ずらりと並ぶコートを、手作業でチェックする。
Business Insider/Mary Hanbury
- ZARAとその持株会社インディテックスは、スペイン北西部の海沿いの小さな町アルテイショにグローバル本社を構える。インディテックスは世界最大のファッション小売業とされ、2017年の売上高は300億ドル(約3兆3000億円)を超える。
- アルテイショではさまざまな部署で5000人以上の従業員が働いている。また、10の工場と世界96カ国に製品を発送する同社最大の配送センターもある。
- 我々は、ZARAの競争力の源泉とも言える工場と配送センターを見学した。
ZARAは世界96カ国に2238店舗を展開。各店舗は週2回、製品を受け取る。
同社はスペイン各地に4つの配送センターを抱え、製品はそのいずれかから発送される。
同社最大の配送センターは、スペイン北部の小さな町アルテイショ(Arteixo)にあるZARA本社の中にある。
この地域は創業者アマンシオ・オルテガ(Amancio Ortega)氏の故郷、ZARAの1号店もこの地にオープンした。
現在、広大な本社では5000人以上の従業員が、デザイン、撮影、試着から製造および世界各地への発送までさまざまな業務に携わっている。
見てみよう。
まずはZARA本社の中核からスタート。ここでは300人のデザインチームが、トレンド予測の本に目を通し、次のコレクションに向けてのイメージボードを作成している。
Jesus Sancho/AP Images
デザインが完成すると、数メートル先にいるパタンナーチームに送られ、最初の試作品が作られる。
試作品は必要な場合は、1日で作られる。
Jesus Sancho/AP Images
完成した試作品はモデルが試着。モデルもフルタイムで働くインディテックスの社員。
男性用、女性用のさまざまな製品を試着するために約10人のモデルがいると同社広報担当者は語った。
試作品にOKが出ると、デジタル化された型紙が工場の1つに送られる。
インディテックス本社。
Jesus Sancho/AP Images
86万平方フィート(約8万平方メートル)の広大な敷地の中には10の工場があり、そこでZARAのアイテムの中でも最も最先端のアイテム、つまり、より注目を集めたいアイテムが製造されていると広報担当者は語った。
これらの工場は配送センターと秘密の地下トンネルで結ばれており、でき上がったアイテムは電動のハンギングレールで運ばれる。
世界各地にある外部の工場で作られるアイテムもある。
だが外部で製造されたアイテムも、いずれかの配送センターに戻され、そこから店舗に発送される。
我々が訪問した工場は女性用アイテムのみを作っていた。工程の一番最初は型紙のセット。
モニターに映し出された色は、アイテムを構成するさまざまなパーツを表している。
Inditex
インディテックスの広報担当者は、この工程をテトリスに例えた。ここでのゲームは、できるだけ多くのパーツを生地にはめ込むこと。生地を最も経済的に使うためだ。
型紙はプリンターに送られ、原寸大に印刷される。各パーツには服のどの部分かという情報も記載されている。
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大きな裁断機に生地がセットされ、その上に型紙が置かれる。
Courtesy of Inditex
生地と型紙はプラスチックシートで固定され、裁断される。
Courtesy of Inditex
薄手の生地なら、一度に200枚裁断できる。
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裁断された生地は型紙が重ねられたまま箱に詰められる。工場の従業員が、これらの生地を次にどこに送るのか、あるいはどの部分を作っているのかが分かるよう、型紙には詳細が記載されている。
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外部工場に送られる生地。試作品も一緒に送るので、外部工場は正確に製造することができる。
外部工場では、タグ、ファスナー、ボタンなどの細かいパーツも取り付けられる。
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インディテックスの広報担当者は、ZARAはあらゆる種類の工程を外注していると語った。
完成したら、ZARA本社に返送される。
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高価なアイテムや重要アイテムは1つ1つ品質検査が行われる。
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大きなプレスマシンでシワを伸ばす。
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袖には熱風を吹き込んで縫い目を伸ばし、形を整える。
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1つ1つアイロンがけ。
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1点1点、チェック。
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不完全な縫い目がないか確認。合格したアイテムにはセキュリティタグを取り付ける。
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少しでも不具合が見つかったアイテムは1カ所に集められ、
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どんな小さなミスもミシンで修正する。
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次に我々は配送センターに向かった。スペインにある4つのセンターの中で最大規模。ここから2238店舗に発送する。
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外部工場で製造された、“最先端”アイテムではない定番アイテムは、直接、配送センターに送られる。
ZARAはこれらのアイテムの品質管理を外部工場に任せているが、抜き取り検査も行っている。
「数百万点あるので、1つ1つチェックすることは不可能」と広報担当者は語った。
工場から届いた箱はトラックから下ろされと、すぐにセンサーでチェックされる。
Courtesy of Inditex
センサーは工程の中の非常に重要なパート。1つ1つのアイテムに取り付けられたRFID(Radio-Frequency Identification)タグを読み取る。
センサーは箱の中のアイテムの数量を読み取り、1つ1つのセキュリティタグに識別情報を付ける。これによりアイテムが配送センターに届いた瞬間から、ZARAの店舗で購入される瞬間まで追跡することが可能になる。
RFIDは同社の最新のイノベーションの1つ。在庫を正確、かつスムーズに確認できる。
現在、ZARAのすべてのアイテムにRFIDタグが取り付けられている。RFIDタグは、2020年までにインディテックスの他のブランドも使用する予定。
箱はベルトコンベアーで運ばれ、種類ごとに保管される。発送されるまでに数日保管されることもある。
Business Insider/Mary Hanbury
発送の準備が整ったアイテムは、箱から取り出され、店舗ごとの箱に入れられる。
これらの箱には、さまざまなアイテムが梱包されている。
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コンピューターシステムが、各店舗ごとに発送するアイテムの数を正確に従業員に伝える。
数は、各店舗マネージャーからの人気アイテムについてのフィードバックと過去の販売データに基づいて、事前に決定される。
店舗マネージャーは日頃から、デザインチーム、営業チームと情報を交換している。
店舗ごとのアイテムが詰められた箱は、別のベルトコンベアーで発送工程へ送られる。
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ヨーロッパには鉄道で、他の地域へは飛行機で送られる。
我々は、フランスのアヴィニョン、イギリスのノーサンプトン、スペインのセビリアなど、ヨーロッパ各地に向けてZARAのアイテムを運ぶ列車を目撃した。
配送センターの一角では、検査に合格したアイテムが発送を待っていた。
これらのアイテムは大きな箱の中のプラスチックケースに入れられて発送される。たたまれていないので、店舗に送られると、すぐにディスプレイできる。
Courtesy of Inditex
ヨーロッパなら、最も遠い場所でも36時間以内に届けられる。世界各地へは48時間以内。
(翻訳:仲田文子、編集:増田隆幸)