トルコのエルドアン大統領。
Sky News
- トルコの政治家は22日、ジャーナリストのジャマル・カショギ氏の遺体が、イスタンブールのサウジアラビア総領事館の敷地内にある井戸から見つかったとの噂を流した。
- しかし、トルコのエルドアン大統領は、カショギ氏の遺体がどこにあるかは「誰も知らない」と発言。この噂を打ち消したものと見られる。
- エルドアン大統領は、カショギ氏の遺体をカーペットでくるみ、現地の協力者にその処分を依頼したというサウジアラビア側の主張に触れ、より詳しい情報を出すよう求めた。
- カショギ氏の殺害をめぐっては、トルコ側は繰り返し情報をリークし、サウジアラビアに対し、強気の姿勢を見せてきた。
- トルコ当局はエルドアン大統領のスピーチで新たな事実が明らかになるとしていたが、実際の内容はこれまでの説明とほとんど変わらなかった。
- 例えば、トルコが持っていると主張するカショギ氏殺害の瞬間を捉えた音声や動画について、エルドアン大統領は公表しなかった。
トルコの大統領は、ジャーナリストのジャマル・カショギ氏の遺体のありかを明らかにするよう求めたことで、イスタンブールのサウジアラビア総領事館の敷地内にある井戸からカショギ氏の遺体が見つかったとの噂を打ち消した。
エルドアン大統領は23日、与党である公正発展党(AKP)の議員に対し、カショギ氏の遺体がどこにあるのか、引き続き探していると述べた。
「ジャマル・カショギの遺体はどこにあるのだろうか? 」
エルドアン大統領は述べた。「これまで誰も知らない」
トルコ祖国党のドウ・ペリンチェク(Doğu Perinçek)書記長は22日、カショギ氏のからだの一部がサウジアラビア総領事館の庭の井戸から見つかったと主張した。
ペリンチェク書記長がどこからその情報を得たのか、トルコの情報機関の内情に詳しいのかどうかは分かっていない。ペリンチェク書記長は、エルドアン大統領が声明で同様に触れるだろうと語っていたが、結果的にそうはならなかった。
10月2日、イスタンブールにあるサウジアラビア総領事館に入っていくジャマル・カショギ氏の姿を捉えた監視カメラ映像。
CCTV/Hurriyet via AP
エルドアン大統領は、カショギ氏の遺体はラグに包まれて、地元の協力者に処分のため引き渡されたという、サウジアラビアの匿名の関係者が21日にロイターに語った内容にも触れた。
この発言は、ニューヨーク・タイムズやウォール・ストリート・ジャーナルが報じた、カショギ氏の遺体はバラバラにされたというトルコの情報機関の情報とは矛盾する。
エルドアン大統領は23日、「カショギ氏の遺体は、地元の協力者に引き渡されたという話がある。わたしは『それは誰だ? 』と尋ねている」
「誰もこの地元協力者について語っていない。誰かが、地元の人間だと言った。この人間の名前を明らかにする必要がある」
「こうした疑問に答えずして、この事件が終わりを迎えることは、誰も許さないだろう」
エルドアン大統領が言わなかったこと
ジャマル・カショギ氏(スイス、2011年)。
Associated Press/Virginia Mayo
エルドアン大統領はそのスピーチの中で、サウジアラビアの工作員がカショギ氏の「残忍な」殺害を計画したと非難したが、アメリカにいるトルコの情報機関職員や親政府系トルコメディアほど強気の主張はしなかった。
トルコの情報機関の高官は、少なくとも2週間は、サウジアラビアによるカショギ氏殺害の瞬間を捉えた音声と動画を持っていると主張してきた。しかし、トルコ政府はいまだこれを明らかにしておらず、同盟国にも共有していない。
複数のアメリカ、ヨーロッパの情報機関の高官が受け取ったことはないと述べ、アメリカのトランプ大統領もこうした記録の存在を疑問視している。
「我々はその存在について聞いているが、誰も見たことがない」と、トランプ大統領は20日、FBIやCIAからの情報も含めて述べた。
ガーディアンの中東担当マーティン・チュラブ(Martin Chulov)記者は、エルドアン大統領のスピーチの後、「2週間にわたって強力なリークでサウジアラビアを悩ませた後、ジャマル・カショギに対する世界中の注目が集まる中で、エルドアンはとどめを刺さなかった」とツイートした。
左から、サウジアラビアのムハンマド・ビン・サルマン皇太子、ジャマル・カショギ氏、トルコのエルドアン大統領。
Hamad I Mohammed/Reuters; Middle East Monitor via Reuters; Matt Dunham - WPA Pool/Getty Images
サウジアラビアは19日、カショギ氏の死を認めたが、殴り合いのケンカの末の事故だと説明した。
また、トップの関与 —— 特にムハンマド・ビン・サルマン皇太子 —— を否定し、カショギ氏の殺害はならず者の工作によるもので、皇太子も情報機関も何も知らされていなかったと主張している。
トルコ当局は、カショギ氏の殺害に関する情報を、アメリカやトルコメディアにリークし続け、カショギ氏殺害にサウジアラビアのトップの関与があったことを示す記録があると強気な主張を繰り返してきた。
専門家は、これはトルコが新たな契約もしくは非公式の資金提供といった形で、サウジアラビアから何らかの譲歩を引き出そうとしていることの表れだと指摘している。
(翻訳、編集:山口佳美)