2018年11月2日、実証プラントの竣工式にて、ユーグレナなどが日本をバイオ燃料先進国にすることを目指す『GREEN OIL JAPAN』を宣言した。
健康食品や化粧品など、さまざまな形で利用されている藻の一種であるミドリムシ。
そのミドリムシを使った製品の研究開発や販売を手がけるユーグレナが取り組んできた、「ミドリムシで作った燃料で飛行機を飛ばす」夢がいよいよ現実味を帯びてきた。
ユーグレナは千代田化工建設、伊藤忠エネクス、いすゞ自動車、ANAホールディングス、横浜市などの協力のもと、日本初の国産バイオジェット・ディーゼル燃料の実用化に向けて実証プラント建設を同市内に完成させ、11月2日、竣工式を開いた。
実証プラントは2019年春から本格稼働し、2020年までにここで製造した国産バイオジェット燃料での有償飛行実現を目指す。
世界的に遅れる日本のバイオジェット燃料導入
バイオジェット燃料を使った飛行機の運航状況をリアルタイムで見ると、常に数十機は飛んでいることがわかる(日本時間11月2日9時)。
https://planefinder.net/custom/icao-fuel.php
「日本はバイオ燃料において後進国」
ユーグレナの出雲充社長がそう語るように、日本では実現していないバイオ燃料による有償フライト。国際民間航空機関(ICAO)によると、海外では2011年以降、インドや中国などアジア諸国を含む20カ国で、合計約15万回の有償フライトが実施されているという。
今後はさらなる市場の急拡大も見込まれる。
富士経済「日本企業の活躍が期待される航空宇宙ビジネスの世界市場を調査」(2014年2月)によると、航空燃料市場では、2013年時点で98%を化石由来のジェット燃料が占め、バイオジェット燃料が占める割合は2%。2030年には16%までシェアが拡大すると予想される。
航空分野におけるバイオ燃料市場は2030年までに急速に拡大することが予想されている。
出典:富士経済「日本企業の活躍が期待される航空宇宙ビジネスの世界市場を調査」(2014年2月)よりBusiness Insider Japanがグラフ作成。
その背景にあるのは、地球温暖化に対する世界的な危機感だ。
2015年9月の国連サミットで採択されたSDGs(持続可能な開発目標)の一つに「気候変動に具体的な対策を」と掲げられているだけではなく、日本も加盟する国際民間航空機関(ICAO)も2016年の総会で、2020年以降、地球温暖化につながるCO2排出量を増やさないことが加盟国間で合意されている。
2021年以降、もし規制値以上を排出すれば、航空会社に排出権購入を義務化する厳しい決まりだ。
日本ではバイオジェット燃料による有償フライトが実現しておらず、航空会社が排出権を購入すれば、そのコストは航空チケット代に反映される可能性は高い。
そうした流れの中で期待されているのが、石油などの化石由来の燃料に比べ、CO2排出量を抑えるバイオ燃料である。
ANAホールディングスのコーポレートコミュニケーション室・CSR推進部の宮田千夏子部長は、「B787などの低燃費機材の積極的な導入で、2017年度は2005年度比でCO2排出量を23%削減したが、運航量が年々増えていく中で、さらなる削減を実現するためには、バイオジェット燃料の使用は不可欠」だと期待を寄せる。
2025年には2000倍の商業プラント完成を目指す
横浜市・鶴見区に完成したバイオジェット・ディーゼル燃料の実証プラント。
ユーグレナは今回完成した実証プラントで、2019年夏から車両向けの次世代バイオディーゼル燃料の供給を始め、2020年には陸・海・空の移動体にバイオ燃料を導入することを目指す。2025年には量産化のための商業プラントを完成させるのが目標だ。
その規模は、年間125kLを製造予定の実証プラントの2000倍、年間25万kLだ。
日本が掲げる自動車用バイオ燃料の導入目標量は2022年時点で83万kL。ユーグレナは海・空の移動体向けも合わせて、その3分の1程度のバイオ燃料提供を目指す。
ユーグレナと協力企業、横浜市などは、実証プラントの竣工式の場で、実証プラントを起点に、日本をバイオ燃料先進国にすることを目指し、「GREEN OIL JAPAN」を宣言。海の移動体を持つパートナーや、バイオ燃料の材料になる廃食油を提供してもらう企業などを募集する。
2005年に3人で立ち上げ、創業からわずか十数年の大学発ベンチャーであるユーグレナ。果たして日本のエネルギー環境を変えられるのか。引き続き、注目していきたい。
(文、写真・室橋祐貴)