大和ハウスグループが「キャッシュレス化の起爆剤」端末を市場投入。QRコード決済競争に変化の空気

大和ハウス工業 決済端末

11月1日に開催された「PAYGATE Station」記者発表会にて。右奥から5番目が大和ハウスグループのロイヤルゲート・梅村圭司社長。

撮影:川村力

この(決済ビジネス)業界、完全にカニバらないということはもうありえない

11月1日、大和ハウス工業グループのロイヤルゲートが新型のモバイル決済端末「PAYGATE Station」を発表した記者会見。同社のパートナー企業として同席したGMOフィナンシャルゲート社長の杉山憲太郎氏は、記者の質問に答えてそう口にした。

ロイヤルゲートが発表した新端末は、磁気やIC、QR・バーコード、非接触型など、さまざまな決済方式に1台で対応できるもの。Androidベースで開発され、カード会員情報を読み取った直後にデータを暗号化して転送する高度なセキュリティ(SRED機能)を実装、スタイリッシュかつ安価な端末とあって、会見には決済市場でシェア拡大を狙う企業のトップが顔をそろえた。

大和ハウス工業

決済プラットフォームとしての「PAYGATE Station」の関係図。

出典:ロイヤルゲート新商品発表会資料より

実は、2カ月前の8月30日、りそな銀行も(仕様や適性は異なるものの)同じように多様な決済方式に1台で対応できる端末を、11月から決済サポートサービスの加盟店に無償提供することを発表していた。

決済端末の提供や情報処理センターの運営を手がけるGMOフィナンシャルゲートは、今回発表されたロイヤルゲートの新端末の拡販だけでなく、りそな銀行の新サービスにも業務提携パートナーとして名を連ねており、それとの関係性をたずねたところ返ってきたのが、冒頭の杉山氏の言葉だ。

GMOフィナンシャルゲート

GMOフィナンシャルゲートは、同社が店舗に提供している端末ラインナップに加え、キャッシュレス化を推進するために拡販で協業することを明らかにした

出典:ロイヤルゲート新商品発表会資料より

さまざまな利害関係を持つプレーヤーが入り交じり、いつどこででもカニバり(共食いになり)かねない決済市場だが、りそな銀行の端末については、加盟店のPOS(販売時点情報管理)システムと連動させて使うケースが主に想定されているため、ロイヤルゲートの端末を拡販する際にバッティングする可能性は低い、というのが杉山氏の見解だった。

LINE、楽天、ヤフーが「そろい踏み」

記者会見にはそうそうたる面子が参加し、パートナー企業としてショートスピーチを行った。

LINE Payからは取締役COOの長福久弘氏が参加。中小規模店舗には店舗用アプリや据え付け端末を提供し、2021年7月まで決済手数料ゼロのキャンペーンを行い、加盟店を拡大していることを明らかにした上で、ロイヤルゲートの端末を「中型店舗向けの有力な選択肢」として期待していると述べた。

LINE

LINEが発表したロイヤルゲート決済端末の位置づけ。ロイヤルゲートによると、端末費は1台5万円ほどだが、ソリューションとしての提供に際して柔軟な価格設定をしていくという。

出典:ロイヤルゲート新商品発表会資料より

楽天からは楽天ペイ事業部シニアマネージャーの中村龍信氏が登壇した。楽天カードや楽天ポイントとの併用によるポイント加算がエンドユーザーや加盟店に大きなメリットをもたらすことを強調。ロイヤルゲート端末が普及すれば、QRコード決済の利用者シェアが国内首位(15.2%)の楽天ペイを使える機会が広がるとの期待感を示した。

楽天ペイ

楽天は「楽天ペイ」アプリを通じたQR決済利用者の多さをアピールした。

出典:ロイヤルゲート新商品発表会資料より

前日(10月31日)に決算発表会で「業界シェア1位を目指す」(川邊健太郎CEO)ことを明らかにしたヤフー出資のPayPayからは、副社長執行役員COOの馬場一氏が参加。「大和ハウス工業の取引先など、テナント企業とのリレーションに期待したい」と、具体的なターゲットに言及した。「現場の意気込みとして、加盟店30万店、あるいはそれ以上を目指している」(ヤフー執行役員の小澤隆生氏)PayPayにとって、端末提供事業者がいかに大きな存在であるかが感じられた。

ヤフー PayPay

ヤフーとソフトバンクの合弁会社である「PayPay」はQRコード決済サービスをローンチしたばかり。大和ハウス工業グループとの協業に直接的な期待を表明した。

出典:ロイヤルゲート新商品発表会資料より

ほかに、NFC(近距離無線通信)技術を使うタッチ決済機能をクレジットカードに実装したビザ・ワールドワイド・ジャパン(VISA)。2018年4月からd払いアプリにQRコード決済機能を付加し、ダウンロード数が半年で100万件を突破したNTTドコモ。利用可能店舗が20万店、9000万人近い会員を抱え、アップルやLINEと連携してカード不要のポイント管理・使用が可能となったPonta(運営は三菱商事グループのロイヤリティマーケティング)からも、幹部らが登壇した。

「オールインワン型」普及で何が起きるか

さまざまな決済方式をサービスの一環として提供する事業者が勢ぞろいして感じたのは、「QRコード決済を主戦場とするキャッシュレス化競争」の終えんが近づいているのでは、ということだ。

2015年時点で18.4%と、日本のキャッシュレス決済比率は先進諸国に比較すればまだまだ低い中で、QRコード決済の未来がどうこう言う段階ではない、という見方はもっともだ。QRコード決済を使える店舗の開拓は緒についたばかりで、これからも続くし、足もとでは加速するだろう。

しかし、今回のロイヤルゲート新端末の発表に市場の主要プレーヤーが集結したように、これから店舗に置かれる決済端末は、クレジット決済だけ、QR・バーコード決済だけ、あるいは非接触型だけに対応するものでなく、あらゆる決済方法に対応するものが主流になるのではないか。店舗側の物理的制限、(店員向け)教育コストやオペレーションコスト、エンドユーザーの便利を第一に考えるなら、当然その方向に向かうべきだろう。

オールインワン型の決済端末が普及するなら、決済方式でQRコードを最優先する理由はなくなる。10月31日に行われたヤフーの決算発表の席で、前出の小澤隆生執行役員は次のように発言している。

「私たちから見て、何と言っても(交通系ICカードの)Suicaが楽であるという現実がある。ユーザーのアンケートを見ても、私自身の使用体験からしてもそう言える。だから、現在は非接触式やその先にある新たな決済方式に向かっていく、いわば過渡期だと考えている」

ロイヤルゲートは、新端末の販売目標を「3年間で10万台。パートナー企業との協業によってそれ以上を見込んでいる」(梅村圭司社長)としており、具体的に、大和ハウスグループの大和リースが開発中の大型商業施設(2019年6月以降順次開業)に入居するテナントへの導入を予定している。同じグループの大和ハウスフィナンシャルは、テナントとの契約や精算を代行するオプションサービスも準備しているという。

同様の端末普及を狙うりそなグループやその他の事業者による設置も含めれば、それなりの勢いになるだろう。

現時点では、QRコード決済の普及のためにオールインワン型端末に期待している事業者が多いようだが、結果的にQRコード以外の決済方式を利する可能性は十分にある。「非接触型はQRコードの次(に普及する)」といった発想は、数年のうちに過去のものになるかもしれない。

決済市場には今以上にカニバりそうな雰囲気が漂っている、そんなことを感じた記者会見だった。

(取材・文:川村力)

編集部より:初出時、「年度末までに30万店舗の加盟店開拓を掲げる」との記述がありましたが、「『現場の意気込みとしては、加盟店30万店、あるいはそれ以上を目指している』(ヤフー執行役員の小澤隆生氏)」と改めました。 2018年11月2日 6:30

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