リチャード・ブランソンの空中発射ロケット、ボーイング747の主翼下に搭載

ロケットブースターを吊り下げたボーイング747

ロケットブースター「ランチャーワン」を吊り下げたヴァージン・オービットの「コズミック・ガール」。空中からロケットを発射する。

Virgin Orbit; Business Insider

リチャード・ブランソンの宇宙企業、ヴァージン・オービット(Virgin Orbit)は初めて、同社の打ち上げシステム(航空機を使って、空中からロケットを発射する)の完全な姿を公開した。

航空機はボーイング747-400で「コズミック・ガール(Cosmic Girl)」、ロケットブースターは「ランチャーワン(LauncherOne)」と名付けられている。

同社はコズミック・ガールを使ってランチャーワンを可能な限りの高高度まで運んで発射、小型人工衛星を地球周回軌道に投入する

「空中打ち上げは、既存の打ち上げ基地の混雑とは無縁、コスト削減が可能で、固定の地上設備も不要。また悪天候の影響を受けにくくなる」と同社はプレスリリースに記した。

ヴァージン・オービットの打ち上げシステムを見てみよう。

ロケットの打ち上げは文字通り“天文学的”にコストがかかる。例えば、スペースXの「ファルコン9」ロケットのような、今、最も安価なロケットでも1回あたり6200万ドル(約70億円)以上かかる。

ファルコン9

ファルコン9の打ち上げ。

SpaceX via Flickr (public domain)

出典 : Business Insider

だが、より小型で低コストな人工衛星の、より高頻度な打ち上げ需要は高まっている。

747の主翼の下に吊り下げられたロケットブースター。

コズミック・ガールの左翼に吊り下げられたランチャーワン。

Virgin Orbit

出典 : Allied Market Research

リチャード・ブランソンは、小型衛星の多頻度かつ低価格の打ち上げに特化することで、そうした需要に応えようとしている。

ランチャーワン

コズミック・ガールに吊り下げられたランチャーワン。

Virgin Orbit


小型衛星の打ち上げの選択肢が増えることで、小型衛星を打ち上げる企業は、他の大型衛星の横に相乗りしなくても済むようになる。相乗りはライドシェアと呼ばれ、打ち上げの低コスト化を実現する。だが問題もある。

開発中のランチャーワン

開発中のランチャーワン、2015年。

Virgin Orbit


ライドシェアでロケットに搭載される小型衛星はメインの大型衛星の影響を受ける。つまりメインの衛星の打ち上げ企業のコントロール下に置かれてしまう。大型衛星の打ち上げは数カ月、ときには数年、遅れることがある。

ランチャーワン

Virgin Orbit


天候や打ち上げスケジュールの混雑の問題もある。

ランチャーワン

特別に改良されたコズミック・ガールに搭載されるランチャーワン。

Virgin Orbit


ヴァージン・オービットの「空中打ち上げ」というコンセプトは新しいものではない。民間企業、NASA、そして軍が数十年にわたって行っている。

ランチャーワン

コズミック・ガールに初めて搭載されたランチャーワン。

Virgin Orbit


だが素材の軽量化、最新のアビオニクス、強力なジェットエンジンとロケットエンジンをはじめ、さまざまな先進技術によって空中打ち上げはより魅力的な選択肢となった。地上からの打ち上げよりも効率的でコスト削減も可能になった。

コズミック・ガールの内部

コズミック・ガールに乗り込んだリチャード・ブランソン。ランチャーワンを吊り下げるために内部は不要なものが外され、徹底的に軽量化されている。

Virgin Orbit


ヴァージン・オービットは、カリフォルニア州ロングビーチ近くの同社施設、およびモハーベ空港&宇宙港でランチャーワンとコズミック・ガールの設計、製造、テストを行っている。

コズミック・ガールに吊り下げられたランチャーワン

Virgin Orbit


最初のロケットが完成し、統合テストフライトの準備が行われている。ランチャーワンは長さ70フィート(約21メートル)、重さ5万7000ポンド(約2万6000キロ)、乗用車25台分くらいのサイズ。

コズミック・ガールに吊り下げられたランチャーワン

Virgin Orbit

出典 : Virgin Orbit

ヴァージン・オービットのロケットは、食パン1斤くらいから冷蔵庫くらいまでの人工衛星を打ち上げることができる。「人里離れた地域にインターネット・アクセスを提供するための通信衛星から、気候変動と戦うための最新の天候追跡システムまで、あらゆるものを打ち上げる」と同社は述べた。

ヴァージン・オービットのコズミック・ガール

Virgin Orbit

出典 : Virgin Orbit

同社は現地時間10月25日、ロングビーチにある同社施設においてランチャーワンをコズミック・ガールの左翼の下のパイロンに取り付けた。作業時間は24時間かからなかった。人工衛星などの搭載を含め、ロケットの打ち上げ準備には通常、数日から数週間かかる。

コズミック・ガールに吊り下げられたランチャーワン

Virgin Orbit


「ロケットを運び、航空機に吊り下げ、システムに統合してすべての動作確認を行うまでを、初めてわずか1日で完了できたという事実に私はまだ驚いている」とヴァージン・オービットのCEO、ダン・ハート(Dan Hart)はプレスリリースに記した。

ヴァージン・オービットのスタッフ。

300人を超えるヴァージン・オービットの従業員。

Virgin Orbit

出典 : Washington Post

次のステップは、数回の「キャプティブ・キャリー」フライトの実施、つまりランチャーワンを主翼に吊り下げてコズミック・ガールを離陸、飛行させること。

コズミック・ガールに吊り下げられたランチャーワン

Virgin Orbit


その後、切り離し機構のチェックのために、ランチャーワンの投下をテストする。無事に済めば、いよいよ宇宙への初飛行となる。

ランチャーワンとコズミック・ガール

Virgin Orbit


「当社はすでに数百万ドルの打ち上げ契約を獲得している。顧客はNASA、国防総省からスタートアップ企業まで幅広い」と同社はプレスリリースに記した。

コズミック・ガールとランチャーワン

Virgin Orbit



[原文:Sir Richard Branson just strapped a giant rocket to a 747 jet airplane with his space company Virgin Orbit

(翻訳、編集:増田隆幸)

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