2018年のハイエンド端末「Pixel 3 XL」(写真右)と「iPhone XS Max」(写真左)はどちらもカメラ機能がウリ。プロカメラマンの評価はいかに。
11月1日に発売されたグーグルの高性能スマートフォン「Pixel 3 XL」。発売前からカメラ性能が注目されていたが、その実力はどれほどなのか。アップルの「iPhone XS Max」と撮り比べてチェックした。
Pixel 3 XLとiPhone XS Maxの主なカメラ性能は、以下にまとめた。なお、今回検証はPixel 3 XLで行ったが、同日発売で画面が小さめの「Pixel 3」とはカメラスペックは基本的に共通だ。
- 解像度は共に約1200万画素(4032×3024ドット)。
- iPhone XS Maxのレンズは広角26mm相当F1.8+望遠52mm相当F2.4のダブルレンズの構成
- Pixel 3 XLのレンズは広角27mm相当F1.8のシングル(焦点距離はExif記載値)
なお、今回の検証は発売前のPixel 3 XLで行ったため、夜間撮影機能「Night Sight」など一部機能が未実装であることはご容赦いただきたい。
風景撮影:Pixelの方がシャープな印象に仕上がる
まずは広角での画質を比較してみよう。焦点距離では1mm相当しか変わらないが、それでも比べてみるとiPhone XS Maxのほうが画角(写る範囲)が広いのがわかる。
画像を等倍まで拡大して見てみると、Pixel 3XLのほうがわずかにシャープが強く感じる。しかし厳密に見比べなければ気になるほどの差ではなく、両機とも細部まで精細に再現されている。
画像の一部を拡大。Pixel 3 XL(写真左)のほうが、iPhone XS Max(写真右)よりわずかにシャープに感じる。
風景撮影:発色はPixelがクリアーな印象を受ける
Pixel 3 XLはホワイトバランスを調整できる。
発色はiPhone XS Maxが暖色の傾向で、彩度を誇張しすぎない自然な色合い。一方Pixel 3XLはヌケが良いクリアな発色で、コントラストも高く青や赤といった原色が鮮やかに見える。
なお、色調整(ホワイトバランス)は、Pixel 3XLは自動以外に晴れや蛍光灯など、光源に合わせて手動で変えられる。iPhone XS Maxは自動のみだが、ビビッドやドラマチックといったフィルター効果の中で暖色や寒色にリアルタイムで反映可能だ。
風景撮影:コントラスト(明暗差)はPixel 3 XLの方が強め
階調再現はPixel 3 XLのほうがコントラストが強めで、明暗差の大きい状況では若干露出が暗めになる傾向があり、暗部がつぶれがちになることもある。両機ともHDR機能を搭載しているが、Pixel 3 XLのほうが効果が控えめのように感じられる。
ただし、状況によってはiPhone XS MaxのHDR効果(Smart HDR)が強く、コントラスト不足に感じることもある。
ズーム撮影:iPhoneの方がハードウェア的に有利か
iPhone XS Maxは望遠レンズを搭載し、さらにデジタルズームで光学10倍相当の撮影が可能。Pixel 3 XLはデジタルズームのみで、倍率は公表されていないが実際に撮影してみると光学7倍相当程度と推測される。
画質面ではやはり望遠レンズを搭載しているiPhone XS Maxが有利で、拡大して比べてしまうと差はある。とはいえ、Pixel 3 XLデジタルズームはなかなか優秀で、横に並べて比較しなければ、十分実用できるレベルだ。
夜景撮影:iPhoneの方が明るめ
夜景撮影での画質は、繁華街のように比較的明るい場所では両機ともノイズや画質劣化は目立たない。傾向としてはiPhone XS MaxのほうがISO感度が高めに設定され露出もやや明るめに写るようだ。
そのためか、Pixel 3 XLよりノイズ処理が強めに感じ、若干ディテールが失われている。逆にPixel 3 XLはシャープネスが強く、クッキリとしているがわずかにノイズ感がある。とはいえ等倍に拡大して感じるレベルなので、通常は気にすることはないだろう。
繰り返しになるが、今回は夜間撮影機能「Night Sight」実装前の結果になるので、発売後の端末では結果が大きく異なる可能性がある。
背景ボケ撮影:ボケの強さはiPhone、境界処理はPixelに軍配
両機とも最近のスマホカメラのトレンドともいえる背景ボケ機能も搭載。機能名はポートレートモードだが、人物以外の被写体でも効果を楽しめる。撮影後にボケの度合いやピント位置の微調整といった設定方法もほとんど同じだ。
ボケ量を最大値にして比較するとiPhone XS Maxのほうがボケの効果が大きい。
ただし、ピントを合わせた被写体の輪郭部に、にじんだようなボケが発生してしまうことがあった。その点、Pixel 3 XLはボケ量こそ控えめだが、被写体と背景が違和感なく分別され自然に写っている。
ボケは画像処理によるものなので、ボケの度合いや輪郭の認識などは今度ファームアップなどで向上する可能性もあり、両機ともに今後の改善にも期待したい。
近接撮影:最短撮影距離はiPhoneが少し短い
料理のように被写体に近づいて撮影してみると、iPhone XS Maxのほうが若干最短撮影距離が短いのがわかる。
ただし、Pixel 3 XLは近づきすぎてピントが合わないときに、画面の警告がでるのが親切だ。作例の料理は電球色の光源で撮影したが、仕上がりの傾向としてはiPhone XS Maxのほうが発色が暖色で露出は明るめ。Pixel 3 XLは色乗りがよい発色でコントラストが高いメリハリのある描写になった。
利便性で言えばPixelが上、ただしカメラ面の優劣は思ったより少ない
カメラとしての画質や色合いは甲乙つけがたい。
細かい話だが、操作面ではiPhone XS Maxのシャッター音が相変わらず大きいのが気になる。露出補正は補正値が数値で見えるPixel 3 XLのほうが、便利に感じた。
カメラ画質で前評判の高いPixel 3シリーズだが、こうして比べてみると、画質の違いはあるものの優劣というよりは傾向の違いといったところ。
その点を踏まえ自分の好みの機種を選ぶ参考にしてもらいたい。
(文、撮影・岡田清孝)