毎月オープンしてもほぼ満席。WeWorkはなぜ人を集めるのか

WeWork ジャパン最高経営責任者(CEO)クリス・ヒル氏。

WeWorkジャパン最高経営責任者(CEO)クリス・ヒル氏。

2018年2月から日本でサービスを始めたシェアリングオフィス大手、米WeWorkの勢いが止まらない。2018年末までにオープンする拠点を合わせて都内は8拠点。横浜市、福岡市、大阪市にも進出する。ほぼ1カ月に1カ所のペースで拡大を続け、メンバーと呼ばれる利用者は6000人を超えた(2018年9月現在)。

なぜここまで急速な拡大を続けるのか。またそれが可能なのか。Business Insider JapanはWeWrorkジャパンのクリス・ヒルCEOにインタビューした。

9月までにオープンした都内6カ所はほぼ満席状態だという。社員も大手企業などから次々と転職組が集まり、1年で145人まで増加している。

ヒル氏によると、同氏が1年前に予言した「WeWorkを中心にした仕事環境の革命」は起きているという。開業前は、日本人はシャイで、シェアリングオフィスで他人に会ったり、協業したりすることがないのではないかと懸念する声がメディアを中心にあった。

しかし、ヒル氏はそれを「大きな謎」と呼ぶ。

「日本人はつながりたがっている」

ヒル氏によると、日本の文化は他のどの国の人よりも、お互いにつながりたいと思っている、というのが特徴。

ヒル氏によると、日本の文化は他のどの国の人よりも、お互いにつながりたいと思っている、というのが特徴。

「私の最初の勘は、当たっていました。日本の文化というのは、他のどの国の人よりも、お互いにつながりたいと思っている、というのが特徴です」

異業種の人が協業(コラボレーション)する現象も、「実現していると思う」とヒル氏。

「日本のメンバーは、『こういうことができますよ』と提案すると、とても真剣に受け止めてくれる。『WeWorkというプラットフォームは協業のためにあるんですよ』というと、それを実現しようとする。人に出会ったり、イベントに参加したりして、すぐに打ち解けて、いろんな協業が実際に起きています」

メンバーの年齢や職種はさまざまだという。フリーランスやスタートアップのような小所帯から、大企業まで。大企業の顔ぶれを見ても丸紅や損保ジャパン日本興亜保険、川崎重工など多様だ。自治体では静岡市も参加している。

ベンチャーや中小の参加企業の業種もファッションや旅行、マーケティング、イベント企画、人材派遣、飲食業と幅広い。立地によって、メンバー構成も異なり、銀座(中央区)ではスーツ姿のビジネスパーソンが目立つ一方、神宮前(渋谷区)はクリエーターや専門職が圧倒的に多いという。

ヒル氏は、日本人のWeWorkの利用方法には他の国にない使い方があると指摘する。例えば、渋谷区神宮前の「アイスバーグ」と呼ばれるスペースは、週末の土日も混み合っている。

「東京は人口が密集し、個人的なスペースが限られているから、ワークスペースが個人の空間の延長として使われている」

また、午後10時以降に昼間とは異なる職種のメンバーが詰めかけるという。

「素晴らしいものを創れば人は集まってくる」

渋谷区神宮前の「アイスバーグ」と呼ばれるスペース

「アイスバーグ」は、Audiの元ショールームで、ガラス張りの建物が印象的。

「アイスバーグ」はAudiの元ショールームで、原宿のど真ん中にある優良物件。高い天井がオープンな雰囲気を醸し出している。正面のガラス窓に大きくWeWorkのロゴがあり、セルフィーを撮る通行人もいる。

中もかなり余裕を持ってテーブルや椅子などが配置され、落ち着いて仕事ができる環境を作り出している。クリス氏は、WeWorkのビジネスの本質を「ブランドビジネス」だと話す。

「素晴らしいものを創れば、自然と人は集まってくるというのが場所を創る時の大きな方針です」

銀座のWeWorkは、高級ショッピングモール「GINZA SIX」内にあり、オープン以来開いたイベントの数は100に上る。

スタートアップなどの小規模な企業やフリーランスが銀座に、しかも GINZA SIX内にオフィスを構えることは現実的ではない。だが、企業の規模によらず機会を平等に与えたい、というのが WeWorkの考え。実際、WeWorkのメンバーになったことで、「ビジネスチャンスが待っている」(ヒル氏)という。

物件の場所の選定にもこだわっている。交通網、通勤時間……どこにつくれば、ワークライフバランスを叶えられるのか。サテライトオフィスとして機能するのか。11月にオープンする横浜・みなとみらい地区の物件は、まさにサテライトオフィスとしての使われ方を意識している。

「ブランド価値がある物件」の確保には、多くの大手デベロッパーや不動産業者が参加している。スペースの立地のイメージにとらわれずにデザインすることも重要で、例えば新橋は、「サラリーマンの街」と思われがちだが、高級感あるデザインにすることで、女性や外国人のメンバーも惹きつけている。

規模が拡大すると価値は上がる

「アイスバーグ」1階正面入口。

神宮前のアイスバーグの外観。道ゆく人から働く姿が見える。

アメリカでもアップルやフェイスブック、ナイキ、Uberなど大企業から人材がWeWorkに移ってきているが、その理由をヒル氏はこう話す。

「ただ生きるためだけでなく、人生を満たすために働く世界を創造するというWeWorkの使命、創業者ら、そして私のような現地のCEOを信じて入社するからだ。私はそうした社員が成功できるよう、熱心に誠実に手助けしたいと思っている」

そのためにも今後は「売り手市場」の福岡などではWeWorkそのものの採用が課題だという。

急激な拡大に対して売り上げがついてくるのかを指摘する声もある。それに対しては、

「コミュニティは拠点を増やし規模を拡大すると、より価値が高まる。規模の原理が働く。なので、収益性だけを考えてこの拡大路線をやめることは考えていない」

2019年第一四半期にはすでに都内3拠点のオープンが決まっている。2019年には拠点もメンバーも倍になる予定だという。このため2019年後半には、1カ月2拠点のペースでオープンすることを目指している。

編集部より:初出時、9月までにオープンした都内6カ所は「100%ソールドアウト」(ヒル氏)としていましたが、正しくは「ほぼ満席」でした。タイトルとともに訂正致します。 2018年10月26日 8:30

(文・津山恵子、写真・今村拓馬)

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