ユニクロ物流大混乱からのリベンジ、37歳幹部が語るほぼ無人化倉庫の全貌

ユニクロを手がけるファーストリテイリング(FR)が、物流倉庫の全自動化に乗り出した。

東京・有明本部内のEC向け物流倉庫の本格稼働させるにあたり、効率的な保管、搬送、仕分けするマテリアルハンドリング(マテハン)分野で世界トップメーカーのダイフク(大阪、下代博社長)と戦略的グローバルパートナーシップ構築を発表した。

ユニクロ有明EC倉庫

ユニクロの有明倉庫。物流の“後進”企業だったファーストリテイリングが倉庫の全自動化に乗り出す。

撮影・松下久美

ファーストリテイリングが大和ハウス工業と共同で有明に専用物流倉庫を建設すると発表したのは、4年前の2014年10月のこと。合弁で物流事業会社を設立し、有明倉庫を2016年から稼働させ、都内での即日配送や首都圏での翌日配送を開始するとともに、国内主要都市(約10カ所)に新型物流倉庫を建設する計画だった。

だが、店舗向けとEC向けの両機能を担うはずの有明物流センターは大混乱をきたした。滞留した商品を一時保管するための横持ち倉庫を借りざるを得ず、結果コスト増や出荷遅れ、店頭での欠品やECの納期の長期化などの問題を引き起こしていた。担当役員はクビになり、物流パートナー企業も替えたというウワサは聞こえてきていた。

一体、何が起こっていたのか。

物流の全体像を持たずに起きた大混乱

「有明プロジェクト」を統括し、サプライチェーン改革を担当する神保拓也ファーストリテイリング執行役員(37)は赤裸々に語る。

「一部の報道などでも伝えられていたが、ユニクロの物流は2015年に非常に危機に立たされ大混乱に陥っていた。物流パートナー企業に業務そのものをほとんど丸投げしていたため、われわれが実際に現場で何が起こっているのかを把握できていなかった。結果、倉庫のキャパがあふれ、いたるところに荷物が氾濫。ECで遅延も発生し、大混乱の極みという状況だった」

「その混乱を物流部だけで力技で解決しようとして余計に混乱を招いた。物流は“川上”の企画・発注・生産とも、“川下”の店舗、個人のお客さまとも、つながりながら変革しなければならなかった」

極めつけは、

「われわれは(サプライチェーンや物流の)全体像を持っていなかった。ピクチャーがない中で、『ああしてほしい、こうしてほしい』と無理なお願いばかりし、パートナーからも協力を得られず、混乱の解決に至らなかった」

と明かす。

ファーストリテイリング グループ執行役員 神保拓也、ファーストリテイリング 代表取締役会長兼社長 柳井正、ダイフク 代表取締役社長 下代博、ダイフク 執行役員 権藤卓也

左からファーストリテイリング グループの神保拓也執行役員、柳井正会長兼社長、ダイフクの下代博社長、同社の権藤卓也執行役員。

企画・デザイン、生産、販売までのプロセスを一気通貫で行い、独自性と低価格高品質を実現するSPA(製造小売り)型のビジネスモデルを実現したことは、ユニクロの成功の重要な要素だ。けれども小売業からスタートしたこともあり、物流・ロジスティクス面は遅れをとっていたのは事実。

グループの年間生産数が13億枚という、物量の多さも難易度の高さにつながっていた。物流改革をしなくても海外やECを中心に成長が続いていたため、後手に回ったという面もある。

それでも「丸投げ」「物流部の孤立」「全体像がなかった」との告白は衝撃的だ。

ヒートテックを5カ月倉庫に眠らせる

ユニクロ有明EC倉庫

今後の人手不足を見越して9割の人員削減を達成。超省人化を目指す。

そこから、全社を挙げての物流改革を2016年にスタート。神保氏は語る。

「マネジメント体制も含めた大幅な組織改革を断行し、物流部を解体し、各部署のプロを集めたグローバルサプライチェーンマネジメント部を新設した。次にすべての倉庫、物流現場に経営幹部も含めて全員で行き、徹底的に本質的な課題の把握に努めた」

問題・課題も明確に見えてきた。

  • サプライチェーンに関する重要な数値、モノの流れがまったく見えないこと
  • 中国・東南アジアなどで生産した商品が、販売時期よりもかなり前に、しかも大量に日本をはじめとした販売国に入荷してしまい、無駄に高い倉庫賃料を支払う状況になっていたこと
  • 倉庫オペレーションが物流パートナーで統一されておらず、ファーストリテイリング側から統制がとれなかったこと
  • コスト管理の不徹底

と大きくは4点だった。

神保氏は

「混乱当時は海外の生産工場で作ったものが、否応なしにプッシュ型で販売国に届いてしまっていた。ヒートテックが売れはじめるのは秋口だが、5月に大量に日本に入庫し、倉庫のキャパを圧迫。5カ月も倉庫に眠らせているだけで、大きな倉庫賃料が発生するというような事態が起こっていた」

と振り返る。

8〜16時間の出荷時間が15分〜1時間に

まずは世界中のどこで、何の商品が、どれだけ作られているのか、売れているのかなどを把握・コントロールしながら、適時・適量・適品を可能にする物流体制の確立を目指すべく、組織を整備。専門チームとして「経営コックピット」と「SCM情報センター」を社内に立ち上げ、サプライチェーン上のすべての情報を可視化する取り組みを開始した。

次に、賃料の高い日本のような販売国に商品をプールするのではなく、商品を貯める“ダムの機能”を生産国側に設けようと、生産国倉庫を緊急で立ち上げ、実売の機会に応じてタイムリーに販売国倉庫に入庫するという変革を行った。

さらに、物流パートナー企業との契約形態、体系、倉庫オペレーションを標準化し、改革のインフラを整備。コスト管理も徹底した。

「丸投げせず、現場の課題に頭から突っ込み、人海戦術で改革を推進した。だからこそ人海戦術の限界もわかった。これも非常に強い学びとして記憶に残っている。人件費は決して、下がらない。集人(労働力確保)はますます難しくなるし、高度化・習熟化のための教育コストもかかる」

ここから導き出した答えが「世界最先端技術を用いた、進化し続ける超省人化アパレル倉庫の世界展開」だ。

「これはまさに物流がプロフィットセンターになるという考えに基づいた、未来への投資だ。集人難や人件費の高騰は今後改善されることはなく、ますます環境は厳しくなる。今このタイミングで手を付けていなければ遅きに失する。物流が大混乱していたわれわれのような物流後進企業が、いきなり倉庫の自動化なんて、と感じられるかもしれないが、だからこそゼロベースですべてをやり替える、振り切る経営判断ができた」

ユニクロのヘッドクォーター・有明オフィスの下にある有明物流倉庫を最先端の超省人化型に刷新。オリジナルムービーを制作し、工程や最新マシンをなどを紹介している。

提供:ユニクロ

1号案件となる有明倉庫では、顧客のオーダーから出荷までの所要時間が、従来の8~16時間から15分~1時間にまで大幅短縮を実現。

2018年春夏商品から全商品に付けているRFID(非接触型電子タグ)を活用した100%自動検品をはじめ、荷下ろし、荷積み、検品、梱包箱の組み立てなどを無人化し、省人化率(人員削減率)90%、入庫生産性80倍、出庫生産性19倍、教育コストの80%カットなどの効果を発揮し始めている。

検品ミスがないのも大きな収穫だ。現在人力で行っている個別宅配向けのピッキング作業も、年内には自動化予定だ。24時間稼働ができるのも、全自動化のおかげだ。

すでに中国、タイ、オーストラリア、アメリカの東西海岸には専門チームが入り込み、倉庫の自動化に着手。今後は、国内10カ所前後に新物流センターを開設。新規出店国にはすべて自動倉庫を導入する予定で、多数のロボットベンチャーとも話を始めているところだ。

物流改革は緒に就いたばかり。RFIDのさらなる活用や、提携したグーグルとの取り組みを含めて、「情報製造小売業」化に向けてさらなる施策が求められる。

(文・写真、松下久美)


神保拓也:ファーストリテイリング執行役員。1981年5月31日生まれ。2004年に中央大学経済学部を卒業後、東京三菱銀行(現三菱UFJ銀行)に入行。2009年にプライスフォーターハウスクーパースに転じ、翌年にファーストリテイリングに入社。人事部採用チームに配属。2014年にFR Management and Innovation Center部長。2016年にグループ執行役員に就任し、グローバルサプライチェーンマネジメント担当。2017年から有明プロジェクト全体統括グローバルサプライチェーン全体統括に。

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