最新調査によると、大半のアメリカ人は、トランプ大統領が白人至上主義者たちを助長していると考えている。
Andrew Harnik/AP
- アメリカの無党派の世論調査会社パブリック・レリジョン・リサーチ・インスティテュート(PRRI)が公表した最新調査によると、多くのアメリカ人が、トランプ大統領が白人至上主義者を助長していると考えている。
- トランプ大統領は、白人至上主義者のレトリックを真似しているとして批判されてきた。
- 複数の研究から、アメリカではヘイトクライムが増加していることが分かっていて、その一部はトランプ大統領のツイートと関連しているという。
アメリカの無党派の世論調査会社パブリック・レリジョン・リサーチ・インスティテュート(PRRI)が30日(現地時間)に公表した最新調査の結果、多くのアメリカ人が、トランプ大統領がその決断や行動を通じて、「白人至上主義のグループを助長」してきたと考えていることが分かった。
9月17日~10月1日、アメリカ50州に住む2509人の成人を対象にオンライン及び電話で行われたこの調査では、回答者の54%がトランプ大統領の決断や行動が白人至上主義グループを助長していると答えた。そして69%が、トランプ大統領が「大統領の尊厳を傷つけた」と回答した。
調査は、ペンシルベニア州ピッツバーグのシナゴーグ(ユダヤ教会堂)での銃撃事件や、トランプ大統領に批判的な人々に爆発物が送り付けられる事件が発生する前に行われたものだが、国民の多くがトランプ大統領の言動がヘイトを助長していると考えていたということだ。
「結果に驚きはない」
Chris Jones/Business Insider
南部貧困法律センターのシニア・リサーチ・アナリスト、 キーガン・ハンクス(Keegan Hankes)氏は、この調査結果に驚きはないと言う。
「わたしたちが見てきたホワイトハウス、中でもトランプ大統領のツイッター・アカウントのレトリックを考えれば、結果に驚きはありません」
ハンクス氏によると、トランプ大統領のレトリックは白人至上主義者たちが使うレトリックに似ていると言う。
「トランプ大統領が移民や難民、イスラム教徒といった弱者を悪者扱いしようとするのをわたしたちは見てきました」と、ハンクス氏は言う。「それこそまさに、白人至上主義のコミュニティーから聞こえてくるレトリックです」
最近では、ピッツバーグの銃撃事件のロバート・バウアーズ(Robert Bowers)容疑者がソーシャルメディア「Gab」に投稿していた反ユダヤ的な主張を助長したとして、トランプ大統領が批判されている。
銃撃事件の直前、バウアーズ容疑者はユダヤ系の難民支援団体「HIAS」について「HIASは、我々の同胞を殺す侵入者の手引きをしている。同胞が殺りくされるのを黙って見ていられない。突っ込むぞ」などと書き、攻撃していた。バウアーズ容疑者が書いたり、シェアした他の投稿は、中米からアメリカを目指している移民キャラバンは一部ユダヤ人の策略だとする陰謀論に容疑者が動機づけられていたことを示唆している。
トランプ大統領とその政権はここ数週間、移民キャラバンに対して強硬姿勢を見せていて、ペンス副大統領もトランプ大統領自身も、キャラバンの中には「中東の人間」や「テロリスト」が混ざっていると発言している。ピッツバーグの銃撃事件の後、トランプ大統領はキャラバンを「侵入者」と呼び、バウアーズ容疑者とまったく同じレトリックをそのツイートで使用した。
この国の南部国境を目指すキャラバンの中には、多くのギャングや悪い連中が混ざっている。頼むから戻ってくれ。法的な手続きを踏まない限り、アメリカに入国することは認められない。 これは我々の国に対する侵略であり、我々の軍隊が待ち受けている!
トランプ大統領のレトリックは、ネオナチと白人至上主義者たちが2017年にバージニア州シャーロッツビルで開催した集会「ユナイト・ザ・ライト・ラリー(Unite the Right rally)」に対する反応とも同じだ(集会に反対する人々との衝突で、1人が命を落とした)。複数の動画から、集会の参加者たちが「ジーク・ハイル」「ハイル・トランプ」と唱えていたことは間違いないが、トランプ大統領は「どちらの側にも、とても良い人たちがいた」と強調した。
ハンクス氏は、最近起きたピッツバーグの銃撃事件と一連の爆発物の脅威は「最も力のある政府の中心からこうした類のレトリックが出てくることの危険性を表している」と指摘し、トランプ大統領は「白人至上主義グループの主張を正統化している」と述べた。
そして、ハンクス氏の見方はただの憶測ではないようだ。Center for the Study of Hate and Extremismのレポートによると、アメリカの10の大都市では2017年、ヘイトクライムの発生件数が12%増えた。また、Social Science Research Networkの報告では、イスラム教徒に関するトランプ大統領の1週間あたりのツイート件数と、反イスラムのヘイトクライムの発生件数には統計的な相関があることも分かった。
ハンクス氏は言う。
「弱者を悪者扱いするトランプ大統領のレトリックは、何の助けにもなりません」
「レトリックは結果を伴うもの。時にそれは、土曜日(編集注:ピッツバーグの銃撃事件のこと)に見たような暴力的な結果をもたらします。こうした意見が政府から出てくることで、彼らは暴力をいとわないこともある人種差別主義者や偏狭な考えを持つ人間、過激思想を持つ人間を正統化しているのです。これは危険な組み合わせです」
(翻訳、編集:山口佳美)