Seth Wenig/AP
- シカゴ大学とライス大学の研究者は、ウーバーとリフトがサービスを開始した後、交通事故による死者数が増加したことを示した。
- ライドシェアサービスが人気を集める以前、交通事故による死者数はこの半世紀で最低を記録していた。
- 研究者らはアメリカの大都市で巻き起こっているライドシェアに関する議論に一石を投じることを望んでいる。
ウーバー(Uber)とリフト(Lyft)が人気となる前の数年間、アメリカの交通事故による死者数は減り続けていた。
配車サービスが大人気となる前の2011年、アメリカの交通事故死者数は3万2479名に減少、1949年以降で最低の数字となった(NHTSA:アメリカ運輸省道路交通安全局のデータを参照)。
だが研究者らは、ウーバーとリフトが急激に拡大した後、交通事故による死者数が再び、徐々に上昇し始めたことを発見した。
「ライドシェアの出現は、交通事故の死者数と致命的な事故数を2〜3%上昇させた」とシカゴ大学およびライス大学の研究者は発表前の草稿に記した。
ライドシェアの交通安全への影響を調べるために、研究者らはまずアメリカ運輸省道路交通安全局(NHTSA)の公式データと、ウーバーまたはリフトが特定の都市でサービスを開始した日付を照らし合わせ、次にそれらの都市における車の走行距離(VMT:vehicle miles traveled)あたりの事故率を調査した。
当然のことながら、2010年にウーバーがサンフランシスコでサービスを開始し、すぐに競合他社がそのあとに続くと、大都市の車の走行距離は劇的に増加した。ライドシェアのドライバーが乗客を降ろした後、次の乗客を乗せるために走ることがその一因となっている。
調査によると、ニューヨークでは2018年、乗客を乗せるまでの平均走行距離は2.8マイル(約4.5キロ)となった。
「アメリカの都市にライドシェアが次々と導入されることによって、交通事故による死者数は経済的に意味を持つほど増加している」と調査は記した。
「死者数の増加は自動車事故のマクロトレンドと一致している」
もちろん、調査は特定の都市における、ある期間の全交通について検討したもの。つまり、事故はライドシェアのドライバーとは無関係な可能性がある。
「我々が記した影響が短期的で一時的なものなのか、長期的なトレンドなのかを判断するのは時期尚早かもしれない」と研究者は付け加えた。
ユーバーもリフトも、この研究結果に反対している。両社とも研究結果には「大きな欠陥がある」と主張した。
「我々は多くの方法で交通安全に貢献している。そして我々は人々の安全を守ることに重大な責任を負っている」とウーバーの広報担当者はBusiness Insiderに語った。
リフトの広報担当者も「安全と道路上のあらゆる人を守ることは我々の最大の優先課題」と述べた。
エコノミストでコンサルティング企業Impresaの社長、ジョー・コートライト(Joe Cortright)氏は、ガソリン価格の低下と自動車の事故率の増加の重大な相関関係を専門誌City Observerで指摘した。
同氏は、研究は「重要で、挑戦的な問い」だが、より多くの検証が必要と述べた。
「我々の研究結果は、ライドシェアの急速な成長に対する都市の対応についての議論を再構成するかもしれない」と研究は記した。
「ライドシェアへの反対意見の多くは、既存のタクシー業界が同様の規制を求めるケースが多い。そして我々の研究結果はライドシェアがかなりの社会的コストになっていることを示した」
研究結果はウーバーやリフトによって反証されるかもしれないが、ライドシェアやギグエコノミーに関する研究は増加している。また8月、ニューヨーク市議会を通過したように、ライドシェアにさらなる規制をかけようとしている人たちを後押しする可能性もある。
ギグエコノミー:隙間時間のお小遣い稼ぎではなく主収入源として、また企業に社員として就職するのではなく、フリーランサーや事業主として生計を立てる人々のことを指す言葉。
ウーバーやリフトからの激しい反対にもかかわらず、ニューヨークではライドシェアドライバーの新規ライセンスの発行は停止された。またウーバーとリフトはドライバーに最低賃金を保証することを義務付けられた。
[原文:The meteoric rise of Uber and Lyft may have spurred a deadly outcome, according to new research]
(翻訳:一柳優心、編集:増田隆幸)