRは弱い

iPhone XSのズーム時UI

iPhone XSのカメラUI。XSでは光学2倍ズームに対応しているため、「2x」というズーム用のボタンが出る。

iPhone XRのズーム時UI

一方、iPhone XRのカメラUIには「2x」のボタンは出ない。また、XRはデジタルズームだけなので寄りの絵が撮りづらい。

XSとXRの違いとして、「光学ズーム」の有無がある。XSは広角と望遠の2つのカメラを使っているので「光学2倍(切り換え式)」のズームができる。だがXRではできない。

そのため、ソフトにもズーム切り換え用のボタンがない。デジタルズームのみになる。光学ズームが使いたい人は「XSかXS Maxを」ということになる。

XRは「128GB版」が狙い目。カメラ機能は「他社が優位」の部分も

iPhone XRのカメラレンズ

iPhone XRのカメラ部。XSとは異なり「シングルカメラ」。

結論から言って、サイズやカメラの性質の違いが気にならないなら、そして、デザイン的にXRの「ポップさ」が気に入ったなら、iPhone XRは「買い」だ。

個人的には、ストレージの搭載量が「64・128・256GB」という刻みなのも気に入っている。iPhone XSは「64・256・512GB」なのだが、さすがにスマホで512GBを求める人はまだ少ないはず。

筆者は相当にスマホを酷使する方だが、256GBでも余る。かといって64GBでは心許ない。だから128GBがあれば……と思っていたのだが、iPhone XでもXSでも、アップルは「128GB」を用意してくれなかった。XRは、ストレージの面でもXSよりお手頃になっていて、コストパフォーマンスがいい。

xr

iPhone XRのカラバリ一覧。

price

気になる価格は、8万4800円(税別)から。

一方で、カメラの特性については、ライバルと比較すると「もう一声」と感じる部分もある。グーグルが11月1日に国内発売する新端末「Pixel 3」にしろ、ファーウェイの「P20 Pro」にしろ、今年出た「カメラが高画質」と言われるスマホは、デジタルズームでも画質がいい。

その点で、iPhoneはXSでもXRでも、デジタルズームの画質が良くない。

また、Pixel 3はXRと同じようにシングルレンズだが、XRと違い、人間以外でもボケ味が再現できる。これらの違いはソフトの違いで生まれているものだ。

使い勝手や、体感の速さなど、iPhoneが優位な点もある。特にiOS 12で搭載された「Siriショートカット」という機能は、「毎朝同じことをする」「同じ情報を得るために、アプリで毎回同じメニューを開く」といったルーチンワークの簡略化に大きな役割を果たしており、便利だ。

しかし、スマホの世界でライバルは猛追しており、一部ではアップルを追い抜いている。

アップルも同価格帯のライバルに負けないよう、ソフト改善を進める必要がある。特に今回、カメラの「基本的な画質以外の部分」では、アップルの課題がはっきりと見えたように感じる。

(文、撮影・西田宗千佳)


西田宗千佳:フリージャーナリスト。得意ジャンルはパソコン・デジタルAV・家電、ネットワーク関連など「電気かデータが流れるもの全般」。主な著書に『ポケモンGOは終わらない』『ソニー復興の劇薬』『ネットフリックスの時代』『iPad VS. キンドル 日本を巻き込む電子書籍戦争の舞台裏』など 。

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