新型MacBook Airを使い始めてわかった7つのこと ——「Pro超え」と「Pro未満」が同居する、理想と現実

新型MacBook Air

新型MacBook Airの化粧箱。見ての通り、選ぶ本体カラーによって化粧箱の写真を変えている。

それにしても今年のアップルは製品発売が立て続けだ。

新型iPad Proの発売日と同日の11月7日、待望の新型「MacBook Air」がデビューした。13インチ以下のモバイル市場では、手頃な価格と「必要十分な」性能のバランスの良さから、ノート型Macとしては異例の人気となったシリーズだけに、市場の注目度の高い機種だ。

先行する記事でお伝えしたように、今回の新型Airのデビューには、アップルとして一種のラインナップ整理を意識しているようなところがあると思っている。個人的にはデザインはキープコンセプトでも、その中身はリブランディングの要素が強いという認識だ。

  • 新しくなったボディー、デザインは本当に「Air」してるのか
  • 新CPU(いわゆる省電力重視のインテルYプロセッサ)は力不足ではないのか
  • 価格も大きな魅力だったシリーズだけに、コスパでも「Air」してるのか

という点を中心に、まずは仕事環境を作りながらファーストインプレッションしてみよう。

1. サイズは確かに、旧型Air比では大幅に小さくなった

新型MacBook Air

開封したところ。なんと、付属シールまで本体と同じカラー。電源アダプターは30Wだった。

新型Airを開封してみる。化粧箱は例によってかなり凝ったもの。iPhone XRはカラバリ別に箱のロゴなどの色をすべて変更するという小技を使っていたが、新型Airも同様に本体カラー合わせの、手の込んだ化粧箱だ。

パッと見は、確かに小さい。旧型Airと並べると、さらにその感覚は強くなる。

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横に並べただけだと、一瞬目の錯覚で画面のサイズが違うように見えるほどだ。しかし、画面の表示部分を重ねて見ると、確かにディスプレイサイズは同じであることがわかる。

2. Pro+Airが融合したデザイン

新型MacBook Air

旧型Air(左)と新型Airを並べて比較。目の前で見ていても、画面サイズが違うのではと錯覚する。画面をぴったりあわせると、確かに表示領域は同じ。前後方向にも小さくなっているが、大きなタッチパッドのおかげもあってむしろ操作性は向上している。

ディスプレイを開いたところのデザインは、Airというよりは13インチ版のProだ。

それでも目に見える風景がどこかAirっぽさを感じさせる。よく見ると、タッチパッド手前にある、Air独特の切り欠きがあるし、斜め前から見ると、パームレスト側に向けてくさび形に傾斜したこれも独特のAirなデザイン、たったこの2点で、「Proっぽいけど、これはAirだ」と人は認識するんだと関心させられる。

新型MacBook Air

独特のアームレスト側がくさび形に尖っていくウェッジシェイプなデザイン。これがAirらしいところの1つ。

新型MacBook Air

性能とはまったく関係がない、中央部分の切り欠きをつくったのも、Airの後継機種だとわかるようにするためだ。

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本体サイズが変わったことで、デザイン上のバランスをとるためなのか、切り欠き部分は微妙に新型の方が小さい。キートップのサイズを見ると、新型の方が余裕があることもわかる。

3. キーボードは、全Macユーザーが「これがほしかった」もの。Pro以上だ

新型MacBook Air

ファンクションキーがちゃんとあり、右端にはTouch ID。この仕様はProシリーズにも欲しい。

期待どおりの満足度だったのはキーボードだ。最新のMacBook Proと同じ構造のキーボードは、従来のPro向けより静かで、しかもファンクションキーがTouch Barではない、物理キー。このタイプの組み合わせは現状唯一、新型Airのみが採用している。

Touch Barは「ノートPCのキーの一部をディスプレイ的な可変表示にする」という、業界では定期的に起こる「チャレンジ」だった。しかし、使い勝手には異論がある人も多いはずだ(普段、15インチのMacBook Proで仕事をしている僕としても同意見だ)。

現行のノート型Macのキータッチは全ノートPCの中でもトップクラスの上質さで、指紋認証のTouch IDも非常に便利。しかしTouch Barに課題が……と感じている人にとって、Airのキーボードは(アップルには悪いが)最良の選択肢だ。

新型AirがProを明確に超える点があるとすると、ココだ。

4. CPUの「超省電力i5」の実用性は、「日常利用には十分」「ヘビーな作業では大差」

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MacBook Airを選ぶときの最大の懸念は、おそらくCPUだろう。

第8世代の2コアのCore i5は、名称こそ「Core i5」だが、その中身はモバイル向けの省電力プロセッサーであることが、発表直後に見えてきた。

念のため実機で確認したところ、確かにインテル「Core i5-8210Y」だということが確認できた。

8210Y

ターミナルコマンドでCPU型番を表示させたところ。Core i5の8210Yということがわかる。

この時点で、トップエンドの性能には一般的なCore i5とは性能に大差があることはわかるが、実用性能はどうだろう?

そこで、いつもMacBook Proでの作業環境を再現してみた。

外部モニターにつないだデュアルディスプレイ環境で、ブラウザーでリアルタイム表示系のWebサイトやYouTube動画を含めて常時20個程度のタブを表示しながら、各種アプリを常駐させて仕事をするのが僕の使い方だ。

こういう環境でも、意外なほど新型MacBook Airは「マトモ」に使える。十分な性能だ。

一方で、大差が出る作業もわかった。たとえば、デジカメ写真の現像作業などの「クリエイティブ作業」だ。

アドビ「Lightroom CC」でこの記事に使った写真の候補81枚の現像(リサイズ、トリミング、プリセットでのカラー変更)を新型MacBook Airと15インチMacBook Pro(Late 2016/Core i7 2.7GHz)で処理した際の違いを以下のグラフにまとめた。

Lightroom CCでの現像処理時間のテスト

Lightroom CCで、写真81枚の処理時間を計測。クロップ、プリセットによるカラー調整を全ての写真に適用して、長辺1500ドットにリサイズして書き出した時間を計測した。

相手が世代が古いとはいえCore i7のクアッドコアのProというのはそもそも性能に大差があるが、ざっくり3.3倍作業時間が違う。

この数字をどう捉えるか? 今回のように100枚程度の処理ならコーヒー1杯飲む時間の差もない「気にならないレベル」だろう。一方同様の処理を10回繰り返すなら、待ち時間は10分間もの違いになる。そういうパワフルな処理が必要ならMacBook Proを選ぶべき、ということになる。



5. とにかく静か。しかし発熱はする

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負荷の高い作業を続けるとファンが回り出す。動作音が聞こえるのは、F11キーやバックスペースキーがあるあたり。それでも、高周波のカン高い音ではないので、耳障りな感はない。

低消費電力がウリのYプロセッサのメリットらしき部分を感じるのは静音性だ。

基調講演からも明らかなように、ファンは付いている。ただし、日常使用時はその動作をほとんど感じさせない。

実機のセットアップ直後、Dropboxで数万のファイル同期とOneNoteで数千のノート同期をはじめたときは、右上の電源ボタン下あたりにファンの存在感を感じた。それ以降はLightroom CCの処理中含め、短時間の高負荷作業ではファン音はほぼ聞こえない。これは新型Airの美点だ。

ただ、低発熱かというとそうでもない。パームレストは左右ともに15インチのMacBook Pro(Late 2016)の動作中と同程度の体感温度にはなる。また、膝に乗せて使うと、底面全体がほんのり熱を帯びていることがわかる。

ファンを回して積極的に冷やすよりも、不快にならない範囲でボディー全体で放熱し、集中力を阻害するノイズ源のファンを極力回さないような設計思想なのかもしれない。

6. ディスプレイは素晴らしいの一言

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そして言うまでもなく素晴らしいのはディスプレイ。これは本当に文句なしだ。狭さのストレスを感じない実用的な大きさ(13インチ)で、上質なキーボードを備えたノート型Macという意味では、新型Airはもっとも軽量なモデルになる。

極めて近い存在としては13インチのMacBook Proがある。Proだと同じRetinaディスプレイでも「P3」という高色域対応(要は表現力が高い)になるが、日常使いの表示品質はそこまで変わらない。少なくとも、旧型Airのような発色の浅さといったものは全くないし、コストダウンされた印象はまったく感じない。

7. 結論、色々な意味で新型AirのライバルはProの13インチだ

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新型Airと13インチのProの比較。手前の最薄部はAirの独特のウェッジデザインと、薄さが目立つ。

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一方、実はヒンジ側は、Airのほうが微妙に厚い。気にするほどではないし使用体験にはまったいう影響がない部分だが、ちょっとした驚きだった。

パフォーマンス、サイズ、価格。旧型Airが支持されたのは、こういったトータルバランスの良さだった。

「ノートPCに20万円出せる人が欲しがる高い性能は、万人に必要なわけではない」ということは、当時から今に至るAir人気の世界観が正しかったことが示している。「何か1台買いたいなら、Airがいいんじゃない?」というノートPCだったわけだ。

そういう人たちが求める、デザイン、使い心地、持ち運びたくなる軽さ、多くの人には「だいたい充分」な性能。従来のAirユーザーが心から求めていた「Retinaディスプレイ」対応。そのどれもを、新型Airはしっかりと持っている。

ただ唯一、価格設定だけは「ちょっとAirっぽくない」印象がある。

単体で見れば、Retinaディスプレイによるコスト増と捉えられなくはないが、比較すると、現時点では13インチのMacBook Proの最廉価モデルとやはり価格が近すぎる。

spec

発表時に掲載した比較表を再掲。ここに、新型Airが持つ悩ましさが集約されている。

かたやProは同じデュアルコアといってもスタンダードなモバイルCPU、新型Airは性能をある程度犠牲にして超省電力・低発熱にしたCPUだ。

価格がもう少し安ければ完全に別カテゴリーと認識されたはずだが、現状は8000円という微妙な差にとどまる。Touch Bar付きのモデルは性能はさらに高いが20万円近いので明らかに別カテゴリーで、これは比較対象にならない。

Touch IDのない13インチのProをいつまで販売するのかわからないが、両者の比較は店頭でもかなり頭を悩ませるものになるはずだ。

新型Airは、そのネーミングが持っている「気軽さ」の演出を、独特のデザインと、120g軽い持ち歩きの良さで作り出している。どちらが自分に用途に向いているのかは、まさに量販店やアップルストアに行って、腕組みして悩むしかないところだ。2つを持ち比べると「120gの違い」は僕は結構あると感じるが、「これならProでも良いのでは」という人がいても、確かに不思議はない。

(文、写真・伊藤有)

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