【爆弾テロ容疑者逮捕】熱狂的なトランプ支持者の素顔と大統領が発した異様なコメント

爆弾小包 容疑者

爆弾小包郵送事件で容疑者が逮捕されたと報じるテレビニュース。米司法省に掲げられたトランプ大統領の公式肖像にテレビ画面が重なり映る。

REUTERS/Jonathan Ernst

アメリカのオバマ前大統領やヒラリー・クリントン元国務長官ら、さらには民主党への資金提供者などに宛てて爆弾が郵送される事件が、全米を震撼させている。1発でも爆発すれば、ターゲットとなった人物、関係者だけでなく、多くの人が犠牲になる悲劇となるはずだ。

そんな中、10月26日正午前(米東部時間)に、米連邦捜査局(FBI)が、フロリダ州でシーザー・セイアク容疑者(56)を爆発物を郵送したなどの容疑で逮捕したというニュースが飛び込んできた。セイアク容疑者が乗っていたバン一面に貼られていたステッカーは、さらに恐怖心を煽るものだった。

トランプ大統領が戦車の上に立っている映像や、クリントン元国務長官・オバマ前大統領の顔や心臓部分に銃の射撃ターゲットの円が重なっている映像、「不誠実なメディア CNN SUCKS(CNNは最低だ)」というシールなどで、車体がびっしり覆われている。

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ハリウッドで捜査中のFBIが発見したバン。戦車の上に立つトランプ大統領、クリントン元国務長官の顔に併せられた照準、「CNN SUCKS(CNNは最低だ)」のシールなどが見える。

REUTERS/Geo Rodriguez

この1週間爆弾のターゲットとなった人物・団体は、以下の通り(敬称略。ただし、すべてが今回逮捕された容疑者の犯行によるものかどうかは、米東部時間10月26日夕の時点では確定していない)。

ジョージ・ソロス(10月22日、投資家)、ヒラリー・クリントン(同24日、元国務長官)、バラク・オバマ(同24日、前大統領)、マキシン・ウォーター(同24日、カリフォルニア州下院議員)、エリック・ホルダー(同24日、オバマ政権司法長官)、CNN(同24日)、ジョー・バイデン(同25日、前副大統領)、ロバート・デ・ニーロ(同25日、俳優)、カマラ・ハリス(同26日、カリフォルニア州上院議員)、コリー・ブッカー(同26日、ニュージャージー州上院議員)、ジェイムズ・クラッパー(同26日、前国家情報長官)、トム・ステイヤー(同26日、富豪)

ウォーター、ハリス、ブッカー各議員らは民主党の人気議員で、ハリス氏やブッカー氏は2020年の大統領選候補と期待されている。クラッパー氏は2016年、トランプの当選が決まった直後、通常は留任となるはずの国家情報長官を退任することを発表した。

ソロス、ステイヤー両氏は民主党の大口資金供与者で、ステイヤー氏はトランプの弾劾を求める広告に2000万ドル(約22億円)を投じている。

FBI 爆弾小包

2018年10月25日、要人らに届いた爆弾小包について、記者会見して説明するニューヨーク市警察。

Drew Angerer/Getty Images

10月26日夕(米東部時間)時点では、幸いなことに1発も爆発していないが、FBIの記者会見で、すべての爆弾がIEDと呼ばれる簡易爆弾であることが判明した。イラクやアフガニスタンでは、反米組織・反政府組織が仕掛けたIEDで、多くの米軍兵士が死亡・負傷している。

これだけの要人と関係者が危機にさらされたことは過去にはなく、間違いなく「国家危機」と言える状況だ。テレビには、2001年の米同時多発テロを経験した司法当局首脳などが次々に登場し、コメントしている。

CNNのニューヨーク支局に爆弾が入った郵便物が届き、支局が入ったビルから全員が避難した際、外で中継を続けていたアンカーのジョン・レモン氏が同僚アンカーにこう言った。

「僕は頭にきている。怒っているんだ。何かあったら、今ごろ君の死を僕が悲しんでいるかもしれないし、君が僕の死を悼んでいるかもしれなかった。同僚を失っていたかもしれないんだ」

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2018年10月24日、要人らに届いたものと同様の爆弾小包が発見された、CNNニューヨーク支局が入居するタイムワーナーセンター前。ビル内の人々が避難した後、ニューヨーク市長のビル・デブラシオ氏らが記者会見を行った。

Spencer Platt/Getty Images

CNNはトランプ大統領のメディア攻撃の最大のターゲットで、大統領の集会ではトランプ支持者が記者に「フェイク・ニュース!」と怒鳴る光景が毎度見られる。CNNワールドワイドのジェフ・ザッカー社長は、声明で警鐘を鳴らした。

「ホワイトハウスは、自分たちが続けるメディア攻撃がいかに深刻なものか、全く、全然、理解できていない。大統領と、特にホワイトハウス報道官は、自分たちの発言の影響力を理解すべきだ。それが分かっている様子は今のところまったく示していない」

サラ・サンダース大統領報道官は10月25日朝、記者団に対し、

「トランプ大統領は、爆発物を誰かに送ることには、全く責任がない。バーニー・サンダース上院議員の支持者が、野球場で共和党員を銃撃したのに責任がないのと同じにね」

と語った。

これを受けて、テレビ局MSNBCのインタビューを受けたトランプ支持者は、「爆弾事件は、バーニー・サンダースが関わっているかもしれない」と話している。

またトランプ大統領は、歴代大統領のように緊急テレビ会見を開いて、国民に対し、テロを糾弾し、統一を呼びかけることもしなかった。

トランプ大統領 爆弾小包

2018年10月26日、ホワイトハウスのイーストルームにて。爆弾小包郵送事件の容疑者逮捕の報告を受け、サムズアップ(いいね!)するトランプ大統領と奇声をあげる若手共和党員たち。

REUTERS/Cathal McNaughton

トランプ大統領はセイアク容疑者の逮捕が発表された直後、ホワイトハウス内に黒人の若手共和党員を集めて集会を開き、彼らの熱狂的な声援を受ける映像を公表した。

通常は記者会見や儀式に使われるイースト・ルームに、トランプを支持する赤いキャップをかぶり、スマートフォンでビデオを撮りながら奇声をあげる、という異様な光景が映されている。

トランプ大統領「考えてもみてくれ!私ほど攻撃されている人間はいないよ。他の誰よりも、攻撃されているよ!」

支援者「フェイク・ニュース!フェイク・ニュース!」

支援者は集会中「CNNは最低だ!」と連呼し、「ジョージ・ソロスめ!」「牢屋に入れろ!」という声も上がった。

MSNBCアンカーで、ブッシュ政権のホワイトハウス・コミュニケーション・ディレクターだったニコル・ワラスは、この映像を見てこう言った。

「私が毎日通った神聖なホワイトハウスで、こんな日に、選挙集会のようなことをして、見せつけるなんて」

トランプ大統領は集会を始めるにあたり、「アメリカで、政治的暴力が根付くことがあってはならない。大統領として、それを止めることにコミットする」と述べた。しかし、すぐにスクリプトを離れて、選挙集会のように支持者が喜ぶアドリブに移った。

(文・津山恵子)

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