「IQOS ストア 銀座」の様子。
米たばこ大手のフィリップモリスインターナショナルは10月22日、加熱式たばこアイコス(iQOS)の新製品を11月15日に販売開始すると発表した。現在、利用者の半数以上が日本居住者だと報じられるアイコスの日本市場における戦略を、訪日中の同社CEO、アンドレ・カランザポラス氏に聞いた。
加熱式たばこのシェアの奪い合いは激化
フィリップモリスインターナショナル CEOのアンドレ・カランザポラス氏。同社はアイコスの新製品のワールド・プレミアイベントを東京で行った。
「少なくとも東京オリンピックの間は、紙巻きたばこゼロを実現すべきだし、できるはずだ。数年のうちに、日本は紙巻きたばこ利用者の大多数が加熱式たばこに移行する、最初の国になると思う」
カランザポラス氏はBusiness Insider Japanの取材に対し、日本市場への意気込みについてそう語った。
アイコスは、2016年に他社に先駆けて全国販売を開始。利用者数はすでに500万人を超えたと発表されている。
その一方で、直近では他社の追い上げに苦戦。2017年には、ブリティッシュ・アメリカン・タバコ(BAT)が発売したグロー(glo)が、2018年には、JT(日本たばこ産業)のプルーム・テックが、それぞれ全国で販売を開始したことに伴い、市場シェアの奪い合いは激しさを増している。
カランザポラス氏は、他社製品と比較した場合のアイコスの強みについて、こう語った。
「アイコスは、(健康リスクについての)科学的な実証が完了している唯一の商品。臨床検査には5年の年月と巨額の資金がかかる。いずれは他社も行うだろうが、現時点で我々のように完了している企業はほかにはない」
同社は2016年12月、リスクの低いたばこ製品としてアイコスを販売する許可を、米食品医薬品局(FDA)に対して申請しているが、現時点ではまだ審査中で許可を得られていない。
同様に、日本の厚生労働省はじめ世界各国で、アイコスがリスクを低減する可能性のある製品であることを示す科学的証拠を提供していると同氏は述べた。
「紙巻きたばこ撤退」は実現可能か?
「将来的な紙巻きたばこからの撤退」を表明している同社。
しかし、カランザポラス氏は「『2025年までに40%の売り上げをアイコスのような種類の商品からにする』という目標を自社で立ててはいるが、業績予想そのものではない」として、その時期については明言しなかった。その理由として、課税や規制の問題を挙げた。
「ゆくゆくは紙巻きたばこの健康リスクを100%として、リスクに応じて課税や規制が課されるべきだと思う。(2018年10月から実施された)たばこの増税は、紙巻きたばこと加熱式たばこの両方に課された。これは合理的で継続されるべきだと思うが、その差はもっと大きくてもいいと思う」(同氏)
カランザポラス氏はインタビューで、アイコスに続く新たな加熱式たばこを発表する可能性についても示唆した。「電気ではなく、カーボンチップを使って加熱する」タイプのものや、水タバコなど、複数の製品の開発を進めており、2〜3年以内に市場に投入する予定だという。
紙巻きたばこからの転換を急ぐフィリップモリス。その鍵は日本市場が握っているのかもしれない。
(文・写真、西山里緒)