Amazon Prime Video、日本上陸から3年で捉えたテレビではできないことの強み

ティム・レスリー氏

Amazon Prime Video 国際部バイス・プレジデント ティム・レスリー氏。

2015年9月に日本でサービスを開始した「Amazon Prime Video」が3周年を迎えた。Amazon Prime Videoは、年額3900円(月額400円)のプライム会員になれば、対象の映画やテレビ番組が無料で視聴できるというサービスだ。

この3年間で、市場のニーズを捉えることはできたのか?今後、どのように拡大を図っていくのか?来日中のAmazon Prime Video 国際部バイス・プレジデントのティム・レスリー氏に話を聞いた。

オリジナル作品数はアメリカの次に多い

ティム・レスリー氏

Amazon Prime Video 日本オリジナル作品の数はアメリカに次いで多く、35作品以上。

顧客の声を聞き、世界中の顧客が何に魅力を感じるか、知ることです

Amazon Prime Videoのコンテンツ戦略について尋ねると、アマゾンの企業文化として知られる、カスタマー・オブセッション(顧客を第一に考えること)の原則が返ってきた。

その言葉通り、Amazon Prime Videoは日本市場で、オリジナル作品の制作に力を入れている。国内でのオリジナル作品(Prime Originals)の数は35作品以上と、アメリカに次いで2番目に多い。

日本で人気のジャンルは、アニメとバラエティ番組だ。アマゾンが視聴顧客数に基づいて集計した「Prime Video - Prime会員特典総合ランキング」の2018年上半期のデータによれば、トップ10はアニメとバラエティが独占。

特にダウンタウンの松本人志氏が考案した“密室笑わせ合いサバイバル”番組『HITOSHI MATSUMOTO Presents ドキュメンタル(以下ドキュメンタル)』は、全5シーズンがすべてトップ10に入っている。

11月30日からは『ドキュメンタル』シーズン6の配信が予定されている。

動画:Amazon Prime Video JP - アマゾンプライムビデオ

全世界同時配信など「グローバル」に強いNetflixに対して「ローカル」を重視するアマゾン、という対比は指摘されるが、同氏によるとAmazon Prime Videoのコンテンツ展開は「グローバル」「ローカル」二通りのパターンがあるという。

一つは『ジャック・ライアン』や『グランド・ツアー』、『マーベラス・ミセス・メイゼル』のような、Amazonスタジオが制作するオリジナル作品の世界配信。もう一つは『ドキュメンタル』に代表されるような、ローカルの嗜好に合わせたコンテンツの制作・配信だ。

ローカル市場のニーズを重要視する一方で、すでにインドやメキシコでは、ローカル発のオリジナル作品が、国外で人気を博すという現象も起きているという。日本でも4月から、『ドキュメンタル』をはじめとするオリジナル作品7タイトルが、世界200以上の国・地域のプライム会員に向けて配信されている。

さらにはローカル作品のフォーマットが「世界へ旅立つ」状況も起こっている、と同氏はいう。『ドキュメンタル』は7月、メキシコ版の制作が決定したと発表された。

テレビではできないことをやる

amazonprimevideo

Amazon Prime Videoには、日本の地上波テレビでは放送が難しいような過激なものも。

画像:Amazon Prime Video

最高のクリエイターが、他では実現し得なかったかもしれない、素晴らしいコンテンツを作れる場所にしたい

Amazon Prime Videoは、テレビ局の規制に苦しむクリエイターたちの“救世主”になっているのではと問うと、レスリー氏はそう自信を見せる。

関連記事:吉本はなぜNetflix、Amazonと組んだのか——大﨑洋吉本興業社長が語った9000字

一方で、ネット番組にはいわゆる放送倫理規定や第三者機関も存在しないことで起きている問題もある。

9月に「ドキュメンタルに次ぐ新企画」として打ち出された番組『FREEZE』では、出演者の目に刃物を当てるなどの演出で批判も起こり、レビューでは2.1の評価がつけられている。

「すべての番組がすべての視聴者に受け入れられるわけではない。しかし、私たちは常に、クリエイターに新しく独創的な作品をつくるチャンスを与えたいと考えている」

「私たちは常に顧客の声を聞き、テストと学びを繰り返している」

批判について尋ねると、同氏はゆっくりとそう語った。

激戦のストリーミングサービス、勝機は

Netflix

Netflixは2015年に日本に上陸した。

この数年間で、動画ストリーミングサービスを取り巻く状況は大きく変容した。2015年9月には、Netflixが日本に進出。2016年にはテレビ朝日とサイバーエージェントが共同出資したインターネットテレビ局「Abema TV」がスタートした。

激戦のストリーミング市場での生き残り戦略について同氏に問うと「一部の顧客は複数の動画サービスに登録する(ので、必ずしも他のサービスは競合ではない)」とした上で、Amazon Prime Videoの強みについて「それぞれ異なる動画体験」を挙げた。

「もし今すぐに見たいのであればレンタルや購入もできるし、Prime Videoを待つこともできる。さらに(追加の月額定額料金で視聴できる)『Prime Videoチャンネル』に登録することもできる」(同氏)。

良質なコンテンツの獲得のため、Amazon Prime Videoが進めるのが、テレビ局や映画配給会社とのライセンス契約だ。2018年9月からは「Prime Videoチャンネル」で『NHKこどもパーク』の放映が開始している。8月からは、『シン・ゴジラ』など、東宝が製作・配給する映画も配信されている。

新たな顧客層の開拓も急務だ。

2018年5月には、NetflixとKDDIが、Netflixのコンテンツ利用とスマートフォンの通信をセットにした料金パックの提携を発表した。

Amazonは現在、日本では特定の通信事業者と提携はしていないが、ブラジルやインドでは現地の通信事業者とバンドル契約のための提携をしており、「これからも世界中で(提携の)機会を模索していく」と同氏は語った。

(取材・文、西山里緒、写真・今村拓馬)

ソーシャルメディアでも最新のビジネス情報をいち早く配信中