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- 中国東部の山東省済南市では、責任ある犬の飼い主をランク付けする「信用スコア・システム」が導入されている。
- 2017年に導入されたこのシステムは、犬の飼い主に「免許」とポイントを交付し、リードなしで犬を散歩させたり、公共の場で騒ぎを起こすなどすると、減点される。
- 犬にリードをつけたり、そのふんを片付けたりする飼い主が増えていることから、システムの導入には効果があるようだ。
- ここ数年、中国ではいくつものソーシャル・ランキング・システムが導入されている。上海では人の正直さを評価するアプリが導入されたり、自転車のシェア・プラットフォームが良い行動をした市民に見返りを与えるなどしている。
- 中国では2020年までに、全国民の行動を強制的に監視する社会信用システムの導入を目指している。
犬にはリードを忘れずに。犬を吠えさせないように。ふんの後始末をするように —— 。
これらは、2017年から中国東部の山東省済南市でルール化されたものだ。Sixth Toneによると、同市では「犬の飼育に関する信用スコア・システム」を導入し、飼い主の責任を明確化している。
ここ数年、中国ではいくつものソーシャル・ランキング・システムが導入されている。上海では人の正直さを評価するアプリが導入されたり、自転車のシェア・プラットフォームが良い行動をした市民に見返りを与えるなどしている。
中でも注目すべきは、中国が国レベルの強制的なランキング・システムを導入しようとしている、ということだ。国民の行動を監視し、その「ソーシャル・クレジット(社会信用)」に基づき、彼らをランク付けする。プログラムは2020年までに完全運用される見込みで、パイロット・プログラムはすでに複数の都市で始まっている。
その仕組みとは?
上海の通勤風景(2008年)。
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済南市の犬の信用システムは、中国国内で広まっている他のランキングシステムと似ていて、人々の行動を改善しようとするものだ。
Sixth Toneによると、2017年1月にスタートしたこのプログラムは、犬の飼い主に登録を義務付け、免許とポイント(12点)を交付する。
首輪やリードなしで犬を散歩させたり、ふんの後始末をしなかったり、近所迷惑になるなどすると、減点される。一方、地元のシェルターでボランティアをするなど、良い行いをするとポイントが増える。
アメとムチ
里親を探す、引退した爆発物探知犬(上海、2018年9月)。
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このポイント・システムは機能しているようだ。
Sixth Toneによると、当局は8月、犬の飼い主の80%がリードを使っていると語った。同月、チャイナデイリーは、犬に噛まれたもしくは吠えられたという苦情が65%減ったと報じた。
このシステムを導入してから、1400人以上の犬の飼い主が罰金を科されたもしくはポイントを失ったという。
全ポイントを失った飼い主は犬を没収され、ペットを飼うために必要な規則に関するテストに合格しなければならない。
ある飼い主はSixth Toneの取材に対し、犬の登録時にはワクチンを接種し、マイクロチップを埋め込み、写真を撮られたという。その後、QRコード付きのタグを受け取ったという。このQRコードから、警察は飼い犬の犬種、年齢、ワクチン接種の履歴、飼い主の個人情報、免許のポイント数を知ることができる。
年間登録料に約50ドル(約5600円)を追加すれば、タグを使って犬の位置情報も分かるようになる。
河南省鄭州市では、警察のロボットが駅をパトロールし、利用者の顔を認識し、大気汚染の状況をモニタリングしている(2017年2月)。
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また、この新たなシステムは、警察による未登録犬の回収にも役立っている。中国の法制日報は、この信用システムを賞賛し、国中で導入すべきだと呼びかけた。
中国では、さらに厳しい規制をペットの飼い主に課している都市もある。山東省青島市では、犬の飼育は1人1匹と定められていて、特定の犬種の繁殖を禁じている。
中国政府もまた、その国民を監視し、良い行動を奨励する幅広い手段を導入している。
同国では1億7000万個以上の防犯カメラと人工知能(AI)や顔認証技術を組み合わせて、その広い国土を監視し、14億とも言われる国民の行動を逐一チェックしようとしている。
(翻訳、編集:山口佳美)