【グーグルセクハラ疑惑解雇】報道で明らかにされた幹部たちの不適切な行動と大甘処分

米グーグルの「Android」(基本ソフト、OS)の生みの親、アンディ・ルービン氏が2014年、女性社員に対する性的暴行が発覚して退社した際、グーグルが9000万ドル(約101億円)の退職金を払っていたことが分かった。ニューヨーク・タイムズ(NYT)が10月25日(米東部時間)報じた。

これを受けて、グーグルは25日、過去2年間でセクハラに関与した社員48人を解雇したことを明らかにした。そのうち13人は上級管理職以上だという。対象の社員48人には、退職金などの措置はなかったことも明らかにしている。

アンディ・ルービン

女性社員への性的暴行で退社した後も、巨額の退職金が払われていたことが発覚したアンディ・ルービン(中)。

REUTERS/Robert Galbraith

NYTの報道によると、匿名の同社幹部2人の話として、ルービン氏は不倫関係にあった女性社員が別れ話を持ち出した際、ホテルでオーラルセックスを強要したと告発された。グーグルは社内調査し、彼女の告発が認められ、共同創業者のラリー・ペイジ氏がルービン氏に辞任を求めた。

匿名の情報筋によると、グーグルはルービン氏を解雇することができたはずだが、巨額の退職金を支払ったとしている。競合他社に転職しないことが条件で、1カ月に200万ドル(約2億2000万円)が約4年間に渡り支払われたという。

ルービン氏が2014年に退社した際、ペイジ氏は声明を出し、「Androidでアンディは、真に素晴らしいもの、10億人超のハッピーなユーザーを生み出した」と讃えている。またグーグルは、ルービン氏が退社後、新たに立ち上げたベンチャーにも数百万ドルを投資している。

競合他社へ転職しないことが条件

Google

REUTERS/Arnd Wiegmann

グーグルばかりでなく、シリコンバレーのハイテク企業では、女性従業員やマイノリティの割合が少ないことが、以前から指摘されている。小学校の夏休みに通い、プログラミングなどを習う「数学スクール」から男子が圧倒的に多く、そのまま受験校や大学でも一緒になる。就職してからもその「ボーイズ・クラブ」が続き、男性が優位性を保つことも知られている。

超有名企業のグーグルで、性的暴行を隠蔽し、退社した男性らを守り続けたことが分かったことで、ほかの企業でも同様の例が告発される可能性が出てきた。

実際にNYTによると、Uberでは女性社員が同僚のエンジニアから「この会社では、女性は誰かと寝たらトップにのし上がれるんだ」と繰り返し言われたり、触られたりしたことを人事部に告発したが何の対策もなかったほか、昇進や昇給が拒まれたとして裁判を起こしている。

さらにNYTによると、グーグルは性的暴行を咎められた他の上級幹部2人に対しても、何百万ドルもの退職金を支払うか、高給の役職に留めたという。NYTは「グーグルは自らの利益を守った。手がかかり、コストもかかる裁判を避け、退社の条件として競合他社に転社しないようにした」と指摘している。

グーグルのエンジニアで職場環境についての活動家でもあるリズ・フォン−ジョーンズさんは、NYTにこう話している。

「グーグルがハラスメントを隠し、取るに足らないものと扱っていると、不正行為を告発するのは安全ではないと思う環境を作ってしまう。告発しようとする人は、告発しても何も起きないと思ってしまうか、もっと悪いことに、男性はそれで儲かって、女性は忘れられると思ってしまう」

NYTによると、ラリー・ペイジ氏は最初のエンジニアの中の1人で後にヤフーCEOに就任したマリッサ・メイヤーさんと付き合っており、グーグルの前CEOのエリック・シュミット氏は愛人を企業コンサルタントとして採用していた。共同創業者のセルゲイ・ブリン氏は、女性幹部と不倫をしていた。

権限を持った人には厳しく対処

MeToo

アメリカでは働く女性たちが#MeToo運動で立ち上がり始めている。

Getty Images/Scott Olson

このほか、男性幹部が同じ部署の女性社員との関係を明らかにした際、マネージャーが部下と付き合うのを奨励していないということを理由に、人事部が女性社員の部署を変えた例もあると報じられている。その後、女性は「自主退社」という書面にサインさせられ、この男性幹部は、現在アルファベットの上級幹部に就任しているという。

スンダー・ピチャイ最高経営責任者(CEO)は報道を受けて社内メールを発信し、セクハラへの対応について説明。「権限を持った人物による不適切な行為については近年、より厳しい姿勢で臨んでいる」としている。

「2015年からrespect@を始め、ハラスメントについての調査を透明化するリポートを毎年出している。ハラスメントを報告するのはトラウマがあるだろうから、経験あるいは目撃した不適切な行為について、公ではないチャンネルを使って報告できるようにしている。 (中略)社員は、匿名で報告することもできる」

ルービン氏は10月25日夜、ツイートし、NYTの記事には不正確な情報や退職金に関する誇張が含まれていると反論。

「特に、ホテルで女性にセックスを強要したことなど決してない。これらは前妻が離婚と親権を争った際、私の評判を落とすために仕組んだ中傷キャンペーンだ。また、匿名の幹部らが私の人事情報について発言し、事実をねじ曲げていることは大変迷惑だ」とした。(敬称略)

(文・津山恵子)

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