決算の内容について説明するメルカリ執行役員CFOの長澤啓氏。
メルカリが11月8日発表した第1四半期(2018年7月〜9月期)決算。既報のとおり営業赤字25億円を計上した。6月の上場日に5000円の初値をつけた株価はここのところ下落傾向だが、臆するところはない、というのがメルカリの姿勢だ。
そこには、「日本の事業は黒字」(長澤啓CFO)であり、前年同期比で45.3%増(売上高105億円)の「安定した収益基盤である日本のメルカリ事業」(決算短信より)がある。この収益基盤を背景に、事業の成長のための大胆な投資として、アメリカを中心とした海外市場への投資をし続けているという信念がある。
メルカリが重要指標と位置付ける総流通総額(GMV)は、同期比で43.3%の増加。MAUがのびていることに加えて、男性向けカテゴリーの強化を背景とする単価の増加が成長の後押しになっている。
決算説明会では、その海外事業に関する質問が相次いだ。
投資のアクセルを踏み続けるのは良いが、どういう考えを持って、いつまで、どの程度まで踏み続けるのか?
長澤CFOは、「規律のある赤字」という言葉を使って、説明した。
長澤CFO「メルカリの日本の事業は黒字である。黒字の事業(であること)だけが優先順位が高いということにしてしまうと、新規事業に投資がしづらいということなってしまう。
我々としてはより大きく会社を成長させるために、大胆な投資はそれなりに必要だと思っている。経営の姿勢としては、“赤字を恐れずに”と言ってはいけないかもしれないが、規律のある赤字をもって、事業を成長させていきたいと考えている」
第1四半期のアメリカ事業は、総流通総額(GMV)7100万ドル(約80億円)。いまだ日本の10分の1以下に過ぎないが、それでも前年同期では77.2%増えた。
メルカリのアメリカ事業。参入して丸4年、マネジメント層を入れ替え、アプリもまったく別のものに作り変えた。たしかな成長はしているものの、米国法人の新体制に対する株主の期待はもっと高い位置にあるだろう。
この成長の背景には、ネット広告のほかにラジオや街頭広告も使った独特のブランディングの効果がで始めたのではないか、と長澤氏は説明した。
さらに、長澤氏はアメリカ向けの投資額は以前から一定水準を守っており、今期の成長は決して広告宣伝費を青天井に大量投下しているわけではない、と強調した。
長澤CFO「米国の事業はどういうふうになっていくのか見えないが、投資額(バーンレート)をそんなに大きくすることなく、着実に成長させていくことが我々の規律ということだと思っている。
黒字に転換していくまで永遠にやるということではなく、広告宣伝費の効果などを見極めながら、本当に続けるべきかしないべきか、ということを継続的にしていきながらやっていく。
向こう見ずに100億〜200億を突っ込むということではなく、規律を守って、株主のみなさまから預かった資金を投資していくことが非常に大事」
第1四半期決算のこの時期は、米国法人CEOのジョン・ラーゲリン氏のCEO就任(2017年9月)と、元グーグル社員のスコット・レヴィタン氏のCMO就任(2017年10月)からおよそ1年という時期だ。
就任後の2年目に入ったシリコンバレー級人材の米国経営幹部が進めたグロース戦略が、どんな結果を出すのか。メルカリの状況からはまだ目が離せそうにない。
(文、写真・伊藤有)