メルカリ、フィナテキスト…スタートアップに巨額マネー集中。調達上位の顔ぶれ

メルカリ、フィナテキスト、freee……。スタートアップによる数十億円単位の資金調達のニュースが相次ぎ、ベンチャーへの投資ブームが盛り上がっている。

ただ、一握りの有望企業に資金が集中するわりに、起業のすそ野が大きく広がっているわけではなさそうだ。今度こそ日本に「起業文化」が根付くのか、あるいは一時のバブルで終わるのか。

AIやフィンテックに巨額マネー集中

東京証券取引所 メルカリ 上場

2018年6月19日に東京証券取引所で行われたメルカリの上場セレモニー。最近のベンチャーブームの盛り上がりを象徴する出来事だった。

REUTERS/Kim Kyung-Hoon

各社の公表情報などをもとにしたジャパンベンチャーリサーチ(JVR)のまとめによると、2018年上半期、国内のスタートアップによる資金調達額は1732億円で、前年同期を4割ほど上回る。

国内スタートアップ資金調達額と社数推移

調達額上位に並ぶ顔ぶれを見ると、「人工知能(AI)」「フィンテック」「健康」「ロボット」といったキーワードに関連するスタートアップが目立つ。

2018年上半期調達額ランキング①

2018年上半期調達額ランキング②

2018年下半期に入ってからも、スマホ証券子会社が注目されるフィナテキストや、クラウド会計ソフトを手がけるfreeeがそれぞれ50億円超を調達するなど大型案件が続出。2018年通年の調達額は、前年の2921億円を大きく上回り4000億円台に迫る可能性があるという。

この集計には、新規株式公開(IPO)による資金調達は含まれず、メルカリが東証マザーズに2018年6月に上場した際の540億円余りなどは対象外。ただ、「スタートアップ」の定義にもよるが、新興企業のIPOの件数・調達額も高水準が続いているのは間違いない。

トヨタ、パナなど老舗大手が新ビジネスのタネに直接投資

パナソニックが電機自動車大手のテスラとアメリカで共同運営する太陽光パネルなどの工場。

パナソニックが電気自動車大手のテスラとアメリカで共同運営する太陽光パネルなどの工場。創業100年の老舗電機メーカーも国内外で新興企業との連携を加速している。

REUTERS/Brendan McDermid

日本は今、「第4次ベンチャーブーム」のさなかだ。

楽天やDeNAが台頭した1990年代初めから2000年ごろにかけての第3次ブームがITバブル崩壊でしぼんだ後、低迷期が続いたが、2012年末の安倍政権発足後に状況は一変。日本銀行による「異次元の金融緩和」によって市場にマネーがあふれかえり、リスクはあるが一発当てれば大きなリターンが見込めるスタートアップ投資に資金が回りやすくなった。

今回のブームの大きな特徴は、資金の出し手の主役だったジャフコなどのベンチャーキャピタル(VC)に加えて、以前はベンチャー投資には縁遠かった老舗の大手事業会社やその傘下にあるコーポレートベンチャーキャピタル(CVC)による投資が目立つことだ。

配車アプリのジャパンタクシーに出資したトヨタ自動車や、「洗濯物折り畳みロボ」を開発するセブン・ドリーマーズ・ラボラトリーズに出資したパナソニックが代表例だ。

AIに代表されるテクノロジーの急速な発展などで事業環境が激変しつつあるなか、自らイノベーションを生み出しにくくなった大企業が、新しいビジネスの「タネ」を外部のスタートアップに求める傾向が強まっている。

「お祭り」だった1億円調達、今は普通に

規模別の資金調達社数の割合

もう一つの特徴は、1社あたりの調達額が膨らんでいることだ。

JVRによると、1社あたりの調達額の中央値は2012年には1500万円だったが、2018年上半期には1億円に達した。「以前は1億円調達できたら『お祭り』でしたが、今ではすっかり普通になりましたね」(JVRの森敦子・執行役員シニアアナリスト)

そんな現状を「まさにバブルだ」(VC関係者)と警告する声は少なくない。

ただ、資金調達の総額と1社あたりの調達額が大きく増えている割に、資金調達企業数は伸び悩む。有望なスタートアップのすそ野が大きく広がっている状況ではなさそうだ。

あるITベンチャーの役員は「有望だと評判が立った一部のスタートアップに資金がどっと集中する傾向が強まっています。そうした企業の未公開株式には、実際の企業価値からするとあり得ないほど高い価格がつくこともあります」と声を潜める。

この先は視界不良、根付くか「起業文化」

空から見たシリコンバレー。

空から見たシリコンバレー。アメリカでは、成功した起業家が後に続く挑戦者を資金やノウハウの面で支援する「文化」が根付いていると言われる。

REUTERS/Noah Berger

今後はどうなるのか。

スタートアップ投資は景気に左右される面も大きい。世界経済を引っ張るアメリカの景気拡大は10年目に入り「戦後最長」に迫る一方、中国との貿易戦争で先行きには不透明感が漂う。国内を見ても、2020年の東京五輪に向けたインフラ投資などが一巡すれば景気に息切れ感が出てくる、という見方が目立つ。

アメリカでは2018年、ベンチャーキャピタルによる投資額だけで1000億ドル(約11兆円)に迫るとの見方も出ており、日本との差は大きい。「挑戦すること」を高く評価する国民性をベースに、アメリカでは成功した起業家が後進を支援する「好循環」がうまく機能していることが、有力スタートアップが次々に生まれる要因だと言われる。

景気の潮目の変化とともに、日本のベンチャーブームも収束するのか。ブームの追い風を受けて広がり始めた好循環が定着し、事業会社による投資の勢いも続いて、日本にいよいよ「起業文化」が根付くのか。答えが出るのはそう遠い将来ではない。

(文・庄司将晃)

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